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#14 はじめまして、Joana【後編】

次に向かったのは、ミュンスターのクリスマスマーケット。

規模はフランクフルトやケルンほど大きくはないが、人が結構いて賑わっていた。ここでもホットチョコレートを飲んだ。Joanaはグリューワインを飲んでいた。大人だ。
Joanaに「あそこはこんなものが売っているよ」などと教えてもらいながら周るクリスマスマーケットはとても楽しかった。現地の人に案内してもらうと、思いもよらない発見があったりする。私が英語が話せたら、もっと楽しかっただろうな。この日の思い出を振り返ると、英語力を身に着けたいなと改めて思う。

空が暗くなってきたので、3人で夕食をとることにした。ヨーロッパに来て3日目にしてはじめての外食。
お店はJoanaが選んでくれた。お店の雰囲気はカジュアルだったが、値段はカジュアルではなかった。具体的な値段は覚えていないけれど、当時1ユーロ130円ぐらいの相場で、手が出せるのはマッシュルームのソテーぐらいだった。
もっとがっつりとした食事はかなり高くて貧乏女子大生は怖気づいてしまう金額だった。私はドイツらしくジャーマンポテトを食べたくて、ポテト盛り合わせ的なものを注文しようとしたが、Joanaが「どの料理もポテトついてくるよ。ポテトパラダイスになっちゃうよ」と私を制してくれた(ポテトパラダイスは絶対言ってないけど、つまり私の愚行を止めてくれたことを伝えたい)。ミズノはおしゃれな生ハムサラダを注文していた。私の元には、ある意味おしゃれなマッシュルーム盛り合わせがやってきた。美味しかったので満足だが、Joanaには「この子、すごくマッシュルームが好きなのね」と異様な光景に映ったと思う。
あと、ジャーマンポテトがとっても美味しかった。

だんだんJoanaとの会話にも慣れ始めたころ、ミズノがお手洗いのため席を立った。いくら会話に慣れたとはいえ、これはピンチだ。
Joanaと1対1の会話はハードルが高すぎる。
一体何を話したらいいのか。いや、私に何が話せるのか……。

考え抜いた末に私が提供した話題は「トイレ」だった。

食事中に、最悪だ。
しかも内容は非常に薄い。
「ドイツのトイレは有料で驚いた。日本は無料なんだよ」。

以上、終了。
Joana、苦笑い。

でもJoanaは本当に優しいので、「そうだよね、トイレ高いよね」と返してくれた。なぜよりによって食事中にトイレの話題を出したのか。もっとなんかあるだろ。育ちの悪さが出てしまった瞬間であった。

一人であたふたとしているうちにミズノが戻ってきてお店を後にし、ミュンスター駅まで3人で向かいJoanaに感謝の気持ちと別れの挨拶を告げた。Joanaは笑顔で「また会おうね!旅行楽しんで!」と言ってくれた。
トイレの話をしたのに、天使よありがとう。

帰りの電車はホグワーツ学校行きの電車を汚くしましたみたいな内装だったことしか覚えていない。
それほど疲労困憊で意識が朦朧としていたのだろう。もちろん、凄く楽しかったし充実感に満ちた1日だった。心地よい疲労を抱えてホテルに帰り、翌日のオランダへの移動に備え、眠りについた。

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