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【3時限目】エセ現代写真論 講師:9215(エセ写真家)

今日は俺様が多忙な時間の合間を縫って、お前等に上から目線で、貴重なそして磨き抜かれた論考を授けてつかわすので心して拝聴するように。

ちなみにこの講義の準備には、俺様の貴重な時間を30分もさいている。時給千円の俺様の30分だぞ!午後一のコマだからと言って寝てたらしょうちしねえからな!

というわけで今日の結論!

扉画像にもあるこれ買って読め!

以上!

〝あ~疲れた……まったく!やってらんねーわ……さてと……帰るか〟

「先生!今、ネットで検索してみたら¥22000の値がついてますが?」

なんだとっ?

〝うかつだった……そもそも新版が出てるのに気づいたのが講義の下準備の時だった。値段まで確認してなかった。いやオークションサイトで確認したんだっけ……そこで中古でも¥13000の値付けを見て即旧版でいく!と決心したはずだった。旧版だったら¥6900って高っ!旧版もバブル価格か……〟

ふっふっふ、大丈夫だ……そんなこともあろうかとちゃんとバックアップも用意してある。

旧版でも問題なし。

これ買え!

いや旧版でもだいぶプレミア価格になっている。時給千円の俺様でも躊躇するぐらいだから見るからにボンBなお前達にとってはなおさらだ…

そんな時は図書館に行け!大概の図書館にはこれがあるはずだ。

何を隠そう俺様もこれに関しては貸し出し図書でしか読んだことがない。実のところ今回のこの講義の下準備も図書館のおかげによるものだ……

「先生……新版と旧版の違いを教えて下さい!」

だーーーーーかーーーーーーらーーーーーー!

〝新版は読んだことがねーんだよ!近隣の図書館にもねーんだ!察しの悪いお前達にこんな事言っても無駄か…〟

あのな、お前らが憧れるこの俺様が旧版でいくって言ってんだ。新版のことは忘れろ。これからクソ長い人生を生きるお前達にはいくらでも新版を目にする機会があるのだから今日のところはオレに付き合えっ!いいなっ!

では、来週のこの時間までにこの『現代写真論』(旧版)の中から好きな写真家、気になる写真家をピックアップしてなぜその写真家のその写真なのかをレポートにして提出するように。以上!

〝さて、今からだったらいったん休みにしといたバイトに間に合うな。はよ帰ろ!〟

「先生……まだ講義が始まって10分しか経過してませんが、こんなんで終わりにしていいんですか?……学長にいいつけますよ!」

〝うっ何だこの小生意気な学生は?学長に言いつけるだと?やれるもんならやってみ……さて、冷静になってみれば時給千円の俺様はついバイトが優先になってしまいがちだがよく考えてみたら非常勤講師の時給は¥2000だった。え~っと、10分で¥333で残り3時間バイトやるのと、のこり80分の講義を続けてそれからバイトいくのとどっちがお得か……よし!決めた!〟

このスライドに注目!

これは『ラット・ブリーズ・ルクセンブルク』の〝深みへ〟という作品だ。俺はこの作家を見つけただけでもこの本を読んで良かったと思っている。一番の拾いものだ。日本ではあまり馴染みのない写真家だ。著作権の関係でアーカイブに残せないのは残念だが作家の検索結果のURLはここに残すので後で見に行って欲しい。

さて、先ほど〝見つけた、拾いものをした〟などと表現したがまさにこの本はそういう使い方だと思う。大手ECサイトのこの本のレビューも「カタログ的な……」という表現が多い。

コンテンポラリーアートというくくりで様々な作家のさまざま作品が紹介されている。そん中から自分が好きな作品や、驚いた作品を見つけられればめっけもんだ。

だが、そもそもコンテンポラリーアートというくくりがよくわからんのだ。現代美術?いや絶対この写真家載ってるだろ!というのが無かったりする。しかも写真なんて商業的なものと作品との区分けも曖昧のような気がするし。

そもそも俺様もお前等も、ただ撮影するのが好きであって写真論なんてどうでも良いはずだ。だからこういった本で写真家の技術や世界観などまねしたくなったり参考になるものが見つけられればしめたもんだ。

いやそこまで行かなくても人が撮影したものを見ているだけで楽しい。この本はそんな使い方で充分だ。

ついでにこの本に導かれたきっかけも紹介しておく。

確かここで『現代写真論』(旧版)が紹介されていたのだ……と思って見返してみたがそのような記事がなかった。今から15年も前だ。当時この編集方針に沿ってだがここで紹介されていた写真家の系譜を頭にたたき込んだ。そして紹介されていた写真家の写真集を片っ端から図書館で見まくっていた記憶がある。その時にでも『現代写真論』を見つけたのかもしれない。

まったく写真家と言ったら篠山紀信や加納典明で写真雑誌(?)と言ったらGOROや平凡パンチしか知らなかった俺様にはこの体験は非常にエキサイティングものだった。ちなみにこの頃もデジタル全盛だったがこの俺様がフィルムカメラにどっぷりはまっていた時期だ。

特にこの時期に知ったこれは!と思った写真家はこちら!

ところで、写真は見るものであって語るもんじゃないからな。

間違っても俺様みたいに、キャバクラのキャスト相手に写真談義などするなよ!反応が薄くてなんの役にもたたんからな……

ただし金髪美人相手にこういった知識が役立つこともある。

だいぶ前だが俺様は大手オンライン英会話の受講生だったことがある。一番メジャーなところだ。もちろん最初は英会話の上達が目的だったのだが、写真やカメラいじりが趣味の講師を選んでいるうちに撮影技術の交換や写真談義が目的になってしまったのだ。もちろんフィルムカメラの情報交換も大きな目的に一つになった。ちなみに俺様は英語のほうはさっぱりだった。

一例をあげる。あるクロアチア出身の金髪美人だ。その講師の趣味の欄はもちろんArt,Photograpy,などにチェックが入っていた。自己紹介のビデオもいかにもアーティスト然としていた。

お互いの自己紹介をして驚いた。俺様はただのカメラ、撮影好きの好青年としてだが、講師の女性はなんと写真家でイギリスのウェストミンスター大学で写真撮影を教えているらしい。自身はローライだかの2眼の中判カメラ使いだ。英会話講師は片手間のお小遣い稼ぎのようだった。

そのうち女性は自身の写真集の解説を始めた。その撮影方法がちょっと変わっていた。イギリスのある古風な建物の二階でカメラを三脚により構える。そのファインダーの先にはちょうど交差点に停止した二階建てバスの窓が来るのだ。そこでシャッターを切る。被写体は撮られていることをまったく意識していないためその人物の素が撮影されるというぐあいだ。

その写真を何枚も見せられて俺様はついつぶやいてしまった。

〝Amazing!〟(シュバらしいですね!)

言ったそばからしまったと思った……ウソっぺ~。いや実際苦悩が表現されていたりして見事だと思ったのだが、いかんせん使い慣れてない英語のため、発した言葉は限りなくおざなりだった……に違いない。

俺様は慌ててつたない英語で付け加えた。

〝フィリップ=ロルカ・デコルシアの見知らぬ人をストロボを使って撮影したコンセプトと同じですね!〟

女性は

〝イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!イエス!Yes!〟

と何回言ったのかわからないくらいくらいイエス!を連発して同じくらい激しく頷いていた。女性講師のハートを鷲づかみにした瞬間だった。

そして俺様のほうは女性講師と同じ世代の木村伊兵衛受賞作家の『高木こずえ』を写真集『SUZU』をもって紹介したんだった。

諏訪の御柱祭のピントが合っていない写真のページを開いて、

〝なんでピントが合っていないかというと、被写体から想い起こされる記憶に向き合えないからみたいですよ〟

とかなんとか言いながら。女性講師は興味津々だった。


そう、そしてその後この女性講師は日本の女性写真家の〝リンコ・カワウチ〟をやたら連発していた。おそらく使用していたカメラが一緒だったからだと思う。

思えばこの授業はオンライン英会話での一番刺激的なものだった。

そして俺様はこう言った授業の際、必ずバストアップのマネキンを背景のどこかにわざと置いておくのが常だった。そのマネキンは撮影技術の向上に役立てていたものだ。つまりモデルだ。つるっぱげだが美しい顏をしている。女性講師の多くは必ずそれを目ざとく見つけて、詰まるところ大いにウケたのだ。

余談だがこのオンライン英会話つかえるぞ!写真繋がりだったのだが小説を書いているというサラエボの女性講師もいた。その時書いていた作品のネタを披露してくれたぞ。

またある時は、当時余り聞いたことのないグリッチ・アート(コンピューターのバグを利用したアート)のことが聞けたりして俺様にとっては大変お得感があった。英語の上達はさっぱりだったが。

さて、だいぶ脱線してしまったが、どうやらタイムカードが切れる時間が近づいてきたようだ。そして今回も内容が全く無い講義であることは百も承知だ。なんせインチキ写真家のエセ現代写真論だからな。

だが俺様はこのインチキやエセという言葉が大変気に入っている。インチキを究めたいのだ!もし今回のこの講義で一定の支持が得られるのなら次回は写真家の梅佳代もビックリの9215によるインチキ写真講座だ。怪しげな写真技術を伝授の予定だ!

ではアディオス!







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