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ぜひともドキュメントを書こう / マイベスト開発部 Advent Calendar Day 7

こんにちは、株式会社マイベストのデザインマネージャーの横田です。今年の9月に入社した新人です。
プロダクト開発部 アドベントカレンダー Day7をお送りします。

これまで行政機関・デザイン会社・スタートアップ・メガベンチャーでPMやデザイナー、開発者としてほとんどプロジェクト型の仕事をやってきました。
今回は、それらの経験をとおして感じてきた、ドキュメンテーションに関する意義を検討します。

ここでいうドキュメンテーションとは、文字をとおした文書化やコミュニケーションの行為をさすことにします。NotionでもSlackとか、スプシも含めてお読みください。

仕事って難しい

さて、プロジェクトは複雑な物事を計画・推進する単位であるとします。
プロジェクト型の仕事に参加すると、たいていの場合チームは次のようなストレスに晒されます。

  1. なんらかの意味で、個人・組織におけるハジメテに向き合う

  2. 多くのひとが色々な認識や期待、思惑で関与する

  3. 各局面における行動に正解がない

  4. 急激あるいは緩慢に要件やタスクが変わる

複雑系の極み。
これらの状況をふまえて、プロジェクト型の仕事は目標や期限を達成するために、複雑な状況でバランスをとって業務遂行する必要があります。
そこに必要なのは、情報収集・要件定義・合意形成・タスク管理・リソース分配……そして無茶、といった名前のない仕事たち。

ひとまとめにいうと、要は不確実性に、計画性と推進力で立ち向かえということになるのですが、これらに向き合う手段として、再現性ある行動の1つがドキュメンテーションです。

再現性ある、というのは、自分にコミュニケーション能力がなくても、文章力がなくても、あるいは予算がなくてもできるということです。
つまり、やればできます。

(もう一度!)やればできます。

さて、私は新規事業、プロダクト開発、システム導入、デザインプロジェクト、リサーチプロジェクトなど、いろんな類型やサイズの仕事をしてきました。
どこでもなんらかのドキュメントをつくって運用していました。

いくつか型はありますが、細かいフォーマットは都度アレンジして運用しています。
ですが、ドキュメントをつくる目的や効用はたいてい共通していることに気づきました。それは仕事でなにを成し遂げたいかに動機づけられるということ。

前置長。
ドキュメントをつくることについて。
単なる情報伝達手段としてを超えた観点で、いくつかあげてみることにします。


自分がわかるためのドキュメント

なにを決めなければいけないか。なにをもって決めるか。
つまり課題を定義すること。仕事はそんなことにあふれています。
そのうえで未知を回収したり、誰も決めてくれないことをどうにかして決めなければなりません。

ドキュメントを書くことをとおして、私たちは自分や組織が持っている知識や情報を再度理解し直すことができます。また、他人からのフィードバックを受けるためには理解可能な成果物が必要です。

書けないということは分からないということ、とよくいいます。そのとおり。
経験値がない領域や複雑な物事で何がわからないかをわかるには、何かをアウトプットを試行してみるしかありません。あとは誰かにきくこと。

ヌケモレを防いだり、構造的にものごとを把握するには表形式にしてみたり、マインドマップを使ってみたりするのが有効です。
それでもなにか漏れることはありますが、自分のなかにフレームワークに落とし込んで再利用することで、次の機会を処理することができます。

ドキュメントで何かがわかることはありませんが(そりゃそうだ)、何がわからないかはわかります。あとはがんばってわかりましょう。

ただ、何が書かれるべきかも分からないというときは、インプットしましょう。どこかから引っぱってくるか、人に聞くかです。

わからないことと向き合うこと。
わからないことが何かを明らかにすることは、いろいろに先行して重要です。それがあった場合となかった場合で、決定的にとれるオプションが変わります。

前職のCTOは、すべての仕様書は文章で書くようにいってました。表などは物事を構造化することができるが、文章にしないとあやふやな行間が生まれるからだったきがします。(あってるかわからない、後で聞いてみます)

いうべきをいうためのドキュメント

人が口頭でコミュニケーションして、うまく意思疎通したり交渉することはとても高度なことです。リアルタイムに言葉を解釈し、回答を論理的に構成して適切な言い方で返すということです。

言いたいことが言えなかったとか、うまく言えずに評価を下げたとか、そういうことが誰にでもあります。これには、誰と話すか、何について話すかといった相対的な環境要因もあります。
(その意味では、チャットベースのいい時代になりましたね)
私もしばしば、理解度の低い事柄に対して何かディスカッションする場面があります。話すのもうまくありません。フリーランスだったときはたくさん失敗もしてきました。

きっと複雑なことを話してるのだから、口頭でがんばるのは難しい。
ミーティングにはその場の目的とか、時間といった恐ろしい緊張があります。

そんな状況への抵抗手段は、準備すること。
打ち合わせの準備は、ドキュメントを書くのが正攻法です。事前に主張や論理を整理するのです。
アジェンダを書くことができるのであれば、どういう話の流れにしたいかを設計する。一方的にきかれる立場であれば、どのように相手に理解・納得してもらうかを設計する。

意思や考えをなかったことにしないこと。
自分の考えてきたことに意味があるなら、最大限にアウトプットすることが貢献になります。

新しい人のためのドキュメント

(組織の単位でもそうですが)プロジェクトにはしばしば人の入れ替わりがあります。

プロジェクトに加入したての人は、新たな環境やメンバーと一緒に働くことになるため、心理的安全性が低いです。多かれ少なかれ。
新しいプロジェクトでは、どんなに優秀な人でも、あるいはチームがいくらウェルカムでも、何がわからないかわからない状況にあるわけです。

新しいメンバーが序盤でクイックウィンを果たすには、効果的にプロジェクトを把握する必要があります。当然、なんらかのかたちでオンボーディングすることは重要です。

クイックウィン = 小さくとも初期段階における成功実績のこと。初期に何らかの成功を果たすことは、当事者の自身や、周囲の信頼獲得につながります。

プロジェクトリーダーやチームメンバーは、新しく加入した人のニーズや不安に対してサポートをおこない、心理的安全性を高めるよう心がける必要があります。
ドキュメントには次のような内容が書かれているとよいでしょう。

- 進捗状況やタイムライン: これまで何があって、何が進行中なのか
- 関係者: 誰がどういう役割りか
- ルールや制限事項
- サポート体制: どのレベルのものを誰に頼ればいいか?
- 何が決まってて、何が決まってないか

このほかには、何が決まってて、何が決まってないか を明示することも重要です。これによって、組織が決まってないことを認識しているという事実、いま存在するプロジェクト上の余白を知ることができます。

ともに働く仲間を、準備をもって迎えること。
能力のある人が活躍することの阻害要因のひとつは、情報がない・あるのかないのかが立体的にわからないことです。そして、解決可能です。

イニシアチブとしてのドキュメント

あまり強調されませんが、ドキュメントはリーダーシップやイニシアチブを構築・行使する手段として機能します。
なぜなら、起案した人にはその内容に関して考える力や理解があり、コミットする姿勢があることを示すことになるからです。
小さな成果物をとおして「あいつ分かってるな」「動いてるな」と思われるということです。

情報を整理する人には、情報が集まります。そして、情報をもっている認識をもたれます。期待が醸成されます。
冒頭の文をさらに少し言い換えれば、情報は権力の源泉の1つです。
(偉いという意味ではなく、人や組織に対して影響力を行使する力という意味で)

だから、ドキュメントを書くことはプロジェクトのコントローラビリティを高めます。属人的であれ推進力をもたらします。

ちなみに権力というと、政治的でしょうもないと思われるかもしれません。
よくみせるとかそういうことではない。他者からの認識や行動予想を構築することは、物事をすすめるために重要です。
私の通っていたMBAでは「パワーと影響力」という講座がありました。

ドキュメントが最高の手段かというとそうではないのでしょうけども、他者からどう期待されるかが、成長機会を引きよせます。

信頼や期待を貯めること。
書いたなら自分の名前と日時をさり気なく書いておきましょう。

未来の人のためのドキュメント

プロジェクトが終了した後にも、ドキュメントは将来のプロジェクトのための参考資料として活用されることがあるため、残すことが重要です。

世の中の多くのプロジェクトはスピードが重視され、あれよあれよと仕様が変わるし、事件も起きます。ときには、あまり一般的でないロジックで意思決定をせざるを得ない場合もあります。

大きなプロジェクトは、実行して資産をもたらすだけでなく、さまざまな局面で後世に負債や経路依存性(過去の経緯や事象がその後の運用や意思決定に制約をもたらすこと)をもたらします。

そもそも、大なり小なり、プロジェクトは全く同じには繰り返されません。当事者にしか見れない景色があります。当事者にしか動かせない物事のタイミングがあります。

検討時点の文書には、いまの自分が考えている以上に、コンテクスト的な価値が詰まっています。
なぜああしなかったのか、なにを情報収集したのか。当時なにが想定されていたのか。

成果を文字通り、文字に残すこと。
後世に影響をもたらすプロジェクトをリードする人物は、そのときどきの経緯や判断を表現し、書面に誇れる論理をもって正当化できるように行動するべきです。そして失敗を考察して(必要ならば弁解して)、自身や他者に対する説明責任があります。

前職で基幹系システムの導入検討〜運用フェーズでの新規開発をしていたプロジェクトはなかなかカオスなプロジェクトでした。主要な意思決定や経過について時系列で記述した「○○のあらまし」というドキュメントを残していました。


すべての文書でおさえるべきこと

何の文書であれ、以下のことがなんらかのかたちで必ずわかるようにしています。ありきたりな情報でさえ、人は多くのことを察します。
ここまでで述べたことに照らせば、書かない意味がないので書いたほうがいいです。

  • いつ書かれたのか

  • 誰が書いたのか・誰が管理してるのか

  • 何のために書いたのか

  • 何が決まっていて何が決まっていないのか

  • その文書のステータス

ここらへんは組織内でどんどん呼びかけていきたいです!

最後に

上のようなことは、日常的にすべてがすべてドキュメントでなされているわけではありません。ひとつの表現活動なのだから、チャットや口頭の会話でも代替可能です。
そのほうが適している場面もたくさんあります。

ドキュメントが何かを生み出してくれるわけではありませんし、多くの場合、それを書くのがプロジェクトの本質でもありません。
だから、ドキュメントは完璧の完璧であることはそんなに重要ではないです。書くのが苦手ならフレームワーク化すればよいです。
情報を編集する過程で、色んな意味で物事が前進します。

ドキュメントにすることは物理的に大きなレバレッジがある手段です。ドキュメントは、不確実性や非対称性にたちむかう弱者のための戦略です。
私たちは、文字をとおして非同期性、場の空気や立場の制約に抵抗することができます。

わからないことをわかるようにする。新しく入ってくる人の心理的安全性を高める。ものごとを動かすためにイニシアチブを構築する。未来の人に理解させる。
どれも評価制度に書かれない正しい努力です。誰かが大声で感謝してくれるわけではない。時によって孤独なとりくみです。

だから、私はドキュメントを書きます。
書けてようが書けてまいが、書く人を尊敬します。

Advent Calendarにしては強烈に意識高い系になりました。

お読みいただきありがとうございました!
次は、期待の新卒の森本さんです。

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