きゅーび

文章を書いて生きてたい人。 執筆のご依頼や、動画サイトでの朗読、その他ご質問に関しては…

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記事一覧

キ域_②

『市内住宅で2遺体発見、無理心中か』  20日午後18時ごろ、ガスメーターの点検に来た職員より「何かが腐ったような臭いがする」との通報があった。  署員が駆け付け住宅…

きゅーび
5日前
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キ域_01

※「キ域」は一話完結ではなく、シリーズ作品となります。  分かりやすいように「キ域」シリーズはサムネイル画像を赤に変更しております。  第一印象は「思った以上に…

きゅーび
12日前
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クローゼット

 酒の席だからこそ話せるヤバい話を聞きたい?  悪趣味な提案だな。誰が言い出したんだ?  それで、なんで僕が最初なんだ?  僕が電話している間にじゃんけんで決めた…

きゅーび
3週間前
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カンカラアンギャ

 「パパあのね、お外で聞こえる音が変なの」  6歳になる息子が彼の大事な相棒であるウサギのぬいぐるみを抱えて居間にやって来たのは、夜の9時過ぎのことだった。息子は…

きゅーび
1か月前
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黒のご神体

 これはまだ私が小さかった頃の話。昭和と呼ばれていた時代の話だ。  携帯電話なんてものはなく、電話機といえば今では博物館で見るような黒電話だった。それだって普及…

きゅーび
2か月前
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白く漂うもの

 「おお、こりゃまた絶景だねぇ」  ユミコの新居は広大な墓地に面したマンションだった。  ベランダから一望できる墓石の軍団はまるでミニチュアの摩天楼で、そこにも…

きゅーび
2か月前
103

インシデントナンバー(申請中):餓死の悪夢

 久地楽さんが好きそうな話を聞いたんですよ。  いつもの喫茶店というほど通いなれている訳でもないが、それでも二月に一度は訪れる程度には馴染みのある場所。  季節…

きゅーび
3か月前
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さちよ荘

 「久しぶり、元気してた?」  改札口を出たところで、女性からふいに声をかけられた。  最初に浮かんだのは単純な疑問符。  誰だっけ。  思い出せない。  こういう…

きゅーび
3か月前
96

青い葬列

 僕がはじめて青い葬列を見たのは、幼稚園に入ったばかりのころだった。  当時の僕はとても幼く、人が死ぬということもあまり理解できていなかった。幸いにも僕に近しい…

きゅーび
4か月前
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お山の参道

 新幹線に乗るのはどれくらいぶりのことだろうか。  下町で生まれ育ち故郷らしい故郷もない。計画をたてて旅行にいく趣味もない自分には、ほとんど縁のないものだった。 …

きゅーび
5か月前
147

毒吐き板 腹黒男⑨

 こんにちは。このたびはご愁傷様でした。心よりお悔やみを申し上げます。  そんな忙しい時期に呼び出してしまって悪かったね。  だったら早く話を終わらせろ? そうだ…

きゅーび
5か月前
134

影んぼ

 影んぼを初めて見たのは塾帰りの道でのことだった。  時刻は20時を回っており、駅前の商店街すら人影がまばらになっている。これが金曜日ともなれば、飲み屋に向かう人…

きゅーび
6か月前
104

だれかが覗いてるの

 「おトイレが怖い、だれかが覗いてるの」  甥っ子がそう言い出したのは、盆に家族がみんな集まった時のことだった。  家族皆と言ったものの、最近では大家族も少なく…

きゅーび
6か月前
96

山に潜る

 紅葉を見に低山へハイキングに行きませんか?  八重子から届いた誘いに二つ返事で了承を返した。  ハイキングは好きだ。軽い山登りも好きだったがいざ一人で計画して…

きゅーび
7か月前
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見えたら流して下さい

【attention】  このお話は「ネタにしてもよい体験談」として頂いた話を小説化したものです。ネタ提供者様より添付して頂いた写真も掲載しております。  この小説を読ん…

きゅーび
7か月前
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S駅行きバス停

 バス停で奇妙なことに遭遇する。  何がきっかけでその話題に及んだのかは覚えていない。いつの間にかランチタイムのお喋りはバス停での不思議な出来事に関してになって…

きゅーび
8か月前
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キ域_②

キ域_②

『市内住宅で2遺体発見、無理心中か』
 20日午後18時ごろ、ガスメーターの点検に来た職員より「何かが腐ったような臭いがする」との通報があった。
 署員が駆け付け住宅を捜査したところ、リビングで首をつって死亡している男性の遺体を発見。さらに浴室で切断された女性の遺体を発見した。
 発見された遺体は現在身元確認中とのこと。風呂場で発見された切断遺体は損壊が激しく、腐敗もかなり進んでいたことからDNA

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キ域_01

キ域_01

※「キ域」は一話完結ではなく、シリーズ作品となります。
 分かりやすいように「キ域」シリーズはサムネイル画像を赤に変更しております。

 第一印象は「思った以上に綺麗な家」だった。
 築30年以上は経っていると聞いている。大金をはたいて購入する家となれば新しい家が良かったが、佑衣子と和彦の給料ではそれは夢のまた夢だった。
 それでも一軒家に住まえるだけ随分と恵まれているだろう。
 最寄り駅まで車で

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クローゼット

クローゼット

 酒の席だからこそ話せるヤバい話を聞きたい?
 悪趣味な提案だな。誰が言い出したんだ?
 それで、なんで僕が最初なんだ?
 僕が電話している間にじゃんけんで決めたって?
 まぁいいよ。こういうのは後になれば後になっただけプレッシャーがかかるものだ。前の奴よりも面白い話をしなきゃいけないだろうってね。
 ん? どうした? 一番手を譲ってほしくなったか?

 何を話そうかな。ああ、そうだ。思い出した。

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カンカラアンギャ

カンカラアンギャ

 「パパあのね、お外で聞こえる音が変なの」

 6歳になる息子が彼の大事な相棒であるウサギのぬいぐるみを抱えて居間にやって来たのは、夜の9時過ぎのことだった。息子は30分も前にベッドに入った筈だったが、どうにも眠れなかったらしい。

 「どんな風に変なんだ?」

 尋ねると息子はもじもじと体を捩ってから、ゆっくりと言葉を探すように喋りはじめた。

 「ええとね、火の用心の音がするの。でもすごく速い

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黒のご神体

黒のご神体

 これはまだ私が小さかった頃の話。昭和と呼ばれていた時代の話だ。
 携帯電話なんてものはなく、電話機といえば今では博物館で見るような黒電話だった。それだって普及してからそう長くは経っておらず、もう少し遡れば電話というものは一つの村に一つあるかないかといった具合だった。
 電車にクーラーはなかったし、大人たちはどこでも好きなようにタバコを吸った。
 古き良き時代なんて言葉があるが、私はそんな風には思

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白く漂うもの

白く漂うもの

 「おお、こりゃまた絶景だねぇ」

 ユミコの新居は広大な墓地に面したマンションだった。
 ベランダから一望できる墓石の軍団はまるでミニチュアの摩天楼で、そこにもう一つ都市があるかのようで面白い。

 「キミちゃんはそう言ってくれるけどね」

 ユミコは苦笑しながらマグカップを片手にベランダに出てきた。
 手渡されたカップには美味しそうなココアが湯気をたてている。有難く受け取って一口すすれば、芳醇

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インシデントナンバー(申請中):餓死の悪夢

インシデントナンバー(申請中):餓死の悪夢

 久地楽さんが好きそうな話を聞いたんですよ。

 いつもの喫茶店というほど通いなれている訳でもないが、それでも二月に一度は訪れる程度には馴染みのある場所。
 季節のタルトが評判だというこの店に訪れる時はたいていこの男、目の前の席に座って優雅に紅茶を飲んでいる男から呼び出しを受けた時だった。
 正直に言えば付き合いを持ちたい相手ではない。
 この男こそ怪異ではなかろうか。
 そんな風に思ったことはあ

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さちよ荘

さちよ荘

 「久しぶり、元気してた?」

 改札口を出たところで、女性からふいに声をかけられた。
 最初に浮かんだのは単純な疑問符。
 誰だっけ。
 思い出せない。
 こういうことはよくあった。

 私は昔から「丁度良い話し相手」という立ち位置だった。
 私自身では聞き上手だという自覚はない。どちらかと言えば相手の話しにちゃんと着いて行けてないことが多かった。だが、余計なところで口を挟まないことは、聞き手と

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青い葬列

青い葬列

 僕がはじめて青い葬列を見たのは、幼稚園に入ったばかりのころだった。
 当時の僕はとても幼く、人が死ぬということもあまり理解できていなかった。幸いにも僕に近しい人たちが亡くなったこともなかったので、僕にとって死はとても遠く、テレビや漫画の中だけにある出来事だった。
 それでも、そんな僕にでもあの葬列は恐ろしく、そしてもの悲しいものだった。
 その晩は凍えるような寒さだった。
 布団から出ている鼻先

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お山の参道

お山の参道

 新幹線に乗るのはどれくらいぶりのことだろうか。
 下町で生まれ育ち故郷らしい故郷もない。計画をたてて旅行にいく趣味もない自分には、ほとんど縁のないものだった。
 そんな私が朝五時に起きて新幹線に乗っている。それも連絡不能になった同僚を探しに行くというとんでもない目的のためだった。

 「須藤くん、君ってたしか橘さんと同期だったよね。そこそこ仲が良いって聞いたけど」

 昨日のこと。
 ふいに部長

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毒吐き板 腹黒男⑨

毒吐き板 腹黒男⑨

 こんにちは。このたびはご愁傷様でした。心よりお悔やみを申し上げます。
 そんな忙しい時期に呼び出してしまって悪かったね。
 だったら早く話を終わらせろ? そうだね、では早速本題に入ろうか。

 ネットの掲示板には実に多種多様なスレッドがある。様々なニーズに応じて場所を選んで、相談をしたり愚痴を書き込んだり、あるいは誰かの書き込みに対して返信をしたり。見ず知らずの不特定多数の人間との繋がりっていう

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影んぼ

影んぼ

 影んぼを初めて見たのは塾帰りの道でのことだった。

 時刻は20時を回っており、駅前の商店街すら人影がまばらになっている。これが金曜日ともなれば、飲み屋に向かう人たちでもう少しは賑わっているのだが、それ以外の平日はじつに閑散としたものだ。
 街のあちこちにはクリスマス飾りがきらきらと輝きを放っている。電飾で彩られたツリー、サンタクロースの置物に松ぼっくりと星をちりばめたクリスマスリース。
 僕は

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だれかが覗いてるの

だれかが覗いてるの

 「おトイレが怖い、だれかが覗いてるの」

 甥っ子がそう言い出したのは、盆に家族がみんな集まった時のことだった。
 家族皆と言ったものの、最近では大家族も少なくなってきているだろう。例にもれず我が家も、私と母、そして妹家族の三人だから全員あわせても五人だけだ。
 それでも盆暮れになれば一つの家に揃うのは、きっと歓迎すべき事だろう。
 この家は今は私と母の二人きりで住んでいる。以前は父と、そして妹

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山に潜る

山に潜る

 紅葉を見に低山へハイキングに行きませんか?

 八重子から届いた誘いに二つ返事で了承を返した。
 ハイキングは好きだ。軽い山登りも好きだったがいざ一人で計画してとなるとなかなか実行に至らない。
 だからこうして誘ってくれるのはありがたい。
 八重子は高校時代からの友人だ。
 もともと特別仲が良かった訳ではなかったが、学校行事のハイキングで歩くペースが同じだったためにお喋りをしたがきっかけだ。思え

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見えたら流して下さい

見えたら流して下さい

【attention】
 このお話は「ネタにしてもよい体験談」として頂いた話を小説化したものです。ネタ提供者様より添付して頂いた写真も掲載しております。
 この小説を読んだ後に怪奇現象に遭遇したとのご報告を多数いただいております。中には吐き気や頭痛に襲われた、車のブレーキが利かなくなったなどもございます。
 対処方法に関しては小説内に記載してありますが、不安に思われる方は読まないことをお薦めいたし

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S駅行きバス停

S駅行きバス停

 バス停で奇妙なことに遭遇する。
 何がきっかけでその話題に及んだのかは覚えていない。いつの間にかランチタイムのお喋りはバス停での不思議な出来事に関してになっていた。

 私の勤めている会社は少々不便な場所にある。
 もともとは都会にあったのだが、事業拡大とともに一部の部署が本社から出ていくことになったのだ。都会はとにかく家賃が高い。そこで目をつけられたのが郊外だった。
 そんな訳で勤務地の変更を

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