ライブに「予習」は必要か?

この記事を読んでいる皆様は、ライブに足を運ぶ前に「予習」をしているだろうか?
予習とは、事前にライブに行くアーティストの映像やSNS上のファンのコミュニティでシンガロングする曲、コール、ペンライトの振り方、お決まりのコール&レスポンスなどの情報を得て、ライブ当日に備えることである。
その目的としてはライブ当日の演出をより楽しむことにあるのだが、この予習について私が以前から疑問に思っていることがある。

ライブ前の「予習」とは果たして本当に必要なものなのだろうか?

私がボカロPになる以前、あるコンテンツに熱中していたことがあった。
それが「バンドリ!」である。
バンドリとはブシロードが展開するメディアミックスで、アニメ、ゲーム、書籍のほか、出演声優が実際に楽器を演奏してライブを行うのが特徴だ。当時の私はゲームもそれなりにやり込んでいたし、アニメもリアルタイムで視聴し、勿論ライブにも足を運んだことがある。
既に離れて3年近く経つので現在の状況についてはわかりかねるが、声優ユニット中心のコンテンツというだけあって「コール」や「ペンライトの色、振り」といった「ライブにおいて観客が取るべきアクション」がファンコミュニティの間で暗黙の了解として曲ごとに細かく決められていた。
もちろんこれは限られたライブ映像を観ただけではわからないこともあるし、そもそも公式にアナウンスされているものではないので、SNSを活用していないファンにしてみればそのようなことがわからないままライブに行かざるを得ないのである。
しかしこれらを知らないままライブに足を運んだ結果、
「ペンライトの色を切り替えるタイミングが合っていない」
「コールが間違っている、コールしていない」
「お決まりのフレーズなのに、無反応な人がいる」
このようなことを言われてしまうのだ。
これでは既存のファンも初めてに来た人もライブを楽しめないだろう。
前置きが長くなってしまったが、私個人の意見としてはライブ前の予習などしなくても良いというのが結論だ。
そもそも、ライブは単なる「ファンの集い」ではない。
もしアーティストがそのような意図でライブを開催するとすれば、それは「ファンクラブ限定ツアー」だ。
ライブハウス中心のインディーズバンドならいざ知らず、ホールやアリーナ、ましてやドームやスタジアムクラスの会場で数千人から数万人規模のライブを行うアーティストの元には当然熱心なファンではない人も観客として足を運ぶことも想定しているだろう。
もちろん割合としてはファンの割合が圧倒的に多いだろうが、そうでない人の中にはライブ映像すら見たことがないということもあるだろう。
そのようなシチュエーションで先程のようなことを言われてしまっては、排他的な印象を与え、ファンどころかアーティストの好感度を下げてしまう可能性をはらんでいるのではないか。
私が思うに、そもそも予習をしてライブに足を運んだところで、コール&レスポンスのことで頭がいっぱいで肝心の歌唱や演奏、ライブならではの演出を純粋に楽しむことができなくなってしまうことにもなりかねない。
これでは本末転倒もいいところだ。
音楽フェスであれば相当な国民的アーティストでない限り、曲さえ知らない人がそのバンドのステージを見ていることもある。しかし彼らからレスポンスがなかったとしても、「コール&レスポンスがなっていない」などと言う既存ファンは皆無だろう。
それは音楽フェスが「気軽に色々なアーティストを一度に見られるイベントで、ファンではない人も当然のように推しのステージに足を運ぶことができる場だから」という共通認識があるからに他ならない。
どうか既存ファンの方々には、ワンマンライブでもこの思想を持ってほしいのだ。
ライブにだってファンではない人が足を運ぶことだってあるかもしれないのだから。

昨今チケット代の高騰が目につくが、私としてはライブというものは今よりもっと気軽に足を運ぶことができる場であってほしいと願うばかりだ。

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