卒業前に留年生が未練を聞き届けた昼の話
この大学とも、あと少しでおさらばだ。
卒業を目前に控えても、私のなかに惜別の情はとんと湧いてこなかった。4年間──そして、おまけの1年間。長く居すぎた、と思う。居たくて居るわけじゃない、と己にどれだけ言い聞かせたことだろう。
「残りの学生生活を楽しんでください」と内定先の人事から言われた憶えがあるけれど、やりたいことなんて特になかった。
──「学生最後だし帰省しようかなって」
──「卒業旅行どこにするー?」
──「やっぱ卒業式は振袖でしょ〜!」
そんな会話