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「11月の珈琲 Honduras:午前三時の心地」

眠れない夜に手に入れた心地。

Honduras:午前三時の心地
午前三時
冷たい空気が肩を沈め
眠れぬ夜にひとり溺れていく
藁をもつかむ思いで触れた
足元のぬくもりが
小さく深くのどを鳴らす
眠りを誘うまろやかなコク

11月の珈琲「Honduras:午前三時の心地」は、10月下旬の眠れぬ日々に感じた安心感を表現したいと思った。

この家は、雨戸を閉めきったとしても欄間窓から光が入ってくる。

すべてを照らす太陽の光にくらべて、街灯の光の照らす範囲はせまいせいか、光の強さがほんのりとしてる。

欄間窓から入ってくる光の雰囲気に、今はまだ夜なのだと思った。

何時なのだろう。

時間を確かめるため、スマホに手を伸ばそうと布団から指先を出したところで、空気の冷たさに気がつき、指を布団に引っ込めた。

そして、しばらくの間、目を閉じながら、耳を澄ました。

遠くに走る列車の音は聞こえない。

始発列車が走りはじめるのは、まだまだ先のようだ。

冷たい空気が布団から出ていた肩をぐぅっと布団に押し付け、沈めていくのを感じながら、昨日もその前の日も、この時間帯に目を覚ましたなと思った。

大抵、夜は布団に入れば、すぐに寝てしまう性分だ。

それなのに、ここ数日はなかなか寝付けず、しかも、この時間帯に目を覚ます。

なぜなのだろうと考えて、月の満ち欠けを思った。

数日後には、月がその姿を消す新月がやってくる。

そのせいなのかと思ってはみたものの、普段とはあきらかに違う夜を過ごしていることに焦りが湧きあがる。

目を瞑ってみても、まぶたの裏には明日の予定が見えるのだ。

やっぱり眠れないと目をひらく。

そんなことを繰り返していたら、新聞配達のバイクの音が聞こえた。

時間は刻々と過ぎている。

冷たい空気がわたしをからかうかのように鼻先をちょんとつつき、思わず、小さくくしゃみをした。

そのうごきにつられて、足元で眠っていた愛猫が身じろぐ。

冷たい夜に、ほわりと愛猫が入り込んできたことを感じた。

藁をもつかむ思いで、手を伸ばし、その頭を撫でる。

のどが小さく深く鳴り、そのぬくもりが手のひらに感じていたら、やっと、眠りが訪れた。

11月の珈琲「Honduras:午前三時の心地」は、とても落ち着く安心感のあるコクを持っている。

あの眠れない日々を溶かしてくれた愛猫のぬくもりと同じように、心を安らかにしてくれるのだ。

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