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タイムリミット付きで書いた文筆作品いくつか/不破静六

また今回も、短い時間を設定して、そのタイムリミットの間に文章を作り終えるという遊びを友人たちとやった。その記録を残す。


文章題

【公式】
A × X = C
【文章】
勤王の誠を朝日に掲げて、日夜、日本刀の研ぎ澄ましに神経を尖らせている。
ある夏の明け方、玄界灘の浜辺において、鉢巻を締めて、朝日を見つめ正座するA。
そのXの行為とは?
【ヒント】
Cは単なる腹痛の2億倍に値する。

答えは最後。

掌編戯曲

【舞台】
夜更けの飲み会終盤。太田の家。
会社の仲間が帰った後、2人残って話している。
【登場人物】
太田 42歳
熊井 39歳

太田「サバ缶食う?」
太田は冷蔵庫の中を見ながら言う。
熊井「はい。食べます」
熊井はビールの空き缶に視線を動かす。
太田「いやしかし、社長もほんと無いよな。なんであそこであれ言うのかって」
サバ缶にマヨネーズを垂らす太田。
熊井「ほんとですね。」
熊井は太田のグラスに芋焼酎を注ぐ。
太田「で、今やってるあの案件。どんな感じなの」
熊井「え、は、はい…」
太田はサバの切り身をほお張る。
太田「あれさあ、けっこう、バチバチやんないと、おわんないよ。めっちゃめんどいから」
焼酎をすする太田。
熊井「はあ、そうですね。いやあ、やってんですけど、なかなか」
空き缶を傾ける熊井。
太田「食わないの、これ」
熊井「いやいただきます、お箸…」

【解説】
「二人の間に微妙な緊張感が流れる戯曲」というのがテーマ。
戯曲なので心情表現を入れず、さらにできるだけ簡素な表現で、緊張感をどうやって伝えるかに挑戦した。
が、あんまり一度読んだだけでは分かりにくく、上手くいっていないかもしれない。もう少し会話を増やしたほうが良かったかもしれない。

三島由紀夫は『文章読本』の中で、小説と戯曲の違いについて述べ、後者においては、会話が話の細かな設定を説明する役割を持っていると強調する。そして劇を進めるために、その会話は現在と過去の二つの意味を同時に持つと指摘している。

 さらに戯曲の会話というものは過去の状況を説明すると同時に、現在の行為が進行していかなければなりません。さり気ない会話には、現在と過去の二重の意味が含まれております。ただ過去の説明だけに終わっている台詞は、劇を中断させますから、過去を説明しながら劇を進行させ、ストーリーを進行させなければなりません。それをまったく説明的に聞えずに処理するのが、劇作家の手腕であります。
 ですから一例が「おい、平社員たる君が社長の俺に向かってなにを言うのだ」という会話が、よく未熟な戯曲に見出されますが、そういう風にして説明された会話は、いい戯曲の文章とは言えません。なぜならば、われわれは普通、相手が社長であり、こっちが平社員であるということは、実生活の中で知っているので、なにも改めて社長である私に対してとか、平社員である君に対してとかことごとしく言うのは、それこそいわゆるお芝居じみた台詞になって、実生活から離れてしまいます。

三島由紀夫『文章読本』p.76

これを書きつつ思ったが、舞台設定の「飲み会終盤」や「みんなが帰って二人だけ残っている」といった部分も、会話で表現すべきであった。劇で設定できるのは、「ある家のリビングで、ちゃぶ台に食べ終わった食器がいくつも並び、缶やびんがあちこちに置かれている」といった視覚的な部分のみだ。

架空校歌

最後は校歌の作詞である。次の実在する小学校について、架空の校歌をでっち上げた。

岡山市立鹿田しかた小学校々歌
作詞 不破静六

清水しみず白桃はくとう 新緑しんりょく
そーら釘刺す いにしえ
諦め肝心 鹿田しかたっ子 前進め

そびえる半田はんだの 山々に
吉備きびの穴さす 大海の
諦め肝心 鹿田っ子 前進め

青天せいてんうるわし 清流せいりゅう
白鳥はくちょう飛びゆく 大空の
諦め肝心 鹿田っ子 前進め

「鹿田」→「仕方ない」の連想から、「諦め肝心」という言葉が出てきた。
最初は「諦め肝心 仕方ない 鹿田っ子」というふうに書いていたが、「しかた」は繰り返さなくても良いと考えて削った。
それに繋がるフレーズとして、「前進め」をふと思いつき、当てはめてみるとうまく行った。
ここまでで「諦め肝心 鹿田っ子 前進め」のラインが完成した。

そのあとは、Wikipediaで鹿田のあたりの著名な山や川などを調べて入れていった。しかし鹿田町の項目はあまり書いてなかったので、岡山市北区のページで探した。
すると、清水白桃や半田山、吉備穴海、白鳥湖などが出てきた。
それらの名前を、七五調で入れていって、ところどころ韻を踏んだり対句?っぽくしながら作っていった。

【補足】
本記事のカバー画像はStable Diffusionで出力したもの。
執筆することと、タイムリミットの焦燥感をうまく表せたものが生まれた。映画のワンシーンみたいで気に入っている。
設定は以下の通り。

parameters
japanese movie poster in the 1990s,a huge humanized pencil breaks the building, men and women who run away in the foreground, facial expression of fear,(giant humanized pencil:1.1)
Negative prompt: aidxlv05_neg
Steps: 50, Sampler: Euler a, CFG scale: 7, Seed: 2423056746, Size: 640x335, Model hash: 1170aa1935, Model: wildcardxXL_v4Rundiffusion, Denoising strength: 0.7, Hires upscale: 2, Hires upscaler: R-ESRGAN 4x+, TI hashes: "aidxlv05_neg: 84a6266ecaa6, aidxlv05_neg: 84a6266ecaa6", Version: f0.0.17v1.8.0rc-latest-276-g29be1da7

promptはこちらを参考にさせていただいた。

最初の文章題の答え
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「腹切り」
これは分かりやすかったと思う。

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