風邪。

完全に風邪を引いた。

健康優良児の異名を欲しいままにしていた私が。

5月12日から人生初のピル服用が始まったというのに、同じタイミングで喉が信じられないくらいに腫れた。声が出ていたのが奇跡。

市販薬ならピルとの併用は問題ないとの見解を得て、家にあるありったけの薬を物色。元々季節の変わり目に扁桃腺が腫れやすい私は、喉における市販薬を大量に常備しておく癖(へき)がある。

ぺラックT錠に祈りを込めて、飲む。

だがしかし、翌朝も悪化の一途を辿るだけだった。

新入社員研修が終わって安心しきったのだ。
プツッと張り詰めてた何かが途切れて、喉が腫れた。

とか何とか言いつつ、普通に職場の冷房がキツすぎるせいである。こんなの疲れでもストレスでもなんでもない。シンプルな冷房による乾燥。
暑がりなんだよな、皆。

翌日の仕事は15時に残業振替で早退させてもらい、15時半には病院にいた。
喉が腫れてる旨を事前に電話で伝えたところ、車の中で抗原検査を受けるように指示された。
確か2年ほど前にも、同じように車の中で綿棒を鼻に突っ込まれた気がする。あの時も今も共通しているのは、私はダイエットをしていて、免疫力が異様に低いということだろう。

結果は陰性だった。

インフルもコロナも同時に検査ができるなんて、便利な世の中になったものだなあと思うなど。

無事院内へと歩みを進めることに成功した私は、即診察室に呼ばれた。口内を見て「ああ、これは痛いわ。」とあっさり咽頭炎の結論を下した先生。
喉から手が出るほど欲しかった抗生物質を処方してもらい、家路に着いた。

情けないなあ。と思ってしまう。

普段、花粉症にすらならない健康体を維持している身である。薬でカバー出来てしまう程度の生理痛。偏頭痛というものがどういう痛みなのかも知らなかったりする。
こんなふうにあっさりと風邪をひくと、訳も分からず恥ずかしい気持ちになったりするのだ。

全方位に謝りたくなる。

15時までに完璧に仕事を終わらせて早退したにもかかわらず、「ご迷惑をおかけしました」って連絡した。
彼氏にも謝って、なんか情けなくて泣いた。

抗生物質は偉大で、飲んだ夜には腫れが引いた。

翌日(今日)は元々仕事が休みだ。
彼氏にデートの断りの連絡を入れて、不貞腐れるようにベッドに沈んでいた。情けない。情けない。
彼氏は昼頃に甘いものを抱えてお見舞いに来てくれた。私の好きなセブンイレブンの冷凍クレープと、フルーツゼリー。強さ引き出す乳酸菌。
またたくさん謝った。ありがとうって言った方が可愛いのに、その方が彼氏は求めていた対応だとわかっているのに、出づらい声でたくさん謝った。

体調不良を強みのように周りに伝達する人間がどうしても嫌いで、健康体の自分が好きだった。
だからこうして呆気なく体調を崩してしまうと、どうやってまっすぐ立てばいいかすら分からなくなってしまう。

頭を撫でて帰っていく彼氏にまた謝る。

久々に休日にいい天気だった。彼氏は半袖を着ていた。
こんなにもいい天気の日に、デートすらしてあげられない価値のない彼女でごめんなさい。

必死に痩せた体重が、たった2日で元に戻った。それどころか少し増えた。
周りは夏に向けてみんな痩せているのに、あなたの彼女はこんなにデブで本当にごめんなさい。

そんなことないよ、なんて言って欲しいわけじゃなく。

何も楽しくない。何も好きじゃない。

もうやだ。

仕事を辞めたくて、どうにか勉強時間が欲しいけど足りない。足りないのは時間じゃなくて、私の努力とやる気とその他諸々の人間性だ。

今年の人事評価は500人を超える従業員の中で、トップ30人に入る高評価になっていた。
評価はされている。給料も少しだけ昇給してくれている。
それでも、勝手に「妊娠した?」だの「男と出かけるのかしら」だのテキトーな噂をして楽しむ同僚がいる時点で無理なのだ。
火のないところに煙が立つ職場だ。
仲良くしても色々言われ、仲良くしなくても色々言われる。他人は変えられない。じゃあもう、私が環境を変えるしかないじゃないか。

「寂しくなるから辞めないでよ」なんて言ってくる彼氏にもしんどくて泣きたくなる。

ワガママでごめんなさい。図々しく生きていてごめんなさい。


全額をセブンイレブンの冷凍クレープに充てます。