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そっくりさん

 居酒屋バイトで店員をしていた時、ある三人組の若い男女が飲みに来た。男性二人と女性一人というトリオは中々見ないから珍しいと思った。
男性や女性と言える程大人びてはいない。かと言って中学生や高校生のような童顔ではないので、おそらく大学生だろう。だが最近の高校生はたまに大人びている人がいる。それでもどこか幼さが滲み出てしまう。

 さて、この人達は何のドリンクを頼むだろうか。僕はこうやってお客さんが来店して、席を案内するまでに頼むドリンクを予想するのが楽しかった。案内する席は窓側に接している四人席に案内した。そこが最初に目がいったからだ。

そして一人の男が左の席奥に座り、すかさずその横に女が座った。二人の距離が異常に近いのが気になった。そして、右の席奥にもう一人の男が座った。左に座っている男女はおそらくカップルだろう。じゃないとあんな近い距離にならないはず。あれで異性の友達だったらあんなボディタッチもしないはずだ。

 僕は前いた彼女と別れてから二年もたっても、新しい彼女はできない。僕が彼女を作ろうと強く思っていないからか、それとも彼女は欲しくても今が充実しているからか、中々行動に移すことが出来ない。ただの言い訳に過ぎないかもしれないが、これが僕の精一杯なのだ。

 そして彼等は、ラストオーダーになって急に何か閃いたかのように、ぱっと食べたいと思った食べ物や飲み物を次々と頼んできた。
彼等はラストオーダーというものを理解しているのだろうか、それとも理解していて頼んだのだろうかと注文を聞きながら不思議に思った。
しかも三人揃ってコーラを頼むという仲の良さが見れたのは少し心がほっこりした。
「〜卓ラストオーダーおっけーで〜す!!」と僕は言って、もう一度三人組の席の方を見た。
左に座っているカップルは腕を組み合ってもう一人の男と楽しく話していた。
僕はその青年らの楽しく食べて飲んでいる姿を
一生脳裏に焼き付けて忘れないのだろうなと思った。
「蛸わさ上がった〜!!」店長のイケボが店内に広がるのが分かる。
「あいよ〜!!」僕も負けじと声を張った。



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