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サントリーサンゴリアス初心者観戦記☆日本選手権決勝vsパナソニック〜《待ち焦がれた歓喜》必ず〜

1.『果てしなくまた息苦しい足踏み』の中で

東京 24℃ 湿度58%  『Weather ch』はあくまで《ちょうど良い》気候だと主張する。

違う、どう考えても暑い‼️

地下鉄銀座線外苑前駅を出ると、初夏の真っ直ぐな日差しが容赦なく襲ってきた。たしかに日陰は冷たい空気が通り抜けていくが、私の向かう先に日陰など微塵もない。

薄く青い初夏の空、綿菓子のようにちぎれた雲がいくつも浮かんでいる。

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2021年5月23日。秩父宮ラグビー場

2003年から始まったジャパンラグビートップリーグは、今日の試合で計18シーズンの幕を下ろす。

まだキックオフには1時間以上ある。チケットも5000枚に制限されている。それでも入場口はいつも以上にごった返していた。

10月4日の大学ラグビー開幕戦から始まった私のラグビー漬け生活、一応今日で一区切り。

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そう思うと感慨深い。意味もなくシャッターを切りつづける。

コロナ禍で休止に追い込まれた2020シーズン、開幕が1ヶ月遅れた2021シーズン、揺れに揺れたラグビー界は、なんとかこの日の試合で一つの区切りを迎える事ができる。

私はずっとラグビーを追い続けた人間ではない。とはいえ、

18年続いたトップリーグが幕を下ろすことより、この1シーズンが無事終了する事に思いが至る。『何かが始まって、それが終わる』ただそれだけの事がこんなにも難しいなんて。

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このスタジアム正面からバックスタンドに至る狭い通路は、早くも黄色と青の人波で埋め尽くされていた。

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日陰を見つけ簡単に昼食を済ませた。裏門からは瑞々しい緑の銀杏並木が続いていた。

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意を決してスタジアム内に入る。バックスタンド、遮るものは何もない。SPF50の日焼け止めは、UV加工のユニクロのパーカーは本当に効き目があるのか⁉️年齢を考えれば日焼けなどしたくないのだが。

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いや、この日の太陽は、私の努力を嘲笑うかのように燦々と光をグラウンドに注いでいた。既に熱を持った座席、直に座っていられず慌ててクッションを敷く。それにしても、、

この空、身も心も吸い込まれそうに澄んだ青。昔、美術展で同じ空を見た事がある。たしかルノアール。

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《ポン•ヌフ,パリ》ピエール=オーギュスト・ルノアール作 ワシントン・ナショナルギャラリー蔵

ここが【決勝】の舞台。

ジャパンラグビートップリーグ2021プレーオフトーナメント兼第58回日本ラグビーフットボール選手権大会決勝

サントリーサンゴリアスvsパナソニックワイルドナイツ。

対戦相手ワイルドナイツ、もう何度も使った例えだが、

故三遊亭圓歌の創作落語『中沢家の人々』の一節を借りて言えば、

『佃煮ができる程』日本代表がいる超強豪。

もちろん、サンゴリアスも負けていない。こちらでも十分『佃煮』が作れる。

【ディフェンス風味】がいいか、【アタック風味】がいいか、好みは分かれるがどちらも極上。

今日の試合、80分後には全てのファンがお腹いっぱいになるはずだ。

この両チーム、リーグ戦はカンファレンスが違ったために対戦がなかった。

ホワイトカンファレンスを磐石の試合で首位通過、プレーオフトーナメントもイーグルスとヴェルブリッツを完膚なきまでに打ちのめしたワイルドナイツ。

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ヴェルブリッツ、スピアーズとの激闘を制してレッドカンファレンス首位通過、準々決勝は『中止』による勝ち上がりとなったが、準決勝はスピアーズをノートライに抑える貫禄勝ち。満を辞してこの舞台に臨むサンゴリアス。ここ数年決勝の常連だ。

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まさに、《トップリーグ真の王者》を決めるのにふさわしい顔合わせ、時間と共にファンの期待は高まる。

サンゴリアスの練習が始まった。

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おお、『兄さん』、もう始めますか‼️

私が勝手に『兄さん』と呼ぶスーパースター、ボーデン・バレット選手。準決勝はまさに『兄さん劇場』だった。きょうも頼みます。

次々と選手が練習を始める。

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田村選手、『兄さん』との競演に期待!

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新人ながらスタメンの中野選手、狙うはトライ!

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『兄さん』はキックの練習に余念がない。この成否が試合の鍵を握る、おそらく。

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流選手。2020年の開幕戦で東芝にまさかの敗戦、その後練習場では常に大声で仲間を鼓舞していた。全ては優勝のために。しかし、ヴェルブリッツに快勝して波に乗った矢先の事だった。2020年2月下旬、コロナ禍によりリーグは休止、そのままシーズン中止となった。この日は1年3ヶ月越しの決勝の舞台。今までの全ての思いをここに❗️

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サンゴリアスファンは、彼がどれほどファンのために心を砕いてきたか知っている。雨の日も、寒い日も。

だから今日は感謝の気持ちを応援に代えて、彼の《夢》を後押しする。

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ワイルドナイツも練習を始めている。

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なんといってもこの人。後ろ姿だがおそらく。

『全てを持っていく男』福岡堅樹選手。

準々決勝では約90メートル独走トライ、準決勝ではハットトリック。この決勝、勝つためには決して彼を走らせてはいけない!

もちろん、今日本で『全てを持っていった』男といえば『星野源』であって福岡さんではないけれど。

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サンゴリアスの練習は美しい。流れるような速さで次々と攻撃が生まれる。どこからでも、誰からでも。いつシャッターを切っても絵になる。

今日は日本人で揃ったBK陣、思い切り走りたい。

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いつも頼もしい中靏選手。その快足でチームに勢いを与えられるか。

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控えの斎藤くんは新人ながらリーグ戦大活躍。おそらく後半大事な場面での投入、やるしかない!

練習を見守るミルトン・ヘイグ監督、57歳。《インディージョーンズ》にでも出てきそうなワイルドで渋い佇まい。

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選手紹介も始まり、練習もそろそろ終了。

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いつものように、隊列を組んで戻る。でも今日は少し違った。

雄叫びが聞こえる‼️

心の底から絞り出すような、魂から沸き立つような声、声、声、、、

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拳を突き上げる選手達、会場はその意気に拍手で応える。

決勝。2020年1月から一年四ヶ月かけて、途中半年ラグビーができない時期を経て、ようやくたどり着いたこの舞台、目指すものはただ一つ、

優勝。

サントリーサンゴリアス

あの苦しかった日々の全てをこの試合に賭ける‼️

ペストは町をその足下にひれ伏せさせていた。なにしろその正体は足踏みであったから、数十万の人間が、いつ果てるとも見えぬ週また週の間をなおも足踏みし続けていた。(カミュ作『ペスト』より)

2.前半〜ここにも何かが棲んでいる〜

選手入場の時間となった。24本の白い旗が会場に入ってきた。

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18年の歴史の中でトップリーグに参加した計24チームの旗

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白い旗は美しくその姿をはためかせていた。トップリーグ創設の前年、日本はサッカーW杯2002日韓大会に沸いた。そのさらに9年前1993年に開幕したJリーグ発展と共に、今サッカーはプロ野球と並ぶ国民的スポーツだ。

W杯2019日本大会で国民に浸透したラグビー、これから、全ては『これから』だ。

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選手が入場する。初めはワイルドナイツ。

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いつもと違う。グラウンドに入らず旗の前に整列する。

続いてサントリーサンゴリアス。

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この整列、『国歌演奏』のためだ。『斉唱』は許されない。観客も起立して《君が代》に耳を傾ける。

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やはり決勝は特別な舞台。『音だけの君が代』がかえって荘厳な雰囲気を会場に生んでいた。

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選手達がグラウンドに入る。カウントダウンはなんと宇宙から❗️

国際宇宙ステーションでの任務に就く宇宙飛行士星出彰彦さんは、慶應義塾大学理工学部体育会ラグビー部ご出身、そのご縁で地球の外からエールを送ってくださる。宇宙は広いが、ある意味意外と近いのだ。それにしても、苗字が《星出》とは!宇宙飛行士はまさに天職。

宇宙からのカウントダウンが始まった。

10.9.8.7.6.5.4.3.2.1.

試合が始まった。

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『オリンピックには魔物が棲んでいる』

体操の内村航平選手がかつて口にした言葉は、ここ秩父宮にも当てはまるのだろうか。

開始早々サンゴリアスに試練が襲いかかった。

攻勢に出ていたサンゴリアス。まずは『兄さん』が走って魅せる❗️

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ボールは繋がれ主将中村選手から大外の中村駿太選手へ!しかしノックオン。

ワイルドナイツボールのスクラムでサントリーペナルティー。

しかし、ラインアウトのボールを中村駿太選手が確保、サンゴリアスは再び攻撃に転じる。

悪夢はこの直後に起きた。

サンゴリアス、『兄さん』がやや長いパスを出したその刹那、ワイルドナイツ、ディラン・ライリー選手のインターセプト❗️

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誰も追いつけず余裕のトライ。

キックは松田選手が確実に成功させる。

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0-7

開始早々のトライ、流石に震撼する。

サンゴリアス相手にこの先制パンチ🤛ワイルドナイツ、やはり只者ではない。

サンゴリアスは、速いパス回しと『兄さん』のキックで事態の打開を図る。しかし、

ワイルドナイツの防御は厚く、その最後の壁が破れない。逆襲に転じるとキックで一気にゴールライン付近まで迫る。

共に走り込んだ江見選手がなんとかボールを確保。トライを逃れた。とはいえ

この直後のラインアウトでサンゴリアスのペナルティー。

ワイルドナイツは、きよし師匠の如く『コツコツと3点貯金』を選択。松田選手のキック成功!

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0-10

サンゴリアスは再び敵陣に入りキックを織り交ぜながらボールを繋いでいく。そして大外左に走る江見選手にパス、トライかと思われたが、その前にスローフォワードの判定。

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しかし、さらにその前にワイルドナイツのペナルティーがあった。ここで『兄さん』が登場する。

その時だった。これは錯覚ではない。『兄さん』が蹴る直前だけピュッ、ピュッ、とやや強い風が2度吹いたのだ。『兄さん』はそのままキックに入る。

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兄さんの蹴ったボールは右のポールに当たって外れてしまった。

グラウンド内ではよくある事かも知れない。でもなんだか気味が悪かった。

依然、0-10

ワイルドナイツは、福岡選手の快足を機に一気に攻め込んできた。そして松田選手は左に柔らかくキック、転がったボールを取ったのは福岡選手!

しかし、ボールは手につかなかった。ノックオン。

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サンゴリアスボールのスクラム。

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ワイルドナイツの破壊的なタックルを浴びながらも、『兄さん』のキックで中央近くまで挽回、しかし、サンゴリアス再びペナルティー。

松田選手は確実に決める。

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0-13

雲の流れは速い。太陽はギラッと照りつけたかと思うと、深く影を落として涼しい風を送ってくる。

依然ワイルドナイツは攻勢を緩めない。

キックで攻守が交代、サンゴリアスの深いキックをワイルドナイツがノックオン。

サンゴリアスのチャンス!

サンゴリアスボールのスクラム。

しかしターンオーバー、一気にワイルドナイツ・福井選手が走る!

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江見選手がゴールライン手前で捕らえ、その後再びボールを奪取、

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しかし攻撃に転じたサンゴリアスはノックオン、そのボールを確保したワイルドナイツが再び逆襲に出る。

そして、やっぱりこの人。

松田選手からのパスは左へ。走り込んだのは福岡選手。中靏選手を、最後は『兄さん』を振り切ってトライ❗️

(この写真では何もわからないが。)

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松田選手のキック、難しい角度も見事に成功。

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0-20  これ以上離されてはいけない‼️

兄さんのキックで敵陣に入ったサンゴリアス、ここでワイルドナイツのペナルティー。『兄さん』のキックでさらに敵陣深くに入る。

サンゴリアスボールのラインアウト、サントリーはゴールラインにジリジリと迫る。

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フェイズ8

主将中村選手は軽くキックを上げ、自らボールに飛び込んだ。そしてそのままトライ‼️

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そして『兄さん』も確実に決めた‼️

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13点差。ここから!

その後も互いにキックの応酬は続く。

ここでサントリーボールをワイルドナイツがジャッカル。

またも松田選手がキックの用意をしている。

距離はあったが見事に成功。

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7ー23

ここでホーンが鳴った。

前半終了。

サンゴリアスファンは、何かに呑まれたように静かになっていた。

後半に強いワイルドナイツ相手に16点差。この点差は重い。

私は照りつける日差しに耐えきれず階段下の通路に避難した。スポーツドリンクを飲みながら、早くも偏頭痛気味に頭はグルグルしてきた。

決勝の緊張感、他の試合の比ではない。選手にとって、この試合ほど《負けたくない試合》はないのだ。その気持ちが観客席にビリビリと伝わってくる。慣れない私は、既にこの緊張に耐えられなくなっていた。

決勝のグラウンドは、勝利を渇望する選手のエネルギーが常に何かを生んでいる。それがチームにとって吉なのか、凶なのか、最後までわからないが。

3.後半〜夢は目前に、しかし遠く〜

後半が始まった。

サンゴリアスは、早速キックで前進を図る。

梶村選手が一気に走る!

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サンゴリアスは敵陣深く入り、さらにボールは繋がる。中靏選手が、『兄さん』が、走る!垣永選手、森川選手にオフロードパスが繋がる!ゴール付近での攻防、そこに上から中靏選手が飛び込んだ‼️

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後半開始早々、サンゴリアス トライ‼️

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しかし、兄さんのキックは左に外れていった。

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9点差!

この後キックの応酬が続いた。そして、サンゴリアスの最後尾にいた中村選手がボールをキャッチ、その瞬間だった。

ワイルドナイツ布巻選手が猛然とタックル、ボールを奪取したワイルドナイツが一気にゴールラインに迫る。

流選手のキックでなんとかピンチを脱出、ラインアウトでボールを奪取し、そのまま江見選手が一気に走る。そのままパスも繋がりサンゴリアス再び攻勢へ。しかし、ターンオーバー。福岡選手のキックでワイルドナイツもまたピンチを脱した。

その後キックで陣地を取り合いながら両者拮抗した状況が続く。

ここでワイルドナイツ堀江選手、ヴァルアサエリ愛選手が登場。

ワイルドナイツは蹴ったボールを自ら確保、さらにキック、取ったサンゴリアス梶村選手を外に押し出した。

ラインアウトからゴールライン手前での攻防。

ジリジリとゴールラインに迫るワイルドナイツは左へボールを送る。

力で体ごと押し込むワイルドナイツ、それを押し返すサンゴリアス。

ゴールラインほぼ真上での攻防。ここでサンゴリアスにペナルティーの判定。

ワイルドナイツはラインアウトを選択。

ボールを押し込むワイルドナイツに応援席から手拍子が起こる。ゴールラインは目前。その時、緊張の間隙をぬって瞬時に飛び込んだ選手がいた。

ヴァル・アサエリ・愛選手トライ!

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松田選手はキックの準備に入る。ここまで5本成功させていた。

ところが、蹴る瞬間、軸足に異常が起きた。

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ゴール失敗。足が攣っているのか。ちょっと心配だ。

12ー28 再び16点差。

サンゴリアスは『兄さん』のキックで再びチャンスを得る。

ここでやはり松田選手は交代する。代わりに入るのは、我が家の娘が

『パナの長谷部』

と呼ぶ山沢選手。この選手層の厚さに驚くばかり。

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ここでワイルドナイツ堀江選手が放ったボールは想定したコースを外れていたが、サンゴリアスはこのボールを確保できずノックオン。チャンスを逸する。

しかし、サンゴリアスの攻勢は止まない。『兄さん』のキックでゴールライン近くまで再び迫る。

ここで流選手と中靏選手が退き、新人の斉藤選手と田村選手が入った。

ラインアウトから一気にゴールラインすぐ手前まで迫るサンゴリアス、しかし、

ノット・リリース・ザ・ボール

サンゴリアスにトライが遠い。

グラウンドは、相変わらず照ったり陰ったりしながらジリジリと暑さを増していた。

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そのせいか分からないが、兄さんが珍しくパスを乱し、これを機にワイルドナイツが襲いかかってきた。テビタ・タタフ選手のジャッカルでこのピンチを逃れる。

再び攻めるサンゴリアス。

時間はあと15分!トライが欲しい!

サンゴリアス江見選手も、ワイルドナイツのガンター選手も足が攣って苦しげな顔を浮かべている。疲労はピークか。

ここでサンゴリアスのペナルティー。

少し距離がある。山沢選手のキックは失敗。

12ー28 依然16点差。

攻守はその後幾度か入れ替わるが、サンゴリアス8番マクマーン選手が一気に前へ。その後パスは繋がり、最後走ったのは新人斉藤選手‼️

そのまま飛び込み斎藤選手 トライ‼️

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兄さんは難なくキックを決める。

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9点差!

あと10分!

この後ボールを確保したものの、猛烈なワイルドナイツの圧力で自陣内から脱出できないサンゴリアス。そこに福井選手が飛び込む。ジャッカル成功。

サンゴリアス、痛恨のペナルティー。

山沢選手のキック成功。

31ー19 8点差。

あと6分!

サントリーは攻め続ける。

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タタフ選手が、小澤選手が、前進する!ボールを奪われそうになるも、アドバンテージを得てサントリーは攻勢をさらに強める。

フェイズは既に10

ボールは右に、大外で待つ尾崎選手に!

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トライ‼️

残りはあと2分!

兄さんはすぐに蹴る。成功‼️

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5点差‼️

キックでボールを確保したサンゴリアス、マクマーン選手が一気に抜ける!

しかしパスは繋がらない。ノックオン。

あと45秒。

ワイルドナイツボールのスクラム。場内は両チームのファンが鳴らす手拍子が響く。

ここでホーンが鳴った。

ワイルドナイツはボールを確保した。

ノーサイド

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ワイルドナイツ5度目の優勝。

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両チームの選手達は健闘をたたえあった。

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その後サンゴリアスの選手達は円陣を組んでいた。しばらくその輪は解けなかった。

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輪が解けると、選手達は観客席に足を向けた。

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『兄さん』は、客席最前列まで降りてきた女優のように美しい奥様と言葉を交わしていた。

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メインスタンド側では、引退する福岡選手がインタビューを受けていた。最後まで、『全て持っていく男』だった。しかしそれは、類稀なる才能を妥協なく磨き続けた証でもある。

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ワイルドナイツの選手達もサンゴリアスファンの観客席にやってきた。名将ロビー・ディーンズさんと共に創り上げた珠玉のチーム。素晴らしい、としか言えない。

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『兄さん』がインタビューに答える。もうすぐ帰国が控えている。『兄さん』、いつも『超一流』のラグビーを見せてくれてありがとう❗️

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メインスタンドのファンに挨拶するサンゴリアスの選手達。今日は負けたけど、やっぱりサンゴリアスラグビーは美しかった。

自由で、かつ自律した選手達の織りなす攻撃的ラグビーは、ファンの誰をも魅了する。サンゴリアスは、これからもサンゴリアスのままで。

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表彰式の設営が始まっていた。バックスタンドから見ると、芝居を舞台袖からみる景色の様。

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表彰式が始まる。まず準優勝のサンゴリアス。

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感染防止のために、自らトロフィーを取りに行くらしい。

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授与が終わった。彼等は、通路脇に移動してそのまま待機する。

優勝したワイルドナイツが整列する。

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いくつもらうんだ⁉️というほど沢山のトロフィーが🏆贈呈された。

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チャンピオンフラッグも贈呈される。

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そして、10年前《なでしこジャパンW杯優勝》の表彰ですっかりお馴染みになった《セレモニー》が始まる。

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メインスタンドからは選手達がこのようにスタンバイ。後ろに花火が見える。ここで花火に着火。

選手達は、合図で全員両手を天に突き上げる。

初めはこの程度。

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徐々に噴き上げる。

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1番の盛り上がりでは、バックスタンドの観客はモニターでその様子を確認。

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煙が消えると、ワイルドナイツ戦士の誇らしい笑顔が浮かび上がった。

その日の風向き、というものがある。

この祝祭の煙は、容赦なく通路で控えるサンゴリアス選手の方向に流れていった。

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ワイルドナイツの選手達は、各々トロフィーを掲げてメインスタンドのファンと喜びを分かち合う。

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これから記念撮影に臨むのだ。

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サンゴリアスの選手達、梶村選手は家族のねぎらいを受け、

中靏選手は一人佇んでいた。

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どこかやり場のない思いが伝わってきた。

決勝の試合。

生で観ると、勝者と敗者の明暗はあまりに鮮烈だった。その落差は残酷だった。

勝者の歓喜はこの上なく輝き

敗者の絶望は例えようもなく深い。

この舞台に立った者全ては、必ず誓うだろう。

再びこの舞台に戻り、勝者の歓喜を味わいたい、と。

だから、チームは強くなるのだ。

勝っても、破れても、《そこで感じた全て》が明日への原動力となる、必ず。

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ワイルドナイツは写真撮影を終えた。円陣から歓喜の歌声が聞こえてきた。

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サンゴリアスの選手達は、厳しい戦いを終えて今は穏やかな表情を見せていた。

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最後のトップリーグ

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太陽は相変わらずグラウンドに眩しい光を注いでいた。

私は外に出た。

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次にここを訪れるのはおそらく秋。大学ラグビーが私達を迎えてくれる。

その頃には、

マスクを外しグラウンドの空気を吸い込めるだろうか。

友人達とビールを酌み交わしているだろうか。

ラグビー場

ここにいる間は『果てしなく息苦しい足踏み』の音を僅かに忘れる事ができた。

それは選手達も同じだったかもしれない。

サンゴリアスの目指した夢、それは、来年の新リーグで。ファンと共に歓喜を分かち合って。

だからこそ、早く取り戻したい。

芝生の緑、空の青、澄んだ冷気、ファン達で埋まる客席、高まる期待、緊迫した試合、どこか切ない試合後の余韻。

【当たり前の風景】を1日も早く。いつか必ず戻ってくる。

それを固く信じて、私達は今日も『果てしなくまた息苦しい足踏み』の中を生きる。

『ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです』『どういうことです、誠実さっていうのは?』『一般にはどういう事だか知りませんがね。しかし僕の場合には、つまり自分の職務を果たす事だと心得ています。』(カミュ作『ペスト』より)

〜あとがき〜

2月20日に開幕したトップリーグ2021は無事決勝まで行き着く事ができました。この間、苦痛を伴うPCR検査に毎週耐え、私生活をも厳しく制約された中、全力でラグビーに取り組んだ選手スタッフの皆様に、一ファンとして心から感謝申し上げます。

そしてパナソニックワイルドナイツの皆様優勝おめでとうございます。

開幕戦から書き始めた初心者観戦記、ついに決勝まで書き進める事ができました。この間試行錯誤を繰り返しながら、試合の空気感を再現すべく努力してきましたが、どこまでできたでしょうか。

この試合、強者と強者の一騎打ちは最後まで目が離せない展開となりました。素晴らしい試合を見せてくださったサントリーサンゴリアス、パナソニックワイルドナイツの皆様に心から御礼申し上げます。

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この一枚、流選手は、単に落ちてくるボールを待っているだけなのですが、この表情、このポーズが、なにかに祈っている姿にも見えて、シャッターを切りながら胸がいっぱいになりました。流選手の、サンゴリアスの夢は来シーズンに持ち越しとなりましたが、一途に夢を追える、そんな世界に早く戻ってほしいと願わずにはいられません。







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