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【Oxford留学】伝統のTutorial教育

Oxfordの教育システムの中で重要な位置を占めているTutorialを受ける機会に恵まれましたので、その内容について書いてみようと思います。

Tutorialとは?

TutorialとはOxfordとCambridgeで伝統的に採用されている教育手法のことです。具体的には、教授1人と学生1〜3人が共通のテーマについて議論を行う個別指導を指します。
進行方法や時間配分は各Tutorialでまちまちですが、私が受けたTutorialでは、1時間の枠内で、学生2人が事前に提出したEssayについてそれぞれ紹介をし、教授とその内容についてディスカッションをするというものでした。

Oxfordの教授と対面して1つのテーマについてがっつり語ることができる貴重な機会なので、入学前からこのTutorialは楽しみにしていました。

法学部のTutorial - Regulation

今回私が受講したのは、法学部が提供しているRegulationという科目のTutorialでした。科目によってTutorialの時期・回数は異なりますが、この科目では、1学期(Michaelmas)と2学期(Hilary)にそれぞれ2回、計4回のTutorialが予定されています。
Tutorialのメインはディスカッションですが、その準備として、各回のテーマに沿ったEssayを書くことも求められます。Regulationの評価は最終学期(Trinity)のEssayによって決まるため、最終のEssayを書く予行演習という側面もありそうです。
なお、Tutorialは通常の授業にプラスして実施されるため、Tutorialの予定されている週の前週は、通常の授業の予習+TutorialのEssayの準備でそれなりに忙しくなります。
ちなみに、Tutorialの日程は、予めいくつかのスロットが提示されて、早い者勝ちで希望する日を予約する、というシステムで決められました。できるだけEssayの準備時間が欲しかったので、私は候補日の中でも後ろの方の日程を選びました。

初回のTutorialの課題は、教授から提示された4つのお題のうち1つを選んで1,300 wordsでEssayを作成するというものでした。私は「公益を目的とする規制はレント・シーキングによって常に制限される」という命題を批判的に論評するというお題を選びました。
なお、いずれのお題もこれまでの授業で取り扱ったテーマであり、一応の取っ掛かりはあるといった状況ですが、問いが非常に抽象的であるため、どのように問いを解釈し、立論するかに頭を使いました。

Essayを書くために、対応する授業のリーディングリストを見直したり、関連する論文をネットで探したりして、たくさんの文献に目を通しました。関連度の高い論文をなかなか見つけることができず苦労しましたが、そこで得た知識を自分なりに整理してEssayにまとめました。
ちなみに私は、レント・シーキングの内容を定義した上で、①レント・シーキングが発生しない類型の規制があり得ること、②レント・シーキングが発生したとしても、それによって規制が制限されないよう防止する方法があり得ること、の2つの可能性を検討し、「常に」制限されるというわけではない、という立論にしました。

Tutorial当日の様子と感想

Tutorialは教授の部屋で行われました。教授の部屋は、ソファや腰掛け椅子が用意された自然光の差す明るい空間で、観葉植物もいくつか置かれた和やかな印象のレイアウトでした。ドアの内側には浮世絵のプリントも貼られていました。

私の回のTutorialに参加した学生は、インドからの留学生と私の2人でした。まず彼女のEssayの内容のプレゼンを聞き、そこからディスカッションに入りました。教授が質問をして学生が答える、というのが基本的なやり取りですが、他の学生が質問・コメントすることも歓迎されます。
事前にEssayを交換していたので私も少しだけコメントできましたが、予習していなければついていくだけでも相当厳しかったと思います(彼女のテーマは「イギリスの排出権取引制度の規制目的を達成する上で、排出権取引市場が組み込まれた政治制度はどの程度重要か」というもので、前知識無しでは対応が難しいです)。
また、彼女のEssayは内容がぎゅっと詰まった良質なもので、豊富なリサーチに裏付けられた立論を見ると、自分の立論のスカスカ具合が際立って恥ずかしい気持ちになりました。こうして他の学生から学ぶ機会があることもTutorial制度の良い点だと思います。

彼女の発表・ディスカッションの後、私も自分のEssayの内容を紹介しました。2人がしっかりと聞いてくれていたために、逆に部屋の静寂が気になってしまい、そこで集中力が切れてしまいました。情けないことですが、そこからのプレゼンはスムーズに運ばず、悔いの残る発表となりました。
ディスカッションでは、もう1人の学生からの質問に答えたり、教授からの指摘に対応したりします。教授からは、自分の分析で無意識に依拠していた前提を指摘されました。問題を無自覚に狭く解釈していることに気付かされて、視野が開けたような気持ちになりました。
教授からのフィードバックとして、立論はクリアでアイデアも良いが、もう少し各ポイントを掘り下げた方が良いというコメントをもらいました。この点は今後のEssayの書き方に活かしていきたいと思います。

伝統のTutorialという意識があったため、実際に始まるまでは教授から詰められるのかなと怯えていましたが、担当教授の人柄の良さもあり、終始和やかな雰囲気でこの回は終わりました。

あと3回しかTutorialの機会はありませんが、1度でも多く納得のいくディスカッションができるよう、事前準備を工夫して臨みたいです。

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