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Oxford MBA 2学期(Hilary)の振り返り

あっという間に留学生活も半年が経ち、折り返し地点を迎えました。備忘録を兼ねて、この2学期(Hilary Term)の活動を振り返っていきます。


Impact Lab

Impact Labとは、Saïd Business Schoolの中にあるSkoll Centre for Social Entrepreneurshipが運営するインパクトリーダー育成のためのオックスフォードの学生向けプログラムです。

Impact Labは1学期(Michaelmas)と2学期(Hilary)にそれぞれ開催されます。オックスフォード大学の修士・博士の学生が各学期25人ずつ募集され、書類と面接での選考を経て、様々な領域で社会課題の解決に取り組んできた志の高い学生たちが集まります。私も受験時から絶対に参加したいと思っていたプログラムだったので、参加することができてとても嬉しかったです。今学期のImpact Labの参加者は、半分がMBA、他は医療・公共政策・生物学・国際関係・教育など多様な領域の修士・博士の学生が集まりました。

Impact Labのプログラムは主にオフサイト合宿(Retreat)と授業(Module)、ストーリーテリングのセッションで構成されます。以下が実際に私が参加したプログラムの概要です。(ここには記載されていないのですが、平日昼休みにランチを食べながら学生同士で学びをシェアするセッションも参加任意で行われます。)

最初の合宿ではリーダーシップに関する様々なアクティビティが行われました。リーダーの倫理についてのディスカッションや、互いの価値観について絵を描いて深掘りするセッション、TEDスピーカーコーチによるストーリーテリングのレクチャー、産官学民の協働・エコシステムビルディングについて考えるワークショップ、社会起業家によるパネルディスカッションなどが行われました。
以下は合宿の際に作成されたグラフィックレコーディングです。

授業ではSocial Impactの定義を皆で考えてみたり、世界各地で起こった社会運動のケーススタディを行ったりしました。特に私にとっては、2回目の授業のゲストスピーカーの方が、どのように一分野の社会起業家としての活動から、より広いステークホルダーのコラボレーションを通したシステム変革の社会運動へとキャリアを変えていったのかという話をされていたのが非常に参考になりました。

ストーリーテリングのセッションでは、参加する学生全員が4分間のストーリーテリングを発表し、互いにフィードバックをしました。それぞれの人生のエッセンスが詰まった心動かされるストーリーの数々を聴くことで、よりいっそう学生同士の相互理解や信頼関係が深まりました。

フィードバックはポストイットに書いて互いの背中に貼ります

Impact Labのプログラムは短くあっという間でしたが、最後のリトリートでの振り返りやディナーを通して、参加した学生同士の絆を感じることができました。このプログラムの1番の価値はコミュニティである、とImpact Labに参加した先輩から聞いていたのですが、その通りだと思いました。社会課題の解決に対して志を持った学生たちが、心理的安全性の保たれた中で、専門や国籍、人種などあらゆるものを超えて深く繋がることができるこの環境は他に変え難いものだと感じます。

授業

今期私がとった授業は以下の通りです。

前半:
・GOTO(Global Opportunities and Threats: Oxford)
・Strategy
・Firms & Market
後半:
・Entrepreneurship Project
・Capitalism in Debate
・Innovation Strategy (※)
※ Innovation Strategyのみ選択科目、それ以外は必修でした。

以下では、特に印象に残った3つを紹介します。

GOTO(Global Opportunities and Threats: Oxford)はOxford MBAの看板授業で、システム思考を使ってグローバル規模の課題に対する解決策をパートナー企業/組織と一緒に考えます。今年はASEAN地域におけるエネルギーシフト、ペルーにおける鉱山業、UNDPのブレンデッド・ファイナンス、インドにおける農業・食料システムという4つのテーマに分かれて6人1組のチームで課題に取り組みました。(私はもちろん最後のものを選びました。)毎回の授業でシステム思考のツールについてレクチャーと、それらを使うグループでのワークショップが行われ、複雑な課題をどのように捉えていけばいいのか実践を通して学びました。

私たちのグループはFarMartというインドのアグリテックスタートアップがパートナーでした。MBAの授業でインドの農家の話を聞けるとは思っていなかったので嬉しかったです。

Entrepreneurship Projectでは、5人のチームを組んで起業プランを考えるというもので、2つの学期をまたいで行われます。テーマも自分たちで決めることができたので、自分の専門(Food Sustainability)の領域で興味のあるメンバーを集めて進めていたのですが、中間プレゼンテーションの専門家からかなり厳しいフィードバックを受け、やはり起業は簡単ではないなと痛感しました…。プロジェクトは来学期も続くので、なんとか形にできるように引き続き頑張ります。

Capitalism in Debateは、Oxfordらしいと言われるMBAの授業のうちの一つで、その名の通り資本主義社会の課題について議論します。ミルトン・フリードマンの「企業の社会的責任は利益を増やすことである(The Social Responsibility of Business is to Increase its Profits)」という主張について賛成か反対か、というディスカッションをするというところから始まり、気候正義(Climate Justice)や、人種資本主義(Racial Capitalism)など、広範に現代社会の問題を議論しました。最後にはグループで課題を決めてディベートを披露する機会があり、私のグループではZARAの原料調達についてディベートを行いました。

今学期のスタディーグループ。国籍はインド、ニュージーランド、アメリカ、ケニア、日本と多様なチームです。

食・農業に関する活動

今期は学校外での食農関連の活動にも積極的に参加しました。
2月にはEIT Food(欧州イノベーション・技術機構の食料セクター)が主催する、食業界のリーダーたちが集まり食料システムの変革について議論するブリュッセルでの2日間の合宿に参加しました。募集要項にシニアリーダー向けと書いてあったので、学生では参加できないかなと思いつつ主催者に連絡をしたところ、議事録係として参加させてもらうことができました。食品メーカー、小売チェーン、シンクタンク、学術機関など15人ほどで食料システムをどこからどのように変えてくことができるのか、アイディアを出し合いました。それぞれの組織を超えてどのように連携し食料システムを持続可能なものにしていくことができるのか、というのは私がMBAを通して考えたいテーマでもあったので、この合宿はとても参考になりました。今後も議論を続けていくとのことで、これからの展開も楽しみです。

3月にはAFN Network+(the UKRI Agri-food for Net Zero Network+)が主催するシェフィールドでの2日間のカンファレンスにも参加しました。こちらは農業・食料システムにおけるネットゼロの達成に向けて、UKRI(英国研究・イノベーション機構)の60万ポンド(約1億円)の予算をどういったテーマの研究に充てるべきか、以下のテーマに分けて議論するというのがメインのコンテンツでした。

1. Healthy and Sustainable Diets
2. Land Productivity
3. Food Security and Trade
4. Land Use and Land Management
5. Circular Food Systems
6. Behaviour Change

その他、食農業界のリーダーたちによるネットゼロ実現に向けたパネルディスカッションや、参加者同士のネットワーキングセッションも行われました。参加者は150名以上いたのですが、研究者が半数、それ以外の政府関係者や民間などが半数という構成でした。ここでもMBAの学生は異色だったのでやや参加を躊躇しましたが、実際に参加してみるとその参加者の多様性に驚きました。また、このようにオープンに参加者を募ってコラボレーションを促すというのはとても面白い仕組みだと感じました。

その他、UCL(University College London)で行われたAFN Network+ の農業・食料システムのモデルを作るワークショップに参加したり、前回1学期の振り返りnoteでも紹介したIFSTAL(Interdisciplinary Food Systems Teaching & Learning)のSOAS University of Londonでのプログラムに参加したり、Skoll CentreとOxford Martin Schoolの共同主催で行われたグローバル食料システムに関するカンファレンスに参加したりしました。

そのほか

他にも数々のイベントがありました。1月には日本人同期3名でMBA生向けにJapan Nightという文化体験イベントを企画し、100人以上の学生が参加してくれて大盛り上がりでした。

また、実は1,2月は就活もしていました。何事もなければ秋からはひとまず東京に戻って働くことになりそうです。(詳細は個別にお話しできればと思います!)

イギリスにいることを活かして、隙があれば旅行もしています。学生なので贅沢はできませんが、せっかくの機会なので卒業までにできる限り行ったことのない地域に足を運んでみたいと思います。年末はMBA同期たちとのモロッコ旅行に続き、イタリア、オーストリア、ハンガリーへ旅行しました。また、この春休みはノルウェーにオーロラを見に行きました。4月中にはケニアへのMBAトレック、そして南アフリカでのフィールドワークに参加してくるので、こちらも楽しみです!


オックスフォードでの生活やMBAのプログラムなどについて質問がある方は、引き続き以下のLinkedinまでご連絡ください。できる限りお答えしています。(申請時にメッセージを添えていただけると助かります。)

https://www.linkedin.com/in/rin-ishikawa-kikuchi/

Special Thanks to:
CWAJ, Cartier Japan, 食生活研究会, 神山財団, Zonta International, British Council, Saïd Business School Foundation, 日頃お世話になっている皆さん

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