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日本においてなぜ組織ぐるみの不正が無くならないのか

自己紹介

ご覧頂きありがとうございます。新卒で食品会社に就職し、営業職を経験したのちにアメリカの子会社に赴任。約10年間海外駐在しています。
自分自身への備忘録も兼ねてアメリカでの体験や自身の考えをnoteに残していきたいと思います。同じ境遇やこれから海外に挑戦したいという方にとって少しでも参考になれば幸いです。

はじめに

ダイハツ工業による認証試験不正がニュースとなっていますが、なぜ何度も何度も日本企業で不正が繰り返されるのでしょうか。日本独特の文化や制度、そしてその背後に潜む心理に焦点を当てて考察してみました。

①善悪に対する認知の違い:罪の文化と恥の文化

欧米と日本、両者の文化には大きな違いがあります。そしてその文化差を表す一つの表現として、欧米は「罪の文化」であり日本では「恥の文化」が根付いていると言われています。

罪の文化とは事象の善悪に対する判断を何かしらの規範(法律や宗教)に則って行うことに対して、恥の文化とは規範というよりも自分ではない他者がどう思うか(他者からどうみられるか)ということを軸に善悪を判断することを言います。

どちらが正しく、より良い思想かということではなく、個人が善悪をどのように判断するかという判断軸の違いの話です。恥の文化があるからこそ、日本人は礼儀正しく、規律正しい国民性だと世界的に評価されていると思います。

逆に欧米における罪の文化はある意味、規範がなければ善悪の判断軸は自分の中にしかない(他人がどう思おうと関係ない)という側面もあります。

私自身はこの「恥の文化」は日本人の美徳だと感じていますが、組織ぐるみの不正のような規範上で正しくないとなる場合ではジレンマを抱えることになってしまうと感じています。

つまり「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という表現があるように、赤信号を守らないという交通ルール(規範)に違反しても、周囲がそれを「問題」だと捉えない場合、つまりは自身の「恥」に繋がらない場合は周囲に流されてしまいやすいということを意味します。

この文化の違いが、不正行為に対する反応に影響を与えていると感じます。また「恥の文化」は自分自身だけに適用されるものではなく、それは他者に恥をかけることをよしとしない文化でもあります。そのため自分や他人の「メンツ」を守るために問題を表面化させにくいという傾向があるのではないでしょうか。

②人材流動性の低さと会社とのウェットな関係

日本企業における終身雇用制度は崩れつつあるものの、まだまだ従業員は会社に奉仕し、会社はそのかわりに安定と一定の経済的保障を与えるというウェットな関係性がかなり残っているのではないでしょうか。

アメリカ人は生涯に平均で10回以上の転職を経験するようです。ですので、従業員と会社は対等な関係とまでは言いませんが、日本と比較するとかなりドライで対等に近い関係だと感じます。
会社も従業員を選びますが、同じように従業員も働く会社を選んでいるという印象です(もちろん選り好みできるくらいの市場価値がある場合)。

日本の御恩と奉公的なウェットな関係性の中では、従業員は組織内でのコネクションや忠誠心が強く求められ、不正行為を告発することが難しくなります。この点も不正を放置しやすい状況を生み出していると感じます。

③会社は誰のもの?

前述の通り、日本の思想や文化においては不正行為を知りつつも、それを告発することは勇気と覚悟が必要です。しかし、日本企業において内部告発者に対する環境やサポートが整っているとは言い難いのが現状です。

多くの場合、告発者は孤立し、職場での人間関係が悪化することがあります。株式会社の場合、厳密にいうと会社は株主のものですが、日本では会社は従業員のものという考え方があります。

その考え方は基本的には従業員を大切にするというコンテクストで使われている分には悪いとは思いませんが、内部で何か問題や不正が起きてしまった時に内輪の問題を外に出すべきではない、外に出すことで他の従業員に迷惑をかけることになるという思想に繋がり、結果として隠蔽の温床となりやすい部分があると感じています。

不正や問題の隠蔽は会社の所有者である株主を裏切る行為であり、顧客や利用者を裏切る行為で本来許されるべきものではありません。これは組織ぐるみの不正はおいておいても、日本企業がコーポレートガバナンスに対する意識が低いと評価される所以だとも感じます。

最後に

日本企業における不正行為の根本的な原因は、上述の通り文化や思想、制度の違いが大きく影響を及ぼしていると感じます。

アメリカでは告発者を守る法律があり、内部告発した従業員が当たり前のようにいつも通りに堂々と出社しますし、周りの従業員もその行動に関して何も言いません(少なくとも表立っては)。もし告発者に対して何かしらの不利益や圧力を与えたと判断されるとより一層厳しい社会的制裁が待っているからです。

もちろん日本にも告発者を守る「公益通報者保護法」という法律があります。しかし法律としては存在していても果たして本当に保護を保証するものなのでしょうか。

仮に守られていたとしてもその判断軸を他者におく「恥の文化」の中では内部告発後、自分が思っていた以上に問題が拡大してしまった(経営難に陥りリストラが発生するなど)際に自己嫌悪に陥る部分も大いにあると思います。

このような大前提の違いの中では、欧米の不正に対する対策をそのまま取り入れたとしても、効果は薄いだろうと思います。欧米との対比から学びつつ日本のコンテクストに即した不正の温床を作らない仕組みとその運用ルール作りが重要だと感じます。

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