修士課程です。書いたり描いたり。

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【1分小説】父とジャム瓶

うちの父って、瓶の蓋を緩く閉めるんですよ。 毎朝ヨーグルトに入れるブルーベリージャム、結構大きい瓶だから、きちんと閉まっていないと持つ時に危ないんです。蓋がついてる系は全部そう。だからペットボトルとか、お弁当のスープジャーとか。 僕、高校の時実家で弁当係だったんですけど、洗い物出された時も緩く閉まってて保冷バックに若干染み出してたんですよ、味噌汁が。一回ほんとに言いましたけどねちゃんと閉めろって。 でもそんな父なんですが、握力は97kgあるんです。ガチです。 ラガーマンでし

    • 【10秒小説】Aspirin

      私は本が好きな方だけれど、 新品を血眼になって探すみたいなことはあまり、したことがない。欲しいと思うものは古本屋で大抵手に入るからだ。 今日も私が何度も読み返している小説が5.6冊積み上がっていた。

      • 【1分小説】encore

        ずっと耐えていました。劇場の香りがして、席について、舞台を眺めてしまったらもう、だめでした。いつも夢で見る景色。死ぬほど逃げてきたつもりだったのに。私はその時からすこしも、離れることができていませんでした。 未練。 怪我をきっかけにバレエから離れ劇場を訪れるのは久しく、というか、劇場に足を運ぶのを無意識のうちに避けていたんだと思います。友人に誘ってもらえていなかったらたぶん、行かなかった。客席の傾斜を、香りを、リノリウムと踊る足音を、今にも観客を喰らおうとする「舞台」とい

        • 【1分小説】Marginalia

          "せかい"という本を読む その内容は私にとってとても難しくて 1年1単語知ることができたら 上出来だと思う 私の"せかい"の全ては 私の感覚器官が受け取ったものだから それ以外を知ることができない 私は知っていることしか知らない それでも私はその知ったことさえ 手のひらから零してしまうから 書き留めようと思った 手のひらから滴るそれで “せかい”の”よはく”に 濃いシミをつくろうと思った

        【1分小説】父とジャム瓶