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私たちは前に進むことしかできない

冬の淡い光に包まれて、最寄りの駅へと向かう。私と同じように、それぞれの目的地に向かっていく人々、凄まじい勢いで走り去っていく電車の轟音、雲ひとつない透き通った寒空、今日も新しい朝が始まろうとしている。私の中で止まっていた時間が、ゆるやかに動き出す。

数日前、大切な人を失った。悲しくて、寂しくて、沈んでいたのに、外はこんなにも明るくて、あたたかくて、やさしい。
まばゆい陽の光に照らされていたら、思い悩んでいたことなんて忘れてしまいそうなくらい、すっきりと心の靄が晴れていくようだった。

暗い気分になったときはいつも思う。
心臓が不安に震えて眠れないときでも、冷たい夜が明けて朝の光に満たされると、悲しかったことなんて悪い夢だったかのように思えてしまう。
自然の力って、本当に偉大だ。

普段と何一つ変わらない足取りで歩いていると、ヒールのコツコツという音が私の耳にはっきりと響いた。私は確かに前へ進んでいる。食が喉を通らなくとも、何も手につかなくとも、少しずつ暗がりの中から抜け出そうとしている。足を踏み出すたびに、悲しさが一つ、また一つと過去の出来事に変わっていく。カチカチと時を刻む秒針を止めたくても、明けてしまう夜に抗いたくても、私は前に進むことしかできない。その事実が、ありありと自信に繋がっていくのを感じた。

つらくて、痛くて、寂しくて、悲しくても、私は寝ぼけ眼でお湯を沸かす、紅茶を入れる、ヨーグルトを口の中に流し込む、窓を開ける、呼吸をする。思考を置き去りにしながら、取り返しのつかない後悔を引き摺りながら、ほんの少しだけ垣間見える希望に縋ってみる。今日も私は、冷ややかな風を切って未来へと向かっていく。

生きていくって、きっとそういうことだ。

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