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《短編小説集》なにがしかの話

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物語の半分はほろ苦さでできています
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#あの夏に乾杯

最後にあなたへ祈った夜の話

 ねぇ神様、この恋を実らせてくれよ。  困ったときの神頼み。いや、正確に言えば「頼って」なんかいない。おれとしては、むしろ挽回のチャンスを与えてやっているんだな。  なのにさ、神様ってヤツはことごとく裏切ってくれやがるんだよ、これが。 「ごめんね、ハジメは『可愛い弟』なの」  先輩女子にフラれたのが、大学2年のこと。 「すみません、私にとっては『兄』なんです」  後輩女子にフラれたのは、大学3年のころ。 「人としては大好きだけど……」  そして、大学4年の今日であ

陰口に憧れた彼女とウェイを叫んだ夜の話

「──うっさいよね」  向かい席に座るイチノセさんが、唐突にそんな一言を発した。僕が「うん?」と首をかしげると、彼女は天井に向けた人差し指を小さく回す。  仕切り越しに降ってきたのは、学生と思しき一団のお喋りだ。  ──「夏合宿さぁー、一発芸とかマジだるくない!?」  ──「いやアレねー! 俺も聞いててマジないと思ったわ!!」  ──「幹事長ってホント頑張りどころを間違ってるっつーかさ!」  宵闇に包まれた学生街の、安居酒屋。喧騒の七割、いや八割くらいは学生の会話で占