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防音室のこと(1)

2年ほど前に古い建物を買い、リノベして住んでます。
その際、9畳ほどの小さなプライベートスタジオ(なんちゃって防音室)を作ったのですが、音楽やってる人の参考になる部分がある気がするので紹介します。
(私自身、設計段階でいろいろ調べたけど全然参考になる情報がなくて困ったこともあり)

防音工事は高い、というイメージがあると思いますが、実際、専門業者に依頼すると300万とか平気でかかります。
これは、防音性能や音響性能について一定の(数値的な)水準を「担保」するのにお金がかかるのだ、と私は理解しています。

音の問題は、いろんな条件が関わるので、実際にはやってみないとわからないことが多い。
そんな中、「絶対大丈夫」を追求してひとつひとつの仕様を決めていくと、高くつく。

また、音響環境はそもそも部屋の条件に大きく左右されるので、元の条件が悪い部屋(天井が極端に低いとか四角形じゃないとか梁柱があるとか)で良い環境を作るのは難しい。
部屋の特性を抑えて、偏りのないというか、標準的なというか、要するに批判されにくいきちんとしたスタジオ環境を整えようと思うと、高くつく。

でも逆に言えば、完全な防音を「担保」しなくても良い。常識的に考えて問題ない範囲内に収まればOK。
ということであれば、費用はかなり抑えられます。
(実際のところ、音の問題はご近所との関係性の問題であることが多い。生活音でも怒る人はいるし、近所でピアノ弾いてる音が聞こえるのはごく普通のことだと感じる人もいる)

あるいは、音響についても、部屋の特性によって諦める部分は諦める。
という割り切りがあれば、費用はかなり抑えられます。
(実際のところ、気になること/気にならないことは、かなり個人差がある。そもそもでかい音さえ出せれば音響にはさほどこだわらない人もいる。あらゆる意味で完全なスタジオ環境を必要とするのは一部のプロフェッショナルだけ)

問題は、これを実現してくれる人が世の中に(ほとんど)いない…
防音工事の専門業者さんは、プロとして完璧な環境を作るのが仕事なので、物件の条件と個人のニーズから最適解を探る、なんてことはやらないし、やれない。
個人宅のリノベをやる建築士さんや施工業者さんは、音響のことはなにもわからない。

個人的には、本来この隙間は、建築士さんや施工業者さんが埋めるべきだと思うんだよな。
というのも、大した追加費用が発生しないなら防音環境がほしい、という潜在ニーズはそれなりにあると思うんです。
音楽スタジオ以外にも、シアタールーム、仕事部屋(テレワーク)など。
だから、こういう「なんちゃって防音室」の事例が増えて、「多少音響のことがわかる(やったことある)建築士さんや施工業者さん」が増えて、さらに防音室を作る人が増えて、っていうポジティブなループがまわっていくといいなと思っています。
(つづく)

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