SrE1l084のコピー

番外編 レクチャー「 《静かなレトリック》と『建築におけるフィクションについての12章』」 立石遼太郎

0 はじめに

2015年度の東京藝術大学大学院修了制作において、「レトリックから建築を見ると、どんなことがいえるのか」という試みを行いました。僕はそれを《静かなレトリック》と名付けているのですが、今日は《静かなレトリック》の内容と、それがなぜ「静か」なのか、ということをお話できればと思います。また、現在「建築におけるフィクションについての12章」という連載を行っているのですが、今日の話の最後には、レトリックからフィクションへとうまく橋渡しができればと考えています。それではよろしくお願いします。
レトリックにせよ、フィクションにせよ、僕の考えの根底にはルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』が存在しています。『論理哲学論考』における最も有名なフレーズは「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」ですが、個人的にはあとふたつ、重要なフレーズがあると考えています。
《静かなレトリック》はあえてそのふたつには触れず、「語り得ぬものについては、沈黙せねばならない」という言葉を重要視していたのですが、これからフィクションについて考えるにあたって、残りふたつが重要になってくると考えています。
今日はまず、『論理哲学論考』がどういう本なのかということを考え、その後、レトリックの話に繋げていきたいと思います。

ここから先は

19,748字 / 14画像
この記事のみ ¥ 400

自主ゼミ「社会変革としての建築に向けて」は、ゲスト講師やレポート執筆者へ対価をお支払いしています。サポートをいただけるとありがたいです。 メッセージも是非!