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大人だから

ベローチェに行った。1人で。

私の周りの小さな世間の話で言うと、ここ最近はみんな忙しそうだし木曜日の昼間に自転車で汗を流しているのなんて私くらいしかいないし。今日も3時間くらい自転車に乗ってた。

朝イチで歯医者に行った。
大きくなったねと言われた。
今何してるのって聞かれたけど、本当に何もしてないし、強いていえばパンを捏ねている、そういう日々を最近は送っている。

治療中ずっと「無茶してない?」って思ってたけど我慢した。大人だから。
小さな頃はあの銀色のドリルみたいな、シド・フィリップスが作った趣味の悪いおもちゃみたいな器具が怖くて、開口器を使って治療してたみたい。開口器って何?今「歯医者 口 開ける器具」で調べて出てきた言葉を使ってみた。大人だから。

「ちっちゃい頃は虫歯だらけだったけど、もう無くなったね。大きくなったからね。」
私は大人だから虫歯がない。ほとんど。2箇所だけ。大人だから歯を毎日ちゃんと自分で磨くし、歯磨きした後我慢できなくてポカリを飲んだりしないし、歯に詰まらせる企業努力をしているようなお菓子を好んで選んだりしない。

そうだ、私大人になったんだ。

そのあとびっくりドンキーに行ったけど、イチゴミルクを我慢した。大人だから。自転車に乗って知らない道を走った。知らない駅で60円を叩いて自転車を停め、地下鉄に乗って仙台まで行った。

Suicaの残高が不足してたり、やってると思ってた映画がもう終わってたり、本屋さんで私が出した千円札が精算機に通らなかったり。
滞り60、凡ミスビンゴならリーチ1個手前くらい。でも最近は「お手数おかけしました」って言えるようになった。まだ最初の「お」を出すのに時間がかかるけど。「お」を出したら後は自ずと。ムリムリっと。大人になったなぁ。

公園でさっき買った本を読んじまおうと勾当台まで闊歩してたら外が思ったより暑かった。
Tシャツにハーフパンツなのに暑かった。
夏休みみたいな格好してるな、今日。脚、生傷だらけなのに。
逃げるようにベローチェに入った。

1人でベローチェに行くの初めて。
いつもお父さんと一緒だった。小さい頃の私、コーヒーゼリーを頼むと喜ぶから。いつも少し怖いお父さんが嬉しそうだったから私も嬉しかった。お父さんがよく着てた知らないパンクバンドのTシャツの髑髏も笑ってた。ケケケッて。髑髏の笑い方はなんとなくケケケッな気がする。

私の手を引いて。家族で光のページェントを見に行った時、歩き疲れたと泣いたから。家族で旅行した時、「コーヒーゼリーのお店東京にもあるんだ!」と驚いたから。もう私がベローチェの前で泣いても驚いても、お父さんはコーヒーゼリーを買ってはくれないだろうな。だってもう私は大人で、1人で自由にベローチェに入ってコーヒーゼリーを頼めるようになったから。迷わず抹茶ラテとミルクレープを頼んだ。
コーヒーゼリーそんな好きじゃないし。

大人はずっと悲しいと思ってた。
いまも少し思っている。
私にとって仙台はもう特別な街ではなくなってしまったし、歯医者の日までを恨めしそうにカウントダウンすることもなくなったし、ハンバーグが来るまでにイチゴミルクでお腹をタポタポにしてしまうような間抜けさもなくなってしまった。
乗る駅も降りる駅もそこから帰る手段も全部自分で決められるし、決めていいし、決めなきゃいけない。

まだ成人じゃないけどもう大人なんだって。
これからの人たちは18歳で成人になるんでしょ、そんなの悲しすぎるって。本当の意味で大人になったらどうなっちゃうんだろう、まだ大きな椋木の下で涙を流したら巨人と小さな犬が助けに来てくれること信じてるけどいいの?
じゃあその椋木がどこに生えてるか検索しないと。そこまで自転車で3時間かけて行こう。
フフン、もう大人だからね
ムホホ、もう大人になっちゃっちゃ
みんなはどうやって生きてるんだろう。

大人になって、子供が産まれたら、うるさがられるギリギリまでコーヒーゼリー買ってあげようかな。そんで実はそんなにコーヒーゼリー好きじゃないんだって打ち明けられた時めちゃくちゃ泣こう。そーしよ。今日の日記。6月10日、仙台、めっちゃあちち。

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