孫子を読む 0

『孫子』については「論語読みの論語知らず」ならぬ「孫子読みの孫子知らず」とでも言えるほど、兵書としてあまりにも有名だが、誤解もしばしばあった兵書である。
だが、『孫子』は今なお世界第一線の戦略研究者が研究する戦争論・政治論であり、経営論や人生論としても読み親しまれていると言える書物である。
筆者はその孫子の思想をより深く理解しようと思い、この企画を立ち上げた。
筆者の実力でどこまで読み進められるかはわからないが、むしろこれを読むことが実力をつけることなのだ、との思いで始めるところ。
長い目でお付き合いいただければと思う。

概要

成立年代・作者

『孫子』は今から2500年以上前、中国の春秋時代末期に、呉の王闔閭(こうろ)に仕えていた孫武によって書かれたとする説が有力。

テキスト

また、現在までに広まっているテキストは、三国志に出てくる曹操による注である魏武注本の派生系で、「武経七書本」・「平津館魏武注本」系統と「十家注本」系統との二つの系統がある。

また、1972年に銀雀山から発掘された前漢時代の竹簡も孫子研究において重要であったりする。

日本における訳

『孫子』は日本国内で色々な出版社から訳が出ている。

日本で今おそらく最も有名なのは守谷親子による訳のもの。

これは三笠書房の知的生きかた文庫からも出ている。

知的生きかた文庫では最近だと田口訳による超訳ものもあるようだ。
これはブックオフで見かけたりもする。

他、大手出版社の少々お固めのところなら岩波文庫(岩波書店)の金谷訳、中公文庫(中央公論新社)の町田訳、講談社学術文庫(講談社)の浅野訳が有名か。

ちなみに、講談社学術文庫では『魏武注孫子』が渡邉訳で最近出版されている。

中堅どころでは角川ソフィア文庫(角川学芸出版社)の湯浅訳が抄訳として、徳間文庫(徳間書店)からは村山訳(絶版)が、明治書院の新釈漢文大系36巻(絶版)および新書漢文大系3の天野訳出ている。

マニアックどころだと芙蓉書房の戦略論大系シリーズの1巻(絶版)と日経ビジネス人文庫(日経BP 日本経済新聞出版社)の杉之尾訳(この方は元自衛隊の1等陸佐)、PHP文庫(PHP研究所)の兵頭訳(絶版)が出ていたりする。

これはあくまで現在手に入りやすいと思われる代表的な訳書の一例であり、他にも漫画や解説書の類を合わせれば大手から中小の出版社に至るまでいかに様々な出版が出版している。
いかに、今なお読みつがれていることが想像できるだろう。

ちなみに蛇足だが、『呉子』とのセットが多いのは、しばしば両者を合わせて「孫呉の兵法」と呼ばれることがあるためと思われる。

さて、孫子をいかに読むか

孫子を政治、軍事、経営、人生論いずれの戦略から理解しても文学としては問題ないが、その基礎として政治−軍事との関係からなる戦略が下地として重要ではあろう。

そもそも経営戦略も軍事戦略の思考法から派生したものであるという歴史的経緯もある。

なので、筆者としては軍論事として読んでいくことを、それも軍事に関する知識のなかでもより普遍性の高いと思われるものを通しての読解を試みたく思う。

そのためには軍事概念に関して筆者の見解を示したいと思うので、まず、そこから手を付けていきたく思う。

このようなことは、回り道ともとれるであろうが、むしろこの方が孫子をより深く、そして平和論の観点からも味わえると思う。

結語

実のところ筆者は『孫子』を読んで血肉にならず挫折してきたところがある。
このような筆者の語る孫子論を誰が楽しみにするかはわからないが、書いていこうと思う。
改めて、第一回がいつになるかはわからないが、お付き合いくだされば幸いに思う次第だ。

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