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深夜の川崎は狂喜の夢に沸く。|全感覚祭 '23

今年、コロナ禍を経て久々の開催となった「全感覚祭」。初めて行きました。10月末に開催が発表されてから、1ヶ月半での怒涛のスピード開催で、深夜の川崎ちどり公園はマジでめちゃくちゃ寒かったけど、感覚がぶっこわされる面白さがあって楽しかったので記録。

「全感覚祭」はGEZAN、および彼らが主宰するレーベル・十三月が、“面白さの価値は自分で決めてほしい”という思いのもと、入場フリーの投げ銭制で開催してきた野外フェス。過去6回開催されていて、今年はコロナ禍を経て、『Road Trip To 全感覚祭』と題してのひさびさの開催となった。ただ今回は投げ銭ではなく、金額別(先着順で来場者が選べる形)のチケット制でした。※投げ銭制度も導入はされていて全感覚祭HPで事前募金を募っていた。

もうとにかく全感覚祭の緊急開催具合ったらすごくて、開催が発表されたのが10月26日、そしてアーティストの告知が11月7日、それから10日で本番というかなりぶっちぎった進行で、現場のことを思うとかなりやばい1ヶ月半だったと想像します…(いやもっと前から準備はされてたと思うのだけど)
会場入ってすぐ、その空間そのものに感覚を掌握されました。そんなぶっちぎり進行とは思えないほどコンセプトたっぷりに作られた空間に、これがGEZANの全感覚祭か・・これがGEZANの脳内(やりたいこと)なのか・・と、世界観をまざまざと見せつけられてドキドキした。そしてこの空間、おなじく今年衝撃を受けたフェス「EPOCHS」でも空間演出をされていた遠藤治郎さんが担当されていると知って、さらに感動してしまった。

夜の公園の木々を怪しく照らし出す照明演出が絶妙すぎる
GEZANの赤がサイケでドープな世界にハマる
闇に現れる巨人(下で人が操ってるやつ。海外のフェスでよく見る!)


怪しさ満載、夜市のような闇空間

今年の開催地は、全感覚祭では初となる川崎・ちどり公園。木々に囲まれた緑豊かな土地で、さらに臨海公園でもあるので、海も見れて公園内には展望台があったり、川崎港海底トンネルがあったりした。周りは工場地帯なので、夜は夜で工場夜景好きにはグッとくる感じでもあった。
ただ、時期もあって寒すぎたのが何よりも辛かった。マグマという最強カイロを携えてヒートテックも2枚重ねて行ってなるべく防寒して行ったのだけど、普段から寒がりなのでしんどかった。AREAMAPでいうと入場ゲートの反対側が海を展望できる道で、ここにトイレと喫煙所があったので、特にトイレ行くにもタバコ吸うにもめっちゃ凍えながら耐えなければいけなかった。。海風にさらされて凍えながらタバコを吸う間は普段感じられないようなサバイバル感を味わえました。

ステージは「全感覚ステージ」、「かちこみステージ」、「セミファイナルジャンキーステージ」と命名された3つのステージがあって、全感覚ステージではGEZANや踊ってばかりの国などがアクトし、かちこみステージでは切腹ピストルズや鎮座DOPENESSがまじで殴り込みのようなパフォーマンスをしていた。セミファイナルジャンキーはDJブースで、怪しくギラギラ演出された照明のレイヴ空間でみんなが踊っていました。*セミファイナルジャンキーもGEZAN(十三月)主催のイベントの一つで、今年4年ぶりに渋谷で開催されたやばいシーン。こうやってつながっているのはファンにとってはたまらないですね。

フードエリア。お客さんもGEZANドレスアップの方が多かった。

SPACE SHIPではolaibiさんを祀った仏壇があったり(隣にはレーザー祭壇もあった)、民謡バンドが独特なグルーヴを生み出していて、そして面白かったのはドネーションによる炊き出し。大きな鍋で刻んだ野菜や芋をごった煮した汁が提供されていて、寒さもあって提供開始後はずっと人が並んでいた。金額は「宇宙料金」。完全に厚意による金額設定。友人と4人で1000円でいただいたんだけど、よく考えるとフェスだとドリンクで500円はするものだし完全にドネーション金額を投入しましたね・・。紙カップに注がれたごった煮汁。あったかくて体中に沁み入ったけど、味は本当にTHE素材そのままの味ってかんじで少々の塩で味を整えたくらいのかんじでした。普段だったら進んでは食べないでしょう、、でもこの時は本当にあったかいものがお腹に入るだけで命拾いした気持ちになりました。(まじでサバイブ・・・)

olaibiさんはマヒトさんとユニットを組んでいたりGEZANのサポートをされていて、今年10月に亡くなった。
宇宙料金煮汁。命拾いした・・・・


この世界は、朝までダンスに狂う

ラインナップはこちら。20時のOPENから明け方6時まで、ほとんど休憩なし、全感覚祭ならではのかなりディープな癖のある強力ラインナップ!このタイムテーブルを眺めてるだけでやばそう具合が伝わると思います。GEZANが4年ぶりに開催するとても思い入れのある祭典。絶対にかましてくれる、俺らの気持ちを汲み取って最高の世界を作ってくれると、そういう思いで声をかけていったアーティストだと思うとなんだか胸が熱くなります。当日は深夜凍える寒さの中でとにかく体を動かして踊り狂ってないととてもじゃないけど朝まで過ごしていられませんでした。今振り返るとそれをまるで承知していたようなラインナップだなと思います。このタイムテーブルにはないけれど日が登った後、HAPPYによるアコースティックライブもあったそう(わたしはもうすでに家に帰って布団にくるまっていた時間)。SNSで翌日みたらとっても良さそうで、生で聞きたかったなあ。私は切腹ピストルズ〜GEZANまでの4時間で限界を迎えてしまいました。

だいすきな踊ってばかりの国とGEZAN。GEZANはもちろんとして踊ってばかりは絶対に見たかった。クレーンがそびえ立つように剥き出したままのトラックを3台並べたステージに、薄着の彼らが、張り詰める夜に登場すると息をのむような圧を感じた。闇の中輝く光が眩しすぎる、魂のこもったライブでした。踊ってばかりの国のライブは、鼓動打ったままの心臓を投げてよこされるようなイノチ感を感じます。大好きなevergreenを聴いている時はもう気持ちがいっぱいいっぱいになってしまった。泣くかと思った(いや泣いてた)。全感覚祭に来ているお客さんたちはみんな踊ってへの愛もすごくて、前方ずっとぎゅうぎゅうで、彼らの音楽に合わせて挙がる手が、その瞬間に必死にしがみつくかのように見えていい意味で苦しいというか胸を掴まれるような感覚で本当に尊かった。みんなが生きていた。

そしてGEZANはもはやお客さんの熱狂というか凄みに入って行けずに後方から見ていた。時間になって出囃子が響き渡ったと思えば神輿?に担がれてステージまで移動するマヒトさん。激しさ全開で行くのかと思いきやゆったりと奏でる時間もあり。後方から見てるだけでもお客さんの熱がすごかった。冒頭の出囃子神輿もさすがだったし、クレーンから人の3倍くらいありそうなでかい木が吊るされて揺れたり(意図がよくわからなかったけどとにかく落ちないかヒヤヒヤした)、彼らのやりたいことをやっている感が良かった。最後の最後には「暴れて終わろうぜと」マヒトさんがお客さんの中にダイブしていったりして、本当に生命力が溢れる、血が湧くような、生きた心地がする時間だった。全感覚祭に集ったすべての人が、この瞬間を生きていることを誇りに思っただろうと思う。


とんでもない切腹ステージ

他にもヤバいシーンがたくさんあって、やっぱり印象的だったのは会場のお客さんのえげつない盛り上がりだったなと思う。お客さんっていうよりもはや群衆!って感じだった。かちこみステージで切腹ピストルズが太鼓を鳴らし鐘を鳴らしのパフォーマンスをしていたときはやばくて、火事でも起こったんだろうかぐらいの勢いでとにかく大盛り上がりでした。煙なのか土埃なのか熱気による湯気なのか、そんなよくわからないものを巻き起こすほど湧き上がるお客さんたち。一人が太鼓を抱えてステージから降り会場を歩き回り、ステージに戻って行ったかと思えば途中お客さんの中で立ち止まりそこでどんどこどんどこ太鼓を鳴らすなどなど。お客さんたちもノリノリで煽り立てるし、これはカオスすぎてちょっと理性みたいなものは完全にかち割られました。

ぶれぶれiphoneでは伝わりにくいんだけど本当にアツすぎた


夜はみんなで踊らにゃ損損

あとSPACESHIPエリアでは炊き出しの隣で唐突に盆踊りが始まるなどもありました。エリアを大きく囲ってお客さんたちも一緒に輪になってレッツ盆ダンス!確かにこんな場所にいると、踊らにゃ損損という気持ちになってきます。ひとしきりダンスが終わるとエリアは拍手に包まれました。
深夜の川崎のグルーヴったらハンパないなと思った。とにかく深夜っていうのはわたしたちにとって狂気だ。深夜凍えるほど寒い中こんなヘンテコな場所にいると脳がちょっと麻痺してくる。いっちゃえ!やっちゃえ!そんなハイな気持ちになってしまいます。こんな言葉は適切ではないと思うけれど、まるでドラッグだった。体温は下がるが気分は上がる、辻褄の合わない命の淵にいるようで、ここは天国なのか、はたまた地獄なのか。もはや狂気、いや狂喜の沙汰だ。この場所に集った人たちはみんな狂喜な人たちだった。


最後に

初めてこういったアーティストが主催するイベントに行ってみたけれど、とても面白かった。やっぱり彼らの思想・世界観・価値観、GEZANでいえば宗教観におよび、音楽や言葉とはまた違った表現を浴びることができるのがすごく良かったなと思います。アーティストや出演者のラインナップも、彼らのもつ関係性の中でもきっと特に強い結びつきを垣間見ることができたものだし、自分たちの考えていることを忖度抜きに表現できるという思いっきりの振りかぶり感が本当に素晴らしいなと思った。そしてそれに呼応するように集ったスタッフやお客さんたち。GEZANの声明によって集った全ての人によって作られた空間だった。マヒトさんはHPで長文のステートメントを二度に渡り更新していて、それだけの思い、伝えたい世界っていうのを私たちに開催前から話してくれていて、そしてそれは現地で堂々たる様で見ることができた。

ルールはルールで、それ以上にその場所その瞬間で
想像力と思いやりが交錯するところをイメージしています。(マヒトゥ・ザ・ピーポー)

交錯といえばこのキービジュアルも本当にすごくて、出演者と中心的に動いたスタッフの方1人1人の名前をビュジュアルにしたものだそうです。こういう人と人とのつながりだったり出会いだったりを祈りの中に交えていくっていうのは本当に彼らの思想の深いところを見せられている気がします。

完全に想像は凌駕されてしまったけれど、集ったお客さんみんながGEZANとアーティストと全感覚祭に対してリスペクトを抱いていたのをすごく感じれたし、やっぱり普段のフェスよりもアーティストに向けている信仰の強さを肌で感じたなと思う。こういった、アーティストの表現空間に体をまるごと放り込めるっていうのはめちゃくちゃ興味深いなと思ったので来年はアーティスト主催のいろんなイベントに足を運んでみたいと思いました。

そしてコロナ禍では開催ができなかったものの、始まってから数えて、全感覚祭は来年10周年となるそうです。ということで、かなりカオスでディープでドープな空間になるでしょう。。。むしろそれを期待しています。(ただお願いなので秋くらいにしてほしい。)来年も開催をチェックしなければ!

私たちが目撃したと思っていた世界は、世界に目撃されていたのかも知れない


Road Trip To 全感覚祭 概要

開催日時:2023年11月18日(土)OPEN 20:00 / START 21:00〜日の出にかけて
会場:ちどり公園(川崎市)
料金:A : ¥3,000 / B : ¥5,000 / C : ¥7,000 / D : ¥15,000 ※Donation
出演:
GEZAN / 渋さ知らズ / ゆるふわギャング / 踊ってばかりの国 / 切腹ピストルズ / moreru / 鎮座DOPENESS / Glans / やっほー / KOPY / abos / penisboys / 高倉健 / YELLOWUHURU / THE GUAYS / Sapphire Slows / DJ HIKARU / 天国注射 / SUMMERMAN / 有刺鉄戦
主催:十三月/GEZAN
運営:全感覚祭実行委員/infusiondesign inc.
公式サイト:https://zenkankakusai.com/
X:https://twitter.com/zenkankakusai
Instagram:https://www.instagram.com/zenkankaku_official

アフタームービーはないようなので、ぜひハッシュタグでナマのメディアを漁ってください!
まじでやばいです、ディープです。
#全感覚祭


おしまい

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