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SEKAI NO OWARIの『ユートピア』について-有るものに目を向けられる幸せ

こんばんは🌱
本日はSEKAI NO OWARIの「ユートピア」の歌詞を読んでいこうと思います。3/13に発売されたアルバム「Nautilus」に収録された新曲です。今回のアルバムは収録された12曲のうち10曲はタイアップ曲、1曲は過去のシングル「Habit」のカップリング曲(「Eve」)なので、割と馴染みのある曲が多かったのですが、ユートピアだけはこのアルバムではじめましてでした。この曲についてボーカルのFukaseさんがご自身のXで、2021年7月に発売されたアルバム「scent of memory」に収録された「Utopia」の続編だとおっしゃっていました。「最悪な時だから出来た素敵な曲だと思う。」と。では見ていきましょう。


イントロ

Fukaseさんの歌声で曲が始まります。ユートピアの本来の意味は「どこにもないところ」で、イギリスの思想家トマス・モアによって「理想郷」「架空の理想世界」などの意味が与えられたようです。「どこにもないところ」が「理想郷」に変化するのはなんだか寂しくて皮肉ですね。
僕がユートピアに辿り着いたら音を立てて崩れていき、君は以前からそうなることを指摘していたようです。どういうことでしょうか。

1番Aメロ

貴方がそのままの貴方でいてくれたから好きになった。自然体でいる貴方を私は好きになったのですね。でも次の歌詞では、貴方が変わらないから私はここを去るそうです。出会った頃には分からなかった貴方のいろんな側面を知って、そこが改善されそうにないから貴方のもとから離れるということでしょうか。「あなた」ではなく「貴方」と表現する点や、あなたが私のもとから去ってよ、ではなく、私の方から貴方のもとを離れるねという点に、私の慎ましさや奥ゆかしさが感じられます。

1番Bメロ

Aメロの歌詞より砕けた話し方をしているので、僕の言葉でしょう。先日わたしも友人と同じようなことを話しました。「え、今ってさ、生きていくのめっちゃ難しくない?」と。「ハードモード選んだ記憶ないんだけど。」「結婚してマイカー買って子育てしてマイホーム持ってる人ってすんごいセレブじゃない?」とか話しました。そうなんですよね、涼しい顔して平均的な人生を送っているように見える人が多いんですよね。もしかしたらわたしも周りの人からしたらそう見えているのかもしれませんが、全然そんなことないです。夜にすんなり眠れず朝すっきり目が覚めないだけで落胆するぐらいお豆腐メンタルです(お豆腐のほうがしっかりしてるかも)。「本当堪んないよ」という歌詞から、両手を膝に当てて項垂れているような様子が伝わります。周囲についていけないことに僕も落胆しているのですね。

1番サビ


自分が目指していた場所にいざ辿り着いてみると、思い描いていたものより鮮やかでなかったようです。「また色が褪せていく」ということは、イントロではユートピアが「音を立てて崩れていった」けど、その向こうにあるユートピアは本当に存在するかもと思って歩を進めたら、今度は色が褪せてしまった、というニュアンスでしょうか。
君のユートピアは目的地というより、そこに行くまでの道のり自体がユートピアだったようです。共に過ごす日々こそが理想郷なのに、目的地に目を奪われて、日々の時間の流れを僕が無視したことに君は泣いているのです。

2番Aメロ

遠くに見えるユートピアに辿り着いたら、ゆっくり眠ろう、あそこまで歩いてきた疲れを癒そうと僕は思っています。やはり目的地に目を奪われて、道中に散らばる大切なものを踏み躙(にじ)り、無意識に台無しにしてしまっているようです。

2番Bメロ

目の前に君がいるのに、その向こうにある存在しないユートピアに視線を向けています。「在りもしない」ことが分かっているのに、なぜユートピアにいる僕が笑っているかどうかを気にしているのでしょうか。

2番サビ

君が言う通りに辿り着いたユートピアは音を立てて崩れるし色が褪せていくのに、その言葉(愛のカケラ)は僕の耳に入っていなかったようです。我を忘れてゴミ箱に捨ててしまった君の言葉を拾い集めています。僕が壊したのは君のユートピア(1番サビに登場)なのではないでしょうか。ユートピアの破片=君のユートピアから生み出された君の言葉(愛のカケラ)かなと想像しました。「欠片」より「かけら」より「カケラ」のほうが粉々な感じがします(完全な主観です)。「ユートピア」という単語がカタカナ表記なので、バランスをとるために「カケラ」もカタカナ表記にしたのでしょうか。「理想郷」と書いてユートピアと読んだら、「欠片」表記になったんでしょうかね。

ラストサビ

今までは「音を立てて」「崩れていった」「色が褪せていく」など、ユートピアが崩れる過程を目の当たりにしていましたが、ラストサビでは辿り着いた時点で存在すらしておらず、既に崩れていました。僕が素通りした君にとってのユートピアはもう戻ることはない。1番サビでは泣いていましたが、ここでは君は笑っていました。忠告を聞き入れなかった僕を軽蔑しているのでしょうか。仕方ない人だなあと笑い飛ばしているのでしょうか。だから言ったのに、と眉を下げているのでしょうか。どんな風に君が笑っているのか、聴く人によって様々なイメージがありそうですね。

まとめ

目の前に転がる幸せを幸せだと認識できる人こそユートピアに辿り着けるのでしょう。ラストサビで僕のユートピアは崩れていて、君は笑っていた。ここに今までの幸せを認識できたかどうかの差が表れていると思われます。無いものにばかりとらわれないで、自分に有るものを数えて生きていきたいものです。
最悪な状況すら栄養源にして、こんな素敵な曲を生み出せるFukaseさんはきっとユートピアに辿り着ける人なんだろうなあと思いました。そして、この曲のメロディーとFukaseさんの歌声が霧のように儚いのです。聴こえてくる全ての音が、掴めそうで掴めない不明瞭な存在を表現しているような感じがします。でも同時に陽だまりの中にいるような温かみもあって、もしユートピアがあったらこれくらいの気温なのかなーなんて想像しました。

最後まで読んでくださってありがとうございました。明日もいい日になりますように🌛