砂と風の記憶、文明のバトン(タランパヤ自然公園/アルゼンチン)
アルゼンチン滞在20日目。
イスチグアラスト自然公園を巡ったのあとはさらに車を走らせタランパヤ国立公園へ。
イスチグアラストの様子はこちら↓
タランパヤ自然公園に到着し、入り口の管理事務所で専用のバスへ乗り換え公園内を散策する。
専用バスを待つ間、お昼ご飯を食べた。
お昼付きとツアー予約ページには書いてたけど付いていなくて、リュックに入っていたパンをしがんだ。お貧しい。
そしてツアーは英語ガイド付きって書いていたけれどそれもなくてめちゃめちゃな英語翻訳の紙を渡されただけだった。
公園内は観光客が少なく閑散としている。英語ガイドなしというのも海外観光客からの人気のなさを感じる。
がしかし、タランパヤ、かなりすごかった。
バスに乗り、赤い砂岩に覆われた大地を走って行く。
隆起してできた岩や風で削られて形成された岩、そして大きな岩の壁が目の前にそびえ立つ。ダイナミック!
早速観光客が少ない理由が謎めき始めた。
感動は続く。移動し、かつて川だったという場所へ。
太古の川床には水が激しく流れた痕跡があった。
風とか砂で削られた岩は荒々しいけれど、ここはスムースなかんじ。
水が削れた原因ということがよくわかるつるっとした表面感。
乾燥した砂漠地帯だけど、「川です」って感じの石が転がっているのも面白い。
水の流れを感じるのに地面はカピカピしている。
乾燥と湿潤が同居する不思議な土地だと思った。
今までは砂漠地帯=砂!乾燥!以上!と思っていた。
この日私は砂漠地帯というカテゴリーのなかでの振り幅を知った。
タランパヤには緑もたくさんある。
乾燥した黄色っぽい緑じゃなくて青々とした鮮やかな緑。
この色は水が巡っている証拠だと思う。
砂漠はサボテンなどの多肉植物のイメージが強いけれどここにはいろんな在来植物があった。
緑の奥には再び大きな岩壁が現れる。
ここも砂を含む竜巻の影響で現在の形が作られたという。
岩の造形はまさに砂と風の記憶が刻まれていると思ったが、ここで見れるのは自然の記憶だけじゃない。
先住民がいたらしく紀元前500年くらいの岩絵が残っていた。
私は壁画や岩絵が大好き。と言っても全く詳しくないのでこの世界旅行で理解を深めたいと思っている。
こうゆう絵は文明や命の営みのバトンを繋いでいってるような感じがする。
目に見えるものも見えないものも、感じたことを未来へと残す方法のひとつとして「絵を描く」を選んだことが愛おしい。
後世に伝えたいという気持ちは宇宙レベルの大きな喜びや神秘を感じる。
そしてこの穴は穀物を入れて食べやすいサイズに砕いていた跡らしい。
岩の中で砕くので穀物と共に砂もたくさん食べていたそう。
2500年も前の調理場が今も残っていることに驚く。
やはり石のデータ保存期間って半端じゃない。
現代人が生み出したDVD-Rは15年〜20年。USBなんかはせいぜい4〜5年。
紙はすぐ破れるし濡れたら即終了。
大切なデータは石に残そう。3億年くらいいけそうじゃない?
大満足のツアーが終わり送迎の運転手に「大雨で道に川ができて通れない、帰れない。」と言われた。
そして運転手は「迂回するとプラス1時間半ぐらいかかる、ガソリン代も払ってもらうよ。もしくは川の水が引くのを待つ。」と続けた。
ほう??と思った。
結構疲れている。朝5時に宿を出て現在18時。
私たちがガソリン代を払うのが癪にさわる。
ドライバーも家に帰らないといけないんだろうし会社が負担するべきだと思うけれど。
とりあえず「待ちます」とこたえた。
そしたら水が引くのに5〜6時間かかるかもとも言われたけどお金持ってないと伝えた。
ドライバーの人も災難だ。長時間労働。
でもわたし達がお金払う必要はない。ちょっと意地になった。待ってやんよ。
結局川ができてるところまで行って、そこで通れるようになるまで待つと言われたので車に乗った。
ふと、嘘だったのかな?とも思った。
車は進み川ができていると言っていた場所へ。
川はなかった。グジョグジョしていたが難なく通れた。
やったー!!!と拍手、笑顔。
なんだったんだ。
無事宿へと近づく中、向こうの空が黒くなりはじめた。
遠くで雷がぴかぴか光っている。
そして稲妻が走る。何度も何度も。
こんな短時間に何本もの稲妻を見たのは初めてだった。
さっきまであんなに晴れているところにいたのに。
道も通れたし、無駄にガソリン代を払わなかったのは正しい選択だったんだと改めて思った。
稲妻の格好良さに気が大きくなる。
心の中で叫んだ。
「ほらみろ!全てうまくいくんだよ!」
遠くに広がる真っ黒な空と轟く雷を見てニヤニヤした。
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