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福田昭夫議員の考えを支持し、勇気を称賛する

本ブログでは、あまり政治・政党の話はしないようにしてきました(反自公であることは明らかだと思いますが)。それは、「支持政党」などを明らかにすることによって色眼鏡で見られることで、正しい経済観・財政観を広めることに障害となるかもしれないと考えたためです。しかし、今回は福田昭夫議員の勇気に敬意を表して、あえて政治について述べたいと思います。
 
産経新聞2023年12月14日ネット版に以下の記事が掲載されました。

「立憲民主党の福田昭夫衆院議員は13日、党の次期衆院選公約で消費税減税の明記を先送りしているとして、長妻昭政調会長の辞任を求める文書を党所属議員に配布した。共同通信の取材に『党内で議論を尽くさない長妻氏の態度は反党行為だ』と述べた。これまでの党内議論で、福田氏ら一部議員は直近2回の国政選挙で打ち出した消費税減税を引き続き掲げるよう求めた。だが長妻氏は衆院選時の経済情勢を踏まえて判断するとしていた。文書では『長妻氏の独断とも言えるやり方』で議論が進められたと批判し『辞任を強く求める』と明記した。」

こんな重要な動きを産経しか報じない(たぶん産経は「立憲の内紛だ!」と喜んで報じているのでしょうが)のは、大変残念です。これは本当に重要な動きであり、立憲の内部にも「政府の財政は、どのように回っているのか」を理解している議員が存在しているという証明であり、これに呼応する動きがあれば、野党第1党の経済政策が根本から変わる可能性があります。その先には「政権交代」も視野に入る、そのぐらい重要な転機になるかもしれないのです。

もともと立憲は旧民主党の流れを汲んでおり、その源流は「自民党が財界や地元業者とグルになってバラマキ政治をしていることに対する改革勢力、すなわち『アンチバラマキ』」から始まっています(ちなみに、今の「自民党が財界や外資や新自由主義者のレントシーカーとグルになって、日本も地方も衰退させている」のに比べたら、昔のバラマキの方が遥かに良かった、と言えます)。そのため、議員や支持者の意識に「無駄をなくす」「倹約する」ことに対する親和性が極めて高く、「支出する」ことに忌避感がある人が多いのです。確かに「同じ使うなら、有益に使う」ことは重要です。しかし、それ以前に、「どのくらい使えるのか」を理解していなければいけません。そうでなく、やみくもに「無駄をなくす」に走っても、人間なら栄養失調で死んでしまうし、経済なら不景気のどん底になります。

そもそも立憲から立候補するような人は、「経済」よりも「人権」や「政治腐敗」に対する怒りでやむにやまれず立候補するような人が多いと思います(それはそれで素晴らしい事ですが)。ですからもともと経済への親和性が低い。国民の困窮を救いたいとは思っていても、それ以上に「人権」や「政治腐敗」に、目が、関心が行ってしまう。しかも、支持者にもそのような人達が多いので、その閉じられた空間内では「それが一番大事」となりがちです。しかし、立憲の支持者ではない、一般の国民・有権者の中では違います。特に最近は長年の不況のために、「衣食住に困る」「困るとまでは言えないが楽ではない」国民が増えています。そのような、来月の生活に不安を覚えるような国民に対して「人権」とか訴えても、「俺の、私の人権はどうなの?」と、むしろ反感すら招きかねない状況なのです。以前の、いくらかでも右肩上がりの時代であれば、少しは気持ちに余裕があって「人権」についての話ができたとしても、今は「まずは、私や家族の暮らしを何とかする」のに必死で、それどころではないのです。

「政治腐敗」も同じで、自民党が酷いことをやっていれば、国民の生活が苦しい状況ならなおさら批判も大きくなるでしょうし、自民の支持率も下がるでしょう。しかし、一般国民にとっては「自民批判」=「立憲支持」にはならないのです。むしろ、(今は「裏金」に対して一般国民の批判が集中していますが、遠からず)「批判はわかったが、それより、私の、家族の暮らしに役に立つことをやってくれ」という意見に切り替わってくるでしょう。誰にとっても「自分の暮らし」が一番重要なので、自民批判をしていても「私の暮らしに役立つことはしていない」のなら、早晩批判されるようになります。特に、生活が苦しい今ならなおさらです。残念ながら立憲の議員や支持者、特に古参の人たちの少なくない部分は、それを心からは理解できていないのです。パンのみでは生きられないかもしれないけど、まずパンがなければ絶対に生きられないのです。「立憲支持者でない人=一般国民」に投票所に来てもらわないと未来永劫政権交代はできません。そのためには「国民の生活が楽になることを具体的にイメージできる政策集」が必要なのです。

もちろん立憲にもすでに政策集はあります。しかし、列挙すれば良い、というわけではありません。列挙したそれぞれに財源が必要です。どこにその財源があるのでしょうか。今は政権を取っていないから、「何となくポエム的な話」で済ませていても、その財源論に本気で突っ込む人は少ないでしょう。しかし、今のままでは、仮に政権が獲れたとしても、政権交代から半年で消費増税に言及した菅首相、最終的に自公と談合して増税を決めた野田首相らの二の舞になるだけです。「明白な『公約違反』である『消費増税』を決めたことによる、一般国民の民主党嫌い」の影響は、今に至るまでずーっと引きずっているのですが、それを立憲の幹部は理解しているのでしょうか。「別の党だ」という言い訳は、メンバーがそう変わっていない以上、通用しません。

旧民主党が(というよりは、野田政権が、ですが)なぜ増税に舵を切ったのか? それは「財源」が探せなかったからです。当時だって、旧民主党のメンバーは、一生懸命無駄と思われるものを削って財源を捻出しようとしたのに、できなかったのです。当時できなかったことを「今回はできる」と言えるでしょうか? よしんば言えたとしても、「どうやってできる」のでしょうか? それを、国民への十分な説得力を持って示せなければ、誰も信じないでしょう。

列挙している政策を実行するための「財源」をどうするか、の議論は必要不可欠です。防衛費を圧縮する程度では、全然足りません。「基金」の剰余金とかの話も出ていますが、「1回限り」の話ですから、毎年やっていく施策には全く不十分です。そして、立憲の議員さんたち自身が、「いくら足りないかはちゃんと計算していないから判らないけど、何となく足りなさそうだ」と思うからこそ、中途半端な財政政策しか出せていないのです。でも、中途半端な政策では、国民の心に届かないし、そもそもその「中途半端さ」を見透かされてしまっているから、支持率が伸びないのです。

今持っている「政府財政の考え方・通貨の仕組みの考え方」では、余分な財源など出るはずがないのです。逆に、今持っている考え方で、「政府の借金を返すには、どうしたら良いか」を考えればすぐにわかると思います。GDPの2倍以上、国家予算の10倍もの借金を返せるはずがないのです。返すためには「年間いくらかでも返済する」ことが必須ですが、戦後一部でも返せた、すなわち財政黒字だったのは、あの異様な「バブル期」の数年だけでした。そのバブルの後始末で日本は酷い目にあっているわけですが、そのような異常な状態でもなければ返せないし、仮にその時は返せてもその後にもっと酷いことになるのは、バブルの歴史が証明しています。バブル時期の数年を除けば、借金は常に増え続けているのです。そのような状況下で、借金を返済しきることなど、誰がどう考えようができるはずありません。そのくらいは中学生でもわかる話です。だから今の財政観では、「財政破綻」のシナリオ、バッドエンドしかありえないのです。

ここまでは今までの財政観で考えられるのだから、せめてここまでは考え付いて欲しいと思います。ここまで考えが及ばないのは、単なる「考えることをサボっている」だけです。あの明石順平氏は「バッドエンドしかない」ことを明確に著書で述べていて、少なくともその点については真摯であると思います。

「今の考えでは、いくら頑張っても、バッドエンドしかない」・・・そこまで考えられたら、ようやく「次」が見えてくるのですが、ここで「次へ進む」でなく、「思考停止」に陥る議員さんが多いのです。それは「対策は、バッドエンドを可能な限り遅らせること」と考えてしまうのです。そのため「できる限りの緊縮政策を採る」ことに繋がります。その結果、現在の日本の政治家の大多数は「少しでも借金がふえるのを抑えよう」と考えています。しかし、現実にはその場しのぎにもなっておらず、状況は悪化の一途を辿っています。そしてこれは、「未来はバッドエンドで確定している」ことを前提にした話であり、そんな未来を子供たち・孫たちに残して良いのでしょうか? 何か「バッドエンドでない方法」を考えるのが、今に生きる我々の責務だとは考えないのでしょうか? もっと根本的に考えを改めなければ、バッドエンドしかないのです。なぜ日本だけがそうなのか? 他の国はどうなっているのか?

ここまで来て、初めて冷静に他国と比較ができます。他の国と日本はどこが違うのか? 「生産性が低い?」「高齢化が著しい?」いやいや、「バッドエンド=破滅」の話です。そんな、他の国でも見られるような生易しい話で済むわけがありません。ここに至ってようやく「何か、著しい違和感」が生じた人がいれば、それは正しい違和感です。そもそも「本当に借金なのか?」「誰が誰に返すのか?」「返す必要があるのか?」、そういった、根本的なところに疑問を持つべきなのです。それを持たない限り、「バッドエンド」しかないのです。

「借金は借金だ」と言い続けるアナタ、貴方は子供たちの将来に何を残したいのですか? そもそも「国債」って何なのか? 「負債」って何なのか? 「通貨」って何なのか? そこまで考えるしかないのです。今日本にいる「学者・評論家」の多くは、皆が幸せになる処方箋を書いてくれず、ひたすら「バッドエンドを先延ばしにしようとしながら、より悪化した状況に日本を引きずり込んでいる」のですから、自分たちで考えるしかないのです。そこまで考えが及べば第1段階はクリアです。その後もまだまだ長い道ですが、この第1段階、すなわち「国債とは何なのかを、誰でもなく自分が真剣に考えなければならないことを理解する」ことこそが、一番高いハードルなのです。ここを感じないことには、全く無知のまま、駄文を垂れ流すことになるのです。

多くの政治家や評論家やメディア人、果ては、経済学者の多くまでもが、真面目にそれを考えずに、表面的に出てきた経済事象、たとえば円安や円高、物価や賃金の上昇下降、株価の変動などについてのみコメントしています。経済事象は非常に多くの要素が絡んで起きていますので、それぞれが自分の都合の良いように解釈していても矛盾を感じにくく、そのような言説が日本の言論空間を跋扈しているのです。特に「経済学者」という肩書の付いた人たちが真面目に考えていないのは、本当に困りものです。彼らは「経済学」の中の狭い専門領域では何がしかの業績を上げているのでしょうけど、自分の専門から外れた内容である「国債とは何か」は全く理解せずに、金本位制時代の教科書に書いてあった通りの内容、現在の信用貨幣・管理通貨制度の時代では通用していない内容を、テレビで喋り散らかしているのです。

「国債とは何なのかを真剣に考え続ける」ことができれば、そう遠くない時期に真実に近づくことができます。多くの、与野党の議員さんを含む国民が、その手前で考えるのをやめてしまっているので、今のような事態になっているのです。あなたが自分で考えることが、未来へ続く第一歩となるのです。考える材料は、まわりにたくさん転がっています。材料として私のNoteも挙げておきます。

国の借金が過去最高?(1) https://note.com/_noirnoir/n/ndd95d4874259

「日本は借金で破綻寸前」は本当か? ・・・国債の仕組み①  国債は政府予算のうちどの程度発行されているのか?
https://note.com/_noirnoir/n/ne89e8ae43144

「日本は借金で破綻寸前」は本当か? ・・・国債の仕組み② 国債とは何なのか? 「国民一人あたり800万の借金」というのは本当なのか? https://note.com/_noirnoir/n/n8c6674f004f1

福田昭夫議員の話から、「国債」の話まで繋げさせて頂きました。これは当然なのです。「国債が返すべき借金だ」という誤った理解、ただその一点のみで、日本は需要不足を改善できないで、どんどん貧しい国に戻っているのですから。そこさえクリアできれば、国も国民もはるかに豊かになれるのに、クリアできなければ今後も更に悪化する道しかないのですから。そして、立憲が再度の政権交代をできないでいるのも、ここがクリアできないことで十分な政府支出を伴う公約を掲げることができないためなのですから。

私は個人的には「立憲にはしっかりしてほしい」と考えています。「経済観の誤り」さえ改善できれば優秀な議員さんも多く、国民サイドに立てる政党だと思っています。今回批判を受けた長妻氏をはじめ、小川氏、枝野氏、岡田氏など、「財政観」さえ間違えてなければ、みな極めて有能で真っ当な政治家だと思いますが、残念ながらその一点で、どうにもならないぐらいドツボに嵌ってしまい、むしろ国民の貧困化を進めるような方向へ、意図せずに加担してしまっているのです。

現在の状況では「正しい経済観」を持っている議員は、「れいわ」の全員と、あとは各党に少しずつしかいませんが、れいわで政権交代をするところまで行くには、議員候補者すら少ない現状では、相当の時間がかかるでしょう。それよりは、立憲の積極財政派が立憲内での主流となって政権交代をする方が、私は、実現可能性として早く実現できる可能性がある、少なくともれいわと連携できるところまで行けば政治地図を相当変えることができる、そのためには立憲内の議員さんに「正しい財政観」を広めるしかないと思っています。

ただ現実には、立憲の中の大臣経験者、幹部連、古参議員などは、ことごとく「無理解=国債は返すべき借金だ」と考えているので、自縄自縛のあげく、掲げる公約のレベルを大変チャチなものにしてしまっているのです。更に何人かは「反対を押し切り、国民から嫌われるのを承知の上で、未来の日本のために消費税を上げた『俺たち』は必ず後から感謝される」と「ヒロイック」な気持ちすら持っているのではないかと思います。おそらく政権にあった時に、財務官僚に吹き込まれた内容なのでしょう。ここまで洗脳が効いていると、「認知的不協和(国のためにあえて嫌われ者になったのに、それが正しくなかったというのは脳が受け入れられない)」があるので、考えを変えることは無理かもしれません。

そういう人達ほど選挙は強く、彼らの支持者も完全にそういう意識に染まっている人が多い。それでも、残りの議員さんたちや支持者たちで頑張るしかないと考えています。もちろん現実としては全く容易ではありませんが、とにかくあらゆる政治家・国民に、正しい財政観を伝えていくことが「王道」であることは間違いないので、党派を超えて進めて行くしかないのだろうと思っています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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