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美術館に行くハードル

装丁が好き!というのは本を選ぶ大きな理由になる。山内マリコさんの『山内マリコの美術館は一人で行く派』も装丁に惹かれて読むことを決めた1冊。(もちろん先に#読書の秋2021を見てその中から決めたんですが…)山内マリコさんの本は小説を含めても初読です。


漫画『ブルーピリオド』で主人公の八虎が美術館に行くシーンがいくつかある。その描写を見てから、美術館とか博物館ってただいいな〜とぼやっと見ているだけじゃ勿体ないし、想像したり観察したりすればもっと価値のあるものだとわかり、行きたい欲がむくむくと湧いてきたのだった。

意味不明だと思ってた現代アートも
積み重ねを知ったら見えるものが変わるのかな
『ブルーピリオド』8巻より

『ブルーピリオド』のはもちろん美大生目線だけれども、だからと言ってプロではなく友人から教えてもらう場面も多く、わたしも勉強になっている。美術館のシーンでは、実際に見ることで知る様々な背景や発見、楽しさをくっきりと想像できてなんだかウキウキしてしまった。

そんな折に読むことになったこの本。
この展示を生で見たかった!!っていうものもいくつかあり、『推しは推せる時に推せ』じゃないけど、『美術展は行ける時に行け』だなとしみじみ感じた。山内マリコさんの目を通して空気を知ることはできるけれど、もしもその場にわたしが居たならまた違う感情を抱くはずだし、美術展は見逃してしまったら二度と同じものを見ることはできない。単体の作品は見られたとしても、演出自体を見るのは撮影可能な美術展くらいだと思う。それだって断片的なものしか拾えない。

山内マリコさんは美大を出ておられるし、わたしよりは美術に詳しいと思うけれど、書いてある言葉はとても率直で辛辣でもあり感じたままだった。受け取ったものが大層なものでなくてもいいんだ!たとえば面白いとか背景に興味を持つとかそんな感じでゆるく楽しめたらそれだけでも価値があるんだということを感じた。学生時代も美術に苦手意識があったし、今でも美的センスを含め美術の知識や感性は乏しいと思う。それでも美術館に行くことはたのしいことなんだと本書を読み文字でその楽しさを知ることができた。
早速いくつか企画展を調べたので行ってみたいと考えている。自分の頭の中からは出てこないような奇抜な美術展やレイアウトがぼろぼろ出てきて携わる人たちの美術にかける熱量の高さにも驚く。「美術館」っていう響きが少し難しかったわたしの美術館に行くハードルをぐんと下げてくれました。とても有難い。

#読書の秋2021  #山内マリコの美術館は一人で行く派展

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