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下心出来心

嗚呼、今日も足の裏の皮が痛くない程度にめくれて新しい皮ができている。
硬くて、もう何を踏んでも感じない程に。

深夜一時に疲れ切った体を持ち帰る為に安くない銭を払いタクシーに乗る。
歩いて帰ると云う手段もあるが、誰が私を動かしてくれるのか。
たまには弱音の一つくらい可愛いねと愛でて許してくれないものだろうか。

家を出た私は、幼い頃の私が想像もつかない程強く見えていることだろう。
一ミリの妥協も許さないプライドと目標を背負って”女”を身に纏って歓楽街へ繰り出す日々。

初めはほんの出来心だった。
綺麗な衣装と意志と同じ程強い口紅と、何を訴えるかも決めていないのに鋭いアイライナー。それらの武器を手にした私は最高で最強の主人公の気持ちだった。

いつしか当たり前に過ぎて行く日常と。
侘しさと、鏡と戦っていた。
他の人間なんてどうでも良かった。
私の物語の一ページでしかなくて、私を抱いたあいつの事さえ飽き飽きしていて。

流行病で全ての私の当たり前が失われた。
おかしくなりそうだった。否、なった。
まあでも、便利な世の中で、発達したテクノロジーに囲まれ私は画面の中に自分を作った。
ほんの下心だった。”会わないからと”成りたい自分を作り上げて人気を欲した。
本当は承認欲求を超え、純に愛されてみたかっただけだったのかもしれない。
昔手に入れることの出来なかった栄光を違う形で。
選択肢が少なかった。コツを掴んだ私は、色を武器に世界を歩こうと思った。

そんな中、純に接してくれる、応援してくれる異性も友人もできたのは幸いだった。視野の広い世界が構築されてきたのだと思ったのも束の間である。

結局人間。下心で接し、出来心で約束を安易に破るのだ。
これは、つい私が興味本意に動いた下心と出来心のブーメランなのだろうか。
ならば、私はこの先少し重い鎧を降ろして切長い眼差しを閉じることが賢明なのかもしれない。

いつ細長いヒールをへし折っても、愛してくれるものが現れるか。
心許ない期待ではなく、色めくネオンを背に希望を持って強く諦めを覚悟するが良い。

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