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寝逃げ、夢中で生きる

私はよく眠る。
今日も、昨日のことが数日前の出来事だったりする。カレンダーを見ても、記憶がこぼれ落ちていて、上手く思い出せない。

幼い頃は、眠るのは好きだけどただ何となく勿体無くて、よく二段ベッドでお兄ちゃんとこそこそ夜更かしをしていた。そんな子供だった。

私が自覚するほどに過眠になったのは確か、大学生になって一人暮らしをするようになってからだと思う。
朝、早く起きて、節約のためのお弁当と朝ごはんを作り、髪や服装、メイクに気を使ってちゃんと身支度をする。1限に赴く。

できなかった。

親からの援助はあったけれど、様々な事情であまり頼りたくなかったので、入学してすぐにアルバイトを始めた。授業を受けて、バイトに行き、帰ってから晩ご飯を作る。洗い物をする、お風呂に入って、あ、洗濯物もしないと。

ちゃんとしたかった。
ちゃんと上手くやりたかった。

5月くらいには、もう本当に起きれなくなっていた。
どうして"ふつう"の事ができないんだろう。どうして"当たり前"の事が、"当たり前"にできないんだろう。私はみんなと何が違って、何が欠けているんだろう。頑張りたいのに、追いつきたいのに。

苦しくて、しんどかった。

大学受験で浪人をして、既に人より遅れている感覚があったからか、その焦燥感から求める理想との乖離に耐えられなかった。
どんどん自分の事が嫌いになった。


周りには理解されなかった。
最初は授業に来ない私を心配して、電話やメッセージを送ってくれていた友達も、月日が経つにつれ呆れて何も言わなくなっていた。私が名前を知らない子にも「学校に来ない子」として認知され、白い目で見られていた。
(それでも仲良くしてくれていた数少ない友達を本当に大事にしたいと思う。)

友達は言っていた。
「遅刻して良いし授業の途中でも良いからおいで」
「2限からおいで」
「お昼は一緒に食べよう」
本当にみんな優しい友達だったと思う。

でもできなかった。許せなかった。
今振り返ればそうするべきだったと理解できるけれど、当時の私は受け入れられなかった。きちんと全て想定している用意を済ませ、完璧に家を出られる時間に遅れた時点で、「ダメ人間」の烙印を押されているのに、後からいくら巻き返そうとも無意味ではないか。

1限から4限まで授業が詰まっていても、最初の起床に失敗したらその後学校に遅れて行く事もなく1日中寝ていた。次の日も、失敗したらずっと寝ていた。明日こそは、明日こそはと思うのに、失敗体験ばかり積み重ねていった。
私の記憶では1週間の授業全てをきちんと受らけれた事は3年になるまで無かったと思う。
(恥ずべき事であることも、親に失礼だという事も、重々承知している。申し訳ない。)



どうしてそんなに寝られるのか。
家族や友達に尋ねられる度、上手く答えることができなかった。

分からないからじゃない。
人に言うべき事ではないと思ったからだ。

でもこのnoteでは普段口にしない事を記せる、興味がある人しか読まない、そう想定した上で書く。



夢の方が幸せだった。
現実で生きる事より、夢中で生きる事の方が、ずっとずっと安心できて幸せだった。

目が覚める事が怖かった。
1日が始まり、時間が進んでいる現実、何も変わらない自分、現実を生きる事が、怖かった。


私は眠りにつく度に夢を見ていた。
毎日夢を見ていた。

夢を毎日見るようになったのは、高校生の時からだった。
ただその時は、この時ほど楽しい夢ではなく、家庭環境や受験によるストレスで毎晩泣いて、毎晩金縛りに遭っていた。ほぼ寝れていなかったと思う。また寝腐ることも到底許されなかったため、寝逃げする余裕もなかった。

この大学生の時に見ていた夢は、ほとんどが中学生時代の思い出だった。
高校も楽しく過ごしたけれど、未だに夢では会えない。いつも中学3年生の時の教室と、クラスメイトたち。久しく会っても久しく思わないほどに出演していて、気恥ずかしいので口が裂けても言えない。

オレンジ色のフィルターが掛かった教室と、黄緑色のカーテン。ガヤガヤうるさくて、楽しくて、温かい。安心できる空間で、ずっと続いてほしかった。

要因は様々だと思う。
単に楽しくて大切な思い出だったという事もあるし、何よりその時期の後悔が多々あるため、懐古を重ねて記憶が海馬にこびり付いているのだろう。

そんなこんなで、夢の途中で目が覚めても頭のイメージを保ったままもう一度眠れば夢を再開できるスキルを会得するほど、私はずっと寝ていた。


「寝逃げ」という単語を知ったのは大学3年生の時だった。
何か精神的にやばいんだろうと思って、ずっと調べていた。鬱、適応障害、自律神経失調症、HSP、ADHD、愛着障害、アダルトチルドレン…自分に当てはまる言葉をひたすら探した。ラベリングされる事で安心したかったんだと思う。

振り返れば鬱だっただろうし、何にしても上記のどれかには当てはまっていたと思う。けれど本当に鬱の人は何度精神科の予約を取ろうが、何週間、何ヶ月先の予約で病院に行く事なんかできやしない。
私は一度も病院には行けなかった。

「寝逃げ」は現実逃避らしい。
つらい現実から逃げるように寝て、寝る事でメンタルケアを行う。
鬱は鬱でも様々だが、一般的に鬱は不眠や食欲減退、体重減少などが挙げられる。私の場合、不眠もあるが過眠がひどく、一時的な過食と過眠による摂食機会の減少による体重減少、とにかく波があった。
躁鬱を疑っていた。

「寝逃げ」は軽度の鬱状態や、鬱からの回復状態、また新型鬱などにも症状としてはあるらしい。

何度かひどい時期を経験したが、去年の11月頃、1食毎に丸2日を置くほど過眠がひどくなったので、病院へ行った。昼夜逆転で身体的にも苦痛だったので、睡眠薬だけ処方していただいた。

ラベリングはされなかった。


今は、月に1度ホルモンバランスが崩れる度、また活動的で刺激的な日を過ごす度、休息を取り、また体内時計が狂いそうになると睡眠薬で整える。

大丈夫、私まだやれる。

年が明けてから随分と元気になった。
大丈夫、大丈夫。

カレンダーを振り返って記憶がこぼれ落ちていても、気がついたら4日経っていても、時空が歪んでて面白いな〜くらいに思っている。
私の時間軸よりちょっと地球の自転が速いだけだし。

なんなら最近は老けないんじゃね?
とさえ思っている。

宇宙飛行士ってコト〜〜!?痺れるね。
美魔女ってコト〜〜!?照れるね。

これくらい楽に生きたって良い、
少しずつ自分を受容していきたい。

今日眠れないあなたも、
眠りすぎてしまうあなたも。
あんまり自分を責めないでね。

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