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お隣のA子さん Part.0≪散文詩≫           恋という名の幻想~だって隣の女子高生が失恋について聞いてくるから~

わたし
彼のこと
尊敬していたけど
尊重していなかったの
だから
あの恋は苦しくて
散ってしまったの
あなた、誰かとの関係に
大きな期待を抱いたことはおあり?
思い描いていたものが
現実の形とまったく違ったときの
失望は知っておいでかしら?
みじめの極致よ
しかも厄介なことに
悲しみと怒りで
失望と惨めさを隠していたの
正直ね
悲しさなんて耐えられるのよ
私はね
プライドがずたずたになったときに
本当に苦しくなったの
だって、そうでしょ?
自分を定義づけるものが否定されたら
もうこの世に存在できないでしょ
それでね
落ちるところまで落ちて
ようやく気付いたの
本当の彼をまったく見ていなかったって
わたしが恋していた人は
いったい誰だったのかしらって
好きだったのよ
とてつもなく
他の誰も目に入らないくらいに
だけど
その対象自体が幻想で実在しないものだと、
その幻想によってわたし自身を形づくっていたと
気づいたとき
空っぽの自分を恥じたわ
他者に自分の理想を投影して
自分自身には生ゴミのように蓋をして
みないようにしていたのよ
最後に「ごめんなさい」としか言えない恋なんてね
碌なものじゃないのよ
いまでもわたしの夢にでてくる男は彼だけよ
本当に恋しい人はまったくでてきてくれないわ
でも当たり前よね
彼はもう1人のわたしなのだから
だからね
あなた
恋をするなら
しっかり相手のことをみてあげなさい
間違っても尊敬できる人じゃなきゃ付き合えない
なんて、馬鹿なこというんじゃないわよ
あなた自身がちっぽけな存在でも構わないのよ
相手だってよく見ればたいていちっぽけなものよ
それでも愛おしいって思えるなら最高ね

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