昭和歌謡曲のススメ ~松田聖子編~
前回『時代に消費される音楽の終結』記事では冒頭で、作詞家松本隆が「歌謡曲」と「ニューミュージック」を結びつけ、名曲が誕生していったことについて、少しだけふれてみた。
今回は、松本隆+松田聖子のプロジェクトが生み出した名曲にスポットをあてて、お伝えしてみたい。(選曲に関しては、個人的な好みなのでご了承ください!)
もともとは、好きな曲はなぜか松本隆作詞が多い、程度の認識だった。
何十年たっても名曲として愛され続けていることで、改めてその功績について考えさせられる。
松本隆は『はっぴいえんど』という伝説のバンドのドラマーだった。アグネス・チャンなどのアイドル曲の作詞をするようになってからは、仲間から「商業主義に魂を売った」と悪口を言われていたと、NHK「SONGS」スペシャルで語っていた。本人はジャンルを全く気にせず、嫌がる仲間たちを、徐々に巻き込んでいったらしい。
何十年もたって、名曲の数々に気づくことになったきっかけは、カラオケだった。思春期の娘と一緒に出かけられる、唯一共通の趣味だった。
娘と同じ曲数を歌うため、レパートリーを広げることを考えたけれど、今の曲はとても難しくて歌えない!
そこで、ずっと避けてきた「松田聖子」曲に挑戦することにした。
子ども時代を思い出すと、美容院に行けばみんな聖子ちゃんカット。「ぶりっこ」という言葉ができて、女子の間ではいじめの原因になることもあった。聖子派か明菜派か、と聞かれれば、衣装センスで明菜派と答えていた。
どちらかといえば、アンチ「聖子」側だった。
ファンでもなかったのに、さすが昭和!! 何十年もたっていても、歌えてしまう。
歌番組でいつも流れていたから、記憶に刻み込まれていた。2番を歌うと、新鮮な発見もあった。
アイドル歌手だから歌詞は全て男性目線、昔の男の子が理想とした女の子像で、時代の大きな変わりようにちょっと笑える…。
そして、昨年はひとりカラオケに初挑戦してみた。ひとりなら誰の迷惑にもならず、練習ができる。聖子ちゃん曲を次々と歌っていくことを、最初の発声練習にした。
カラオケで歌うと、作詞・作曲者名が目に入る。カラオケでなければ、作詞・作曲が誰か、ということには気づかなかったかもしれない。
【松本隆×呉田軽穂の名曲】
(くれだ かるほ・松任谷由実のペンネーム)
松本隆から作曲の依頼があった時の条件は、ペンネームで出すことだったらしい。ご本人がラジオでこのことについてふれ、松任谷由実曲として売れるのではなく、名曲として残ってほしかった、と語っていた。まさにそうなっているのがすごい!
「赤いスイートピー」に始まり、「渚のバルコニー」、「瞳はダイヤモンド」、「小麦色のマーメイド」、「秘密の花園」、「Rock'n Rouge」、「制服」など…。
こんなにあったのか、と驚かされる。
その中でも、何度か歌っているうちに、神曲⁉と感じてしまった「渚のバルコニー」。
歌ってみると浄化の力、とでもいうのか、明るくしてくれる力があるような気がする。高校生の娘も、つられて歌いたくなる曲のようだ。
そして、「瞳はダイヤモンド」もはずせない…。
このコンビは松田聖子以外に、薬師丸ひろ子にも「WOMAN”Wの悲劇より”」を提供している。
こちらも名曲なので、ぜひご紹介したい。ご本人が、「自分が作曲したもので最も好きな曲」と語っていたらしい。
【松本隆×大滝詠一の名曲】
バンド『はっぴーえんど』から続いていたコンビ。大滝詠一ご本人の歌はカラオケ向きではない気がするけれど、歌える曲があって、ただうれしい!
(薬師丸ひろ子にも、「探偵物語」・「少しだけやさしく」を提供している。)大滝詠一に関しては思い入れがありすぎるので、別の機会をつくりたい。
『大滝サウンド』がたまらない、「風立ちぬ」。
【番外編】
松本隆作品ではないけれど、最後にもう一曲おススメ曲として、尾崎亜美作詞・作曲の「天国のウィンク」を追加しておきたい。
松田聖子の曲には、日本音楽界の歴史がこめられている。自分で歌うために曲を作っていた『ニューミュージック』のシンガーソングライター達が、アイドルに楽曲を提供することによって、ひとつに統合されていった変遷がわかる。
ほかにもご紹介しきれない、数々の名曲があるので、ぜひ「お気に入り」を見つけていただきたい。
昭和の曲は10代、20代には、新鮮に聴こえるらしい。カラオケにみんなで行ける時期が来るまで、自宅で練習して、レパートリーを増やしておくのも楽しいかもしれない。
歌謡曲は、一瞬で過去の思い出にタイムスリップできる魔法。
昭和を知らない世代の人たちには、新しい世界かもしれない。
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