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おちこぼれ修士の星形成シミュレーション概説 part3 ~ジーンズ〇〇と不安定性

 part2(https://note.com/__tatsuya__/n/n3c82bd52a5bc )の続き。ガスの落ち方の話。

ジーンズ半径、ジーンズ質量

 これらは球対称なガスを想定したときに、不安定になって縮む閾値のことである。後述するジーンズ不安定性というやつである。

 ジーンズ半径より大きいガス雲はジーンズ半径でブチ切れる。ジーンズ半径内のガスの質量の総和をジーンズ質量という。ジーンズ質量より大きいガス雲はその領域でブチ切れて縮む。

 計算式はググってくれ。

 なんでこんなものを知りたいか。それは、「星の質量を特定するため」である。目的意識が大事。

 以下の図はあるガス雲において横軸に最大密度粒子からの半径、縦軸にenclosed mass/Jeans mass (enclosedというのは中心から半径rの球内の総和ということ)をとったものである。1を超えたところを境に収縮することが予想されるので、最終的な星質量はこの領域の質量の総和に近いものとなる。

全然関係ないけどごっちゃになる用語「ビリアル質量」

 ビリアル定理はご存じだろうか。安定している系においては

(運動エネルギー)×2=-(位置エネルギー)

というやつだ。

天体の運動エネルギーは分散速度などから求まることがある。よって位置エネルギーが求まる。星の大きさは直接撮像とかで求めることができたりするので、質量を求めることができる。こうしてもとまった質量がビリアル質量である。

不安定性

 ジーンズ不安定性という言葉が出てきた。不安定性というのは平衡状態じゃないよと考えてもらえればいい。よく出てくる不安定性について書く。

ジーンズ不安定性

 一様な状態中である波長以上の摂動が起こると、その摂動部分に含まれる質量による重力が圧力勾配に打ち勝ち摂動が成長し不安定となる(天文学辞典より)。

 そんでもってガス雲なら縮むよということ。

ケルビンヘルムホルツ不安定性

密度が異なる2層の流体間での不安定性。図を見てもらった方が早い。

wikipediaより

Pair instability

 よくわからないけど、核反応関係のことが原因となって生じるinstability。太陽の130倍以上250倍以内の質量を持つ星の終わりに起こるpair instability supernovaの原因となる。

Free-fall time

free-fall time というのは一様密度球の各粒子が自由落下し、中心点において密度無限大になるまでの時間のこと。このとき、ガスの圧力は考えない。

 星形成のガス雲は序盤(核融合が起こるまで)はほぼ自由落下と考えてよく、以下の式が適用できる。

 計算してみれば分かるが意外と短い。


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