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ピンボール・アトラス

 帰りの電車の中で、ふとAppleのMapのことが頭に浮かんだ。航空写真で3D表示できるんだっけ。
 地図が見たいときに、何度も起動してみたことはもちろんあったけれど、いつも読む本を脇に置いてアプリを立ち上げてみた。

 私の位置を示すブルーの丸い印が、地図上でぬるぬると動いている。
 電車に乗っているから、ぬる〜って移動する。

 ときどき位置を迷うのか、国道の端と端をピンボールみたいにジグザグ動くこともある(私が乗っていたのは路面電車)。
 仕事の帰りでくたびれた脳みそで、それを眺めているのはわりと愉快だった。

 U駅のそばに差し掛かったとき、あれっとおもう。
 地図で見ると歩道橋が架かっていて、だけど確かその歩道橋はもうないんじゃなかったっけ。

 窓から外を見たら、やっぱり歩道橋はなくて、もう一度アプリ上の地図を見たら歩道橋がある。
 いつなくなったっけなあとぼんやり思いながら(思いだせない)、電車は進む。

 またしばらく行くと、地図に大きな空き地があった。その空き地の場所には、今はちょっとしたショッピングモールがある。
 窓の外とアプリの間で目線を行ったり来たりさせながら、ぼーっとする。

 今は存在しないものと、前はなかったものと、地図の上を動くブルーの私と、現実の世界の風景と、そんなものの間でふしぎな感覚を覚えた。

 がたんごとんしながら家路についた。

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今日の「ほっ」:私ごとですが(ぜんぶそうだけど)、3ヶ月おいて連続でくる決算を、ことしも無事に終えました。9月はいいですね。

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