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《短編小説集》なにがしかの話

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物語の半分はほろ苦さでできています
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2020年4月の記事一覧

卒業前に留年生が未練を聞き届けた昼の話

 この大学とも、あと少しでおさらばだ。  卒業を目前に控えても、私のなかに惜別の情はとんと湧いてこなかった。4年間──そして、おまけの1年間。長く居すぎた、と思う。居たくて居るわけじゃない、と己にどれだけ言い聞かせたことだろう。 「残りの学生生活を楽しんでください」と内定先の人事から言われた憶えがあるけれど、やりたいことなんて特になかった。  ──「学生最後だし帰省しようかなって」  ──「卒業旅行どこにするー?」  ──「やっぱ卒業式は振袖でしょ〜!」  そんな会話