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【本の紹介】気がつけばコロナも4年目。今更だけれどパンデミック小説

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 コロナウイルスの世界的流行からまもなく4年。未だ収束の目処が立たない中、なし崩し的に行動制限は緩和され、政府はインフルエンザと同じく5類に引き下げる検討を始めたとか、

 今更ではありますが、今回は感染症の流行をテーマにした小説をご紹介します。

コロナ禍の混乱を予言したかのようなパンデミック小説6冊+1冊

●首都感染/高嶋哲夫 著

単行本 2010年刊行
文庫 2013年刊行
【内容紹介】
 二〇××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率六〇%の強毒性インフルエンザが出現!中国当局の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。検疫が破られ都内にも患者が発生。生き残りを賭け、空前絶後の“東京封鎖”作戦が始まった。
裏表紙より

 主人公は内科医で元WHOの感染症のプロ。彼が過去の経験と知識を総動員して感染対策を立案。元医師である厚労大臣と主人公の父でもある総理大臣が大英断を下していく様子は素晴らしいですが、実際のところはそこまで振り切った対策は実行できなかったという。これが現実か。

●H5N1/岡田晴恵 著

単行本 1007年刊行
文庫 2009年刊行
【内容紹介】
 南の島で強毒性新型インフルエンザが発生した。感染した商社マン・木田は帰国4日後に死亡。感染症指定病院や保健所は急いでパンデミックに備えるが、瞬く間に野戦病院と化す。R病院副院長・沢田他、医師の間に広がる絶望と疲弊、遂には治療中に息絶える者も。科学的根拠を基にウイルス学の専門家が描いた完全シミュレーション型サイエンスノベル。
裏表紙より

 日本人は感染症に対する危機意識が低いそうです。その理由は日本が島国であることと、江戸時代の鎖国により大陸との交流がほとんどなかったために、ペストのような疫病による国家存続の危機がなかったからだとか。
 著者は国立感染症研究所の元研究員さんなだけあって、感染が拡大していく様子がとてもリアルです。なんだかんだ言ってコロナウイルスは今のところ弱毒性ですが、これがもし強毒性に変異したらと思うととても恐ろしい。

●サリエルの命題/楡周平 著

単行本 2019年刊行
文庫 2021年刊行
【内容紹介】
 日本海の孤島で新型インフルエンザが発生、島民全員が死亡した。強毒性のウイルスは、アメリカの研究データが流出し人工的に作られた疑いが出てテロとの噂も。さらに変異ウイルスの発症者が本州で確認され、備蓄量が少ない治療薬の優先順位に国民の注目が集まる。社会保障の限界を浮き彫りにした警鐘小説。
裏表紙より

 いわゆるパンデミック小説として話が進むのかと思いきやそこは楡周平さん。切り口は庶民でも医療現場でもなく、経済と現行の保険制度の問題点の話でした。少子高齢化で医療費が高騰する現代、もしこの物語のようなことが起こったらどうなるのか?
 ワクチンはどのくらい準備できるのか?
 治療薬は完成するのか?
 もし足りなかった場合の優先順位は?
 これが2018年に書かれていたとは驚きです。

●夏の災厄/篠田節子 著

単行本 1995年刊行
文庫 2015年刊行
【内容紹介】
 平凡な郊外の町に、災いは舞い降りた。熱に浮かされ、痙攣を起こしながら倒れる住民が続出、日本脳炎と診断された。撲滅されたはずの伝染病がなぜ今頃蔓延するのか?保健センターの職員による感染防止と原因究明は、後手にまわる行政の対応や大学病院の圧力に難航。その間にもウイルスは住人の肉体と精神を蝕み続けー。20年も前から現代生活の脆さに警鐘を鳴らしていた戦慄のパンデミック・ミステリ!
裏表紙より

 まず驚くのは、この小説が今回紹介した中では最も古く、25年以上前に書かれていたことです。
 病気云々はともかく国や世の中の動きが今のこの状態を予想していたかのようにリアルに描かれていること。ゴミ問題に対する役所の対応の杜撰さや、厚労省の対策委員の決め方はもう読んでいてイライラしました。最後はこの後何かが起こりそうな終わり方で背筋が寒くなりました。

●BABEL/福田和代 著

単行本 2014年刊行
文庫 2019年刊行
【内容紹介】
 ある日突然、同棲している恋人が高熱で意識不明の重体となり、救急車で搬送される。彼に付き添い続けた悠希にも、魔の手がしのび寄り…。感染爆発が始まった原因不明の新型ウイルス「バベル」に、人間が立ち向かう術はあるのか?日本政府はある対策を講じる決断をする。近未来の日本を襲った緊迫のバイオクライシス・ノベル。
裏表紙より

 未知のウイルスの脅威から人類を守るために、感染者と非感染者を別の区域に住まわせるとか、悪の非感染者の企みを感染者のレジスタンスが阻もうとする構図など、かなりSF寄りの設定ではあるものの、人々がウイルスに脅威を感じマスクを買い占める話とか、感染者を蔑視する感情や行動はコロナが明らかになったあの頃の日本そのもの。感染の後遺症として言葉を奪われるから〝バベル〟というネーミングは目から鱗でした。

●感染列島(映画ノベライズ)/和解学 著

文庫 2008年刊行
【内容紹介】
 救命救急医・松岡剛のもとに現れた一人の急患。症状は新型インフルエンザに思われたが、何かが違っているー。折しも東京都いずみ野市の養鶏場では鶏が大量死する鳥インフルエンザが発生。市民がウイルス・パニックに陥る一方、剛の勤める市立病院では院内感染が拡がっていた。事態の調査と感染拡大を防ぐため、WHOのメディカルオフィサーで剛のかつての恋人である小林栄子が派遣されるが、ワクチン無効の未知なるウイルスの感染爆発“パンデミック”は加速し、未曾有の危機が日本中を震撼させる。衝撃のパニック・エンターテインメイト映画を小説化。

 2009年に公開された映画のノベライズです。元が映画なので、これまでにご紹介したパンデミック小説に比べるとリアリティに欠けるというか、理屈っぽくないというか、実に物語的というか。医師目線で描かれていてエンタメ作品としては見どころというか読みどころ満載でした。

そして、あの時最前線では…。

●臨床の砦/夏川草介 著者

単行本 2021年刊行
文庫 2022年刊行
【内容紹介】
 「自分だけが辛いのではないと思えば、踏みとどまる力が生まれる」。敷島寛治は長野県の感染症指定医療機関、信濃山病院に勤務する内科医である。令和二年の年末からコロナ感染者が急増し、医療従事者の体力は限界を超えていた。“医療崩壊”寸前と言われるが、現場の印象は“医療壊滅”だ。ベッドの満床が続き、一般診療にも支障が出ている。未知のウイルスとの闘いは緊張の連続だった。コロナは肺だけでなく、人の心も壊す。それでも信濃山病院の医師達は、逃げ出さなかった。「あんな恐ろしい世界の中でも、我々は孤独ではなかったー」現役医師が綴る、勇気の物語。
裏表紙より

 コロナウイルスが猛威を振い始めた頃の地方病院のリアルな現実。あの頃コロナがこんなに長引くと誰が考えていたでしょう。最前線の医療機関がこんな状況なのに、国はなぜか1家庭に2枚マスクを配ったり、Go_to_Travelで経済を立て直そうとして結局Go_to_Troubleだったり。何が正しくて何が間違っていたのか自分には語る知識も資格もないけれど、早くコロナが終息して、この物語がドラマ化や映画化されて、「そういえばそんな時があったよね」ってマスクを外して肩を寄せ合って語れるような世の中になってほしいと願うばかりです。

最期に

 いかがでしたか?
 〝臨床の砦〟以外は全てコロナウイルス蔓延前に書かれた小説です。小説家さんの取材力と想像力に脱帽です。
 何はともあれ、1日も早く特効薬が完成して、マスクなしで大手を振って歩ける日が来ますように。
 最前線で戦ってくださっている医療現場のみなさん。
 本当にありがとうございます。

最後に
読書っていいよね。


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