見出し画像

おすすめめのモニターヘッドホン(初心者から中級者向け)

音楽制作やレコーディングをする時には「モニターヘッドホン」があると便利です。

音楽を楽しく聴く時には自分の好きなヘッドホンを使っている人が多いと思いますが、「音楽を楽しく聴く時用のヘッドホン」(リスニングヘッドホン)は極端に低音域と高音域が強かったり、細かい音が聞き取れないものもあるため、「音楽制作用・レコーディング用」のヘッドホンと「リスニングヘッドホン」を分けているミュージシャンが多いです。

私もこれまで何台ものヘッドホンを買ったり試してみたりしてきましたが、その中で得られた失敗や教訓などもありますので、モニターヘッドホンの選び方とお薦めのモニターヘッドホンをいくつか紹介したいと思います。


◆モニターヘッドホンの選び方


音楽制作やオーディオエンジニアリングなどのプロフェッショナルな用途に使うなら、以下の点に注目すると良いでしょう。


◇音楽制作用に使うか、レコーディング用・楽器練習用に使うか

モニターヘッドホンを探す上で初心者が迷子になりやすい原因の1つが、ネットなどにある情報の多くが「音楽制作用」(作曲やミックス作業など)と「レコーディング用・楽器練習用」(録音時や練習時に演奏者が耳に付ける用)を区別せずに書いてあるという点だと思います。

例えば昔からあるヘッドホンでSONYの「MDR-CD900ST」という機種があるのですが、このヘッドホンの解説を見ると「古いのでさすがにもうお薦めはできない」という説明と「今でも十分に使える良いヘッドホン」という両極端の説明があったりします。

「MDR-CD900ST」は今でもレコーディングスタジオに「レコーディング用・楽器練習用」(録音時や練習時に演奏者が耳に付ける用)のヘッドホンとして置いてあることが多く、軽くて、丈夫で、壊れても交換部品が入手しやすいので、不特定多数の人に使ってもらう「レコーディング用」のヘッドホンとしては今でも使い勝手が良いです。


一発録りの緊張感が人気の「THE FIRST TAKE」でも多くのミュージシャンが「MDR-CD900ST」を付けていますが格好良いですよね。



他方で「MDR-CD900ST」は1989年に販売開始された古い設計のヘッドホンなので「音楽制作用」(ミックス作業など用)として考えた場合には、これ以外に新しくて現代風の音質に合わせたヘッドホンが次々と出てきているとう現状を踏まえ得ると、「音楽制作用」としては別のヘッドホンを選んだほうが良いという意見が多いと思います。

このようにヘッドホンを選ぶ時には

・主に「音楽制作」(作曲やミックス作業)で使うか

それとも

・主に「レコーディング・楽器練習」で使うか

のどちらでメインで使うのかを意識して選ぶと失敗の可能性が低くなると思いますし、レビューを見る時にもレビューを書いている人がどのような用途で使っているのかに着目すると迷子になりにくいと思います。


◇開放型、密閉型、セミオープン

「音楽制作」か「レコーディング・楽器練習」かにも関係する話ですが、ヘッドホンには

開放型

密閉型

セミオープン

という種類があります。

「開放型」はヘッドホンのハウジング部分(耳を囲う部分)に穴が空いていて音がヘッドホンの外に漏れるようになっているタイプです。

「開放型」のメリットは高音域がすっきりとしていて、装着感が良く長時間使っていても疲れにくい音質のものが多いです。

「開放型」のデメリットは音が外に漏れるのでマイクを使うレコーディングでは使えないです。(ヘッドホンから漏れるオケの音をマイクが拾ってしまうため)

「密閉型」はヘッドホンのハウジング部分に穴が空いておらず音がヘッドホンの外に漏れるようになっているタイプです。

「密閉型」のメリットは低音域が聞き取りやすいものが多く、音が漏れないのでレコーディングや楽器練習の際に安心して使うことができる点にあります。

「密閉型」のデメリットは、音が漏れないように強めに耳たぶを締め付けてくるものが多いので、長時間使っていると疲れやすかったり耳が痛くなりやすいものが多い傾向があります。

「セミオープン」は「開放型」と「密閉型」の中間とか、良いとこ取りしたものだと説明されることが多いですが、音が漏れるものが多いので「開放型」の一種だと考えたほうが分かりやすいです。


◇軽さ、大きさ、装着感

ヘッドホンを選ぶ上で意外に大事なのが「軽さ」「大きさ」「装着感」です。

ノイズチェックなどのために短時間しか使わないのであれば重くても問題ないのですが、音楽制作やレコーディングで「重い」ヘッドホンを長時間付けていると、肩や首に負担がかかかって「肩コリ・首コリ」の原因になります。

またヘッドホンの中には耳を強く締め付けてくるタイプのものもあります。

締め付けが強いヘッドホンはレコーディングやライブなどで使う場合には「外れにくい」というメリットもありますが、長時間の音楽制作で使う場合にはストレスになるので注意が必要だったりします。

プロのエンジニアさんにはヘッドホンをほとんど使わない人も多いですが、それは肩や首、耳に出来るだけ負担をかけたくないという理由もあると思います。

ただアマチュアミュージシャンがあまり大きな音が出せない環境で音楽制作や録音をする際には、どうしてもヘッドホンの力を借りる必要が出てくることが多いので、それであれば可能な範囲で軽くて装着感の良いヘッドホンを使ったほうがストレスは小さいです。

重さはメーカーが公表している仕様を見ると分かりますが、装着感は各人の耳の大きさや体格によっても変わってくるのでお店などの展示品を実際に耳に付けて試してみるのがお薦めです。


◇音質

言うまでも無い点ですがモニターヘッドホンを選ぶ上で自分の好みや用途にあった「音質」かという点も重要です。

「音質」は一般的に「周波数特性」(高音域が強いor低音域が強いなど)のことを意味していることが多いですが、その他にも「過渡応答」(音を出す振動板が必要な時に瞬時に停止できるか)や、「SN比」(ノイズの割合)、「ダイナミックレンジ」なども、音の「良い悪い」といった印象に影響してきます。

「過渡応答」「SN比」「ダイナミックレンジ」などは、実際に買ってみて自宅で長時間使ってみて初めてその良さが実感ができることも多いので、最初のうちは「良く分からない」ということもあると思います。

他方で「周波数特性」はその違いが分かりやすいので、それまでに自分が使ってきたヘッドホンによって「良し悪し」の判断が影響を受けやすいので、最初のうちは「周波数特性」が「フラット」と言われているヘッドホンを使ってみるのがお薦めです。

ちなみにSonarworksの「SoundID Reference for Headphones」というパソコン用のソフトウェアを買うと、様々なヘッドホンの周波数特性を「フラット」に近い状態に変換できます。

自分が持っているヘッドホンの音質が「合わないな」と感じた時には、別のヘッドホンをあれこれと買う前に「SoundID Reference」で補正を掛けてみるというのも解決策として試してみる価値があります。

また「SoundID Reference for Headphones」を持っていると各メーカーの様々なヘッドホンの「周波数特性」のデータを見ることができます。

ヘッドホンを購入する際に、どのような周波数特性を持っているかの参考にもなるので、その点でも「SoundID Reference」が手元にあると便利だったりします。

《Sonarworks SoundID Reference対応ヘッドフォン・モデル一覧》


◇ケーブルの着脱の可否、交換部品の入手のしやすさ

ヘッドホンを長く使おうと考えている人とっては、ケーブルの着脱の可否、交換部品の入手のしやすさなども重要だったりします。

ヘッドホンを使っていてケーブルが断線してしまったり、イヤーパッドがボロボロになってしまたりしたという経験がある人もいると思います。

こういった時にケーブルの着脱が可能で交換用のケーブルが別売りされている製品であれば本体を買い直さなくてもケーブルだけ買えば簡単に修理ができすし、イヤーパッドの交換品が販売されている機種であれば消耗を気にすることなくヘビーに使うことができたり、自分の好みにイヤーパッドに交換できたりします。


◇音の大きさ、インピーダンス

ヘッドホンの中にはスマートフォンなどの出力の小さいデバイスに繋いだ時に大きな音量が出ないものがあります。

例えば有名なヘッドホンの中ではAKGの「K240」という製品は音量が小さめです。

個人的には音量が出ないヘッドホンのほうが耳を痛めないというメリットがあるので良いと思っていますが、「爆音が正義」というタイプの人は注意が必要です。

またbeyerdynamicなどの一部のメーカーからはインピーダンスが250Ω程度と非常に大きいヘッドホンが販売されていますが、インピーダンスが極端に高い製品は業務用機器がのあるレコーディングスタジオなどで使われる用途で販売されているので、自宅で使う場合にはインピーダンスが高すぎるものは避けたほうが無難です。

必ずしも「インピーダンンスが大きい → 音が小さい」という関係が成り立つとは限らないのですが、一般的にはインピーダンスが高すぎると音が小さくなる傾向があるので、スマホなどでも使いたいという場合には80Ω以下のものを選ぶと良いと思います。


◇有線か無線(ワイヤレス)か

最近はワイヤレスのヘッドホンでも音質が良いものが増えてきていますが、「音楽制作」や「レコーディング・楽器練習」で使う場合には、現在でもも「有線」(物理的にケーブルで繋ぐタイプ)のほうが無難です。

ワイヤレスはケーブルの煩わしさから解放されるというメリットがありますが、以下のようなデメリットがあります。


・ オーディオインターフェイスのDACが使えない

ワイヤレスのヘッドホンの大きなデメリットは手持ちのオーディオインターフェイスのDACが使えないという点だと思います。

DAC(デジタル・アナログ・コンバーター)は、DAWなどのデジタルの音声信号をアナログに変換するための機器のことで、オーディオインターフェイスの中には比較的高品質なDACが入っていることが多いです。

しかしワイヤレスのヘッドホンを使う場合にはヘッドホンの中に入っているDACが使われることになり、オーディオインターフェイスのDACを使うことができません。

そのため一般的にはワイヤレスよりも有線のヘッドホンを使ったほうが音質的に有利なことが多いです。

・ DAWでワイヤレスヘッドホンが使えないことも多い

お使いの環境にもよりますがDAWは1台の入出力機器しか扱えないことも多く、DAWの出力でワイヤレスヘッドホンを使おうとすると、入力でオーディオインターフェイスが使えないというケースがあります。

・ ワイヤレスヘッドホンは性能と比較して価格が割高になり、重くなる傾向がある

「ワイヤレスヘッドホンは音が悪い」と言われることがありますが、実際には最近のコーデック(音声を無線伝送する際に使用するデータを圧縮変換する方式)は非常に優れており「ワイヤレスだから音が悪い」ということはありません。

ではなぜ「ワイヤレスヘッドホンは音が悪い」と言われることがあるのでしょうか?

それは単純に「製造コスト」の問題が大きいです。

ワイヤレスのヘッドホンは、「ドライバー」(音を出す心臓部)以外にも、「DAC」(デジタルの信号をアナログに変換するための装置)、ワイヤレスの信号を受信するために「レシーバー」、「バッテリー」・・・・など、有線のイヤホンよりも多くの部品が必要になってくるため、コストも高くなりますし、重くなりがちです。

他方で有線のヘッドホンは「ドライバー」(音を出す心臓部)にコストの大部分を費やすことができるため、同じくらいの価格帯で比べると、どうしてもワイヤレスよりも有線のほうが性能は高くなってしまいます。

そのため限られた予算の中で出来るだけ「音が良い」ものを選ぶのであれば、ワイヤレスよりも「有線」を選んだほうが満足度は高くなる傾向があります。

・ トラブルやレイテンシーが発生することがある

ワイヤレスは便利で私も家事をしながら音楽やYoutubeを聴くときに使うこともありますが、ワイヤレスは急に繋がらなくなる、急に落ちる、プツプツとしたノイズが入る、などのトラブルが生じることがたまにあります。

レコーディングの最中に急に音が聞こえなくなったり、プチノイズが入ったりすると演奏者のテンションが下がってしまうので、こういった点でも有線のほうが安心感はあります。

以上の点も踏まえた上で、おすすめのモニターヘッドホンを「音楽制作用」と「レコーディング用・楽器練習用」に分けていくつか紹介したいと思います。


◆おすすめのモニターヘッドホン「音楽制作用

作曲、ミックス作業などの「音楽制作」の用途でのおすすめのモニターヘッドホンです。

◇YAMAHA ( ヤマハ ) / HPH-MT8

・密閉型
・オーバーイヤー
・350g (ケーブル、プラグを含まず)
・ケーブル着脱可能
・ケーブルはストレートとカールの両方が付属

小さい音量でも音の把握が容易で、作曲家やエンジニアさんの中で比較的人気が高いのがYAMAHA「HPH-MT8」です。

3万円以下で買える価格でありながら音の解像度、分離が良く、他のヘッドホンでは聴こえなかった音が「聴こえる」と感じることが多く、音量を上げなくても作業ができるので耳にも優しいです。

昔スタジオなどに「テンモニ」と呼ばれる定番のヤマハのモニタースピーカー(NS-10M)が置いてあることが多かったのですが、こちらの「HPH-MT8」は「テンモニ」と似たような周波数特性で高域がすっきりとしていて、低域が少なめです。

ただ低域が少な目と言っても全く出ていない訳ではなく、むしろ低域が抑えられていることで50Hz程度の超低域の音も耳を澄ませば他のヘッドホンよりも把握しやすかったりもします。

自宅に大きめスピーカーやウーハーがあって低域はスピーカーで確認できるような人であればヘッドホンで低域のチェックをすることはあまりないと思いますので「HPH-MT8」は良い選択肢だと思います。

他方で「小さめのスピーカーしか持っていないので低域はヘッドホンで確認したい」という人にとっては、低域が抑え目の「HPH-MT8」は少し使いづらいと感じるかも知れません。

あと「HPH-MT8」は1kHzが若干盛り上がっていてボーカルの声が少し大きく聞こえます。

そのため「HPH-MT8」を使ってミックスをすると他の環境で聴いたときにボーカル小さくなってしまうことがあるので、この点は慣れが必要だと思います。

重さは350g (ケーブル、プラグを含まず)と重めで、音の解像度が高く情報量が多いので長い時間使っていると疲れやすいです。

やや大き目ですが折りたたみ可能で、ポーチも付属するので持ち運びは楽です。

ケーブルは取り外し可能なので万が一断線した時もケーブルを簡単に交換することができます。

買った当初からストレートとカールの2本のケーブルが付属するのも有り難いポイントです。


◇FOCAL ( フォーカル ) / LISTEN PRO

・密閉型
・オーバーイヤー
・インピーダンス:32Ω
・280g
・ケーブル着脱可能
・ケーブルは5m OFCカール・ケーブル / 1.4m マイク付きリモコン・ケーブルが付属

作曲家の方などに人気なのがFOCAL ( フォーカル ) の「LISTEN PRO」です。

FOCALはスピーカーが有名なメーカーで、レコーディングスタジオにも数十万円から百万円程度するような高額なFOCALのスピーカーが置いてあることも良くあるくらい、信頼性の高いメーカーです。

さすがFOCALが作ったヘッドホンということもあり音質は良く、落ち着いたサウンドなので聴いていて疲れにくいです。

良く言えば「聴いていて疲れない厚みのある音」という印象ですが、ドンシャリサウンドが好きな人にとっては「インパクトのないつまらない音」と感じるかも知れません。

またFOCALはフランスの会社であるからかも知れませんがデザインもお洒落で「持っているだけで創作意欲が上がる」という人もいると思います。

装着感も良いですが人よっては側圧が強いと感じる人もいるかも知れません。

ケーブルは着脱可能で、専用のハードケーブルが付いてくるので持ち運ぶ時も安心感があります。


◇audio technica ( オーディオテクニカ ) / ATH-R70x

・開放型
・インピーダンス:470Ω
・210g
・ケーブル着脱可能
・ケーブルは約3m、ストレートコード

日本を代表するオーディオメーカーが販売しているプロ用の「ATH-R70x」は、装着感が非常に良く圧迫感も強くないので、長時間使っていて疲れにくいヘッドホンです。

オーディオテクニカの製品はヘッドホンに限らずマイクなども非常にコストパフォーマンスが良いものが多く、同じ価格帯で比べると他社の製品よりも性能が良いというものが多い・・・のですが最近値上げしてしまいました。

この「ATH-R70x」も費用対効果を抜きにしても性能が非常に良く、「ファイナルファンタジー14」の制作の方が使っているということでも有名ですし、レコーディングエンジニアの方の中にも「ATH-R70x」をお薦めしている方もいます。



開放型にしては低音域もしっかりと出おり周波数特性は最近のローを作り込む音楽にも十分に対応できると思います。

高音域は少し大人しい感じで「モニターヘッドホン」というような音ですが、高音域が優しくて刺さらないせいか、半日くらい付けっぱなしで作業していてもあまり耳が疲れません。

「SoundID Reference for Headphones」で「ATH-R70x」のプロファイルを読み込んだ上で「Flat」を選ぶと高音域が少し持ち上がり、リスニング用のヘッドホンとしても気持ち良く聴くことができました。

インピーダンスが470Ωと極端に大きいので、ご自身の機材のヘッドホン出力が弱いと音が小さい(鳴らしきれない)と感じる人もいると思います。

前記のYAMAHA「HPH-MT8」のほうが価格は安く、「HPH-MT8」も性能が良いので、予算、周波数特性の好み、装着感や重さ、音が漏れても良い環境下などで判断が分かれるところかなと思います。

個人的は「HPH-MT8」よりも「ATH-R70x」の周波数特性のほうが癖が少なく、疲れにくいと感じています。



◇Austrian Audio「Hi-X65」

・開放型
・インピーダンス:25Ω
・310g
・ケーブル着脱可能
・ケーブルはストレート、3Mと1.2Mが付属

「もっと高い価格でも良いから、より良いサウンドが欲しい」という人はAustrian Audioの「Hi-X65」を選択肢に入れてみても良いと思います。

高音域がしっかりと聞こえていながら「超低域」と言われるような低音域もしっかりと良く聞こえるバランスと性能が良いヘッドホンです。

Austrian Audioの製品ははAKGに在籍していたエンジニアによって作られているということで有名で、伝統的な技術と最新技術を融合した品質の良い製品を次々と生み出しているため、プロのエンジニアの方や作曲家の中でも使用者が増えています。



◇beyerdynamic ( ベイヤーダイナミック ) 「DT1990PRO」

・開放型
・インピーダンス:250Ω
・370g
・ケーブル着脱可能
・ケーブルはストレートとカールの両方が付属

日本国内ではあまり馴染みのないメーカーですが海外のスタジオなどで良く採用されているのがベイヤーダイナミックのヘッドホンです。

世界的に有名なプロゲーマーもベイヤーダイナミックのヘッドホンを使っていてて一時人気になっていたこともありました。

そのベイヤーダイナミックのプロ用モデルが「DT1990PRO」です。

もともとスタジオなどで使うために販売されているモデルですがモニターヘッド本の中ではやや派手目なサウンドがするのでリスニングヘッドホンとして使っている人も多い印象です。

開放型なので高音域の表現力はもちろん良いのですが、低音域もしっかりと出てくれる印象です。

重量は重めですが、ヘッドバンドがしっかりしているためか装着感は悪くないほうだと思います。

「他のヘッドホンの音がおとなしく感じてしまって物足りない」という人は「DT1990PRO」を選択肢に入れるのも良いと思います。

デメリットはインピーダンスが高めなのでそれなりに駆動力のあるオーディオインターフェイスやヘッドホンアンプが必要なる点と、国内では視聴できるお店が少ない点だと思います。


◇AKG「K702」「K712」

AKGの「K702」や「K712」は本来はリスニング用のヘッドホンですがを作曲やミックス作業に使っている人もいます。

AKG「K712」
・開放型
・インピーダンス:62Ω
・298g
・ケーブル着脱可能
・ケーブルはストレートとカールの両方が付属

AKGの「K702」や「K712」は、とにかく装着感が良く、ヘッドホンでありながらも空間的な広がりがあり、閉塞感が少ないので、長時間付けていても疲れにくいのがメリットです。

「K702」は高音域が華やかなサウンドですが個人的には「耳に痛い」と感じることが多く、音楽制作の用途としては低音域の音も見えずらいので、使用頻度が少なくなってしまい売ってしまったヘッドホンの1つです。

ただ「K702」は元々はAKGのフラッグシップモデルとして10万円近く価格で販売されていた性能の高い機種で、その華やかなサウンドはファンも多いので、高域の華やかさが耳に合う人にはとっては良いヘッドホンだと思います。

「K712」は価格が若干高くなりますが、低音域がしっかりと聞こえますし、音楽制作の用途で使うのであれば「K712」のほうが扱いやすいと思います。

AKGのウェブサイトにも「K712」はミックス用途にもお薦めと書いてますね。

K712Proは、一般的なリスナーはもちろん、プロのエンジニア/プロデューサーがサウンドを掘り下げて、精緻なミキシングを行う用途にも満足できます。

Harman International Industries, Incorporated
https://jp.akg.com/K712PRO.html

円安や資源不足の影響で音楽機材の価格がどんどんと高騰していく中でAKGのヘッドホンやマイクは価格があまり変わっていないか、時期によっては安くなっていることもあるので、コスパ重視の方にも魅力的だと思います。



◇TAGO STUDIO 「T3-01」

・密閉型
・インピーダンス:70Ω
・321g (ケーブル、プラグを含まず)
・ケーブル着脱可能

群馬県高崎市のTAGO STUDIOが開発に携わった「T3-01」も業界の中で評価の高いヘッドホンの1つです。

レコーディングエンジニア、アーティストの要望や意見を集めて開発されたということもあり音質が良いのは当然のことながら、使い勝手や装着感も良い製品です。

木の温かみのある見た目も良いですが、「ナチュラルサウンド」と謳っているヘッドホンということもあり、温かみのあるサウンドが特徴です。

間違いなく良い製品ですがモニターヘッドホンとしてはやや高額な部類で、好みの合う合わないもあると思いますので、試聴してから買うかどうかを決めたほうが良いと思います。


◆おすすめのモニターヘッドホン「レコーディング用・楽器練習用」

楽器の録音時に演奏者が装着する目的や、楽器の練習用途でのおすすめのモニターヘッドホンです。

◇Audio-technica 「ATH-M」シリーズ

ATH-M50xの場合
・密閉型
・インピーダンス:38Ω
・285g
・ケーブル着脱可能
・1.2mカールケーブル、3.0mストレートケーブル、1.2mストレートケーブルが付属

初心者におすすめしやすいのがAudio-technica 「ATH-M」シリーズです。

「ATH」シリーズは価格帯ごとにATH-M20x、ATH-M30x、ATH-M40x、ATH-M50x、ATH-M60x、ATH-M70xと様々なラインナップから選べるので、予算や用途に合わせて自分に合ったものを選択したり、自分の成長の度合いに応じて徐々のグレードアップしていくことができるのがメリットです。

一番メジャーなのがATH-M50xで楽器演奏時やノイズチェック用のモニターヘッドホンとして使っている人も多いです。

「ATH-M」シリーズは日本メーカーらしく良く言えば全般的に「万能型」「平均型」の優等生タイプといった印象ですが、人によっては「個性がない」「つまらない」と感じる人もいると思います。

音楽を作っていくという過程の中でとにかくスタンダード・平均的で無難なものを使いたいという人にとっては合うと思います。

「ATH-M50x」は限定で色違いが販売されていることも多く、配信などで見た目にこだわりたい人にとっても魅力的だと思います。


次々とヒット曲を作り出して居るYOASOBIのAyaseさんも以前にaudio-technicaの「ATH-M40x」というコストパフォーマンスの良い安価なヘッドホンを使っているというツイートをして話題になっていました。

高額な機材を揃えなくても、才能と努力で良い音楽を制作されているのは本当にカッコいいなと思います。



個人的にオーディオテクニカのヘッドホンは好きですが、自分が使うと数年で壊れてしまうことが多くて、過去には何度も買い換えていたことがあります。

レビューを見ていても壊してしまったという書き込みが散見されます。

丁寧に扱っていれば大丈夫かも知れませんがスタジオなどで荒っぽく使う人は、後記のSONYのヘッドホンのほうが壊れにくく、壊れても修理しやすいので、そちらのほうが良いかも知れません。



◇SONY ( ソニー ) /「MDR-CD900ST」「MDR-7506」「MDR-M1ST」

日本国内で「モニターヘッドホン」として定番化しているのがソニーのヘッドホンです。

モニター用に使われることが多いのが「MDR-CD900ST」「MDR-7506」「MDR-M1ST」の3機種ですが

・いれも軽くて長時間着けていても肩・首がこりにくい

・コンパクトなので保管、持ち運びが楽

・交換部品が入手しやすい

等のメリットがあります。

デメリットとしては

・装着感は良くない(と言う人が多いし、私もそう感じてます)

・イヤーパッドが経年劣化でボロボロになりやすい

などがあります。

以下、機種ごとに詳しく説明します。

「MDR-CD900ST」


・密閉型
・インピーダンス:24Ω
・215g
・ケーブル着脱可能
・ストレートケーブルが付属
・ステレオ標準プラグ

お薦めの「モニターヘッドホン」として良く挙げられることが多いのが「MDR-CD900ST」で、ハウジング部分に赤いシールが貼ってあるので、昔は「赤帯」などの愛称で呼ばれていることもありました。

機種名に「CD」という名前が付いているとおりCD(コンパクトディスク)の普及に合わせてCDの高品質なサウンドが再現できるヘッドホンとして開発されたという経緯があるようで、歴史の長い機種です。

販売開始は1989年とかなり古いですが40年以上もの間、定番のモニターヘッドホンとして売れていることからしても、その性能・品質の良さとコストパフォーマンスの高さが分かると思います。

現在でもレコーディングスタジオでは演奏者用のヘッドホンとして複数台の「MDR-CD900ST」が備え置いてあることが多く「FIRST TAKE」でもボーカル用のヘッドホンとして使われていることが多いです。

音質は高域が強めで「高域がシャリシャリする」「耳に少し痛い」と感じる人も多いと思います。

アナログの再生機器や録音機器は高域が減衰していく傾向があったため昔の環境では高域の強い「MDR-CD900ST」はちょうど良かったのかも知れません。

高域が痛いと感じる人は「MDR-7506」用のイヤーパッドや、ヤクシーのイヤーパッドに交換すると高域が若干マイルドになり扱いやすく感じると思います。

現在では作曲やミックス作業用途で「MDR-CD900ST」を使う人は少ないですが、高域が強めという特性からノイズを見つけやすく、ノイズチェック用としては現在でも優秀だったりします。

モニターヘッドホンとしてや安いほうなので雑に扱っても気にならないのと、見た目の割には頑丈で壊れにくく、壊れてもほぼ全てのパーツについて交換部品が入手できるので長く使おうと思えばずっと使えるというメリットがあります。

注意点としては端子が大き目の「ステレオ標準プラグ」なので、スマートフォンなどに小さい端子に繋ぐ際には変換プラグが必要になります。

楽器屋さんやネットで「定番」として紹介されることも多いですが、設計が古く、クセのあるヘッドホンなので、気になっている人は試聴してから買うかどうかを決めたほうが良いと思います。


「MDR-7506」


・密閉型
・インピーダンス:63Ω
・230g
・ケーブル着脱 不可
・カールコード
・折りたたみ可能
・ステレオミニプラグ、変換プラグ付属

初心者に「MDR-CD900ST」よりもお薦めなのが「MDR-7506」です。

「1万円前後でモニターヘッドホンが欲しい」という人には個人的には「MDR-7506」をお薦めすることが多いです。

もともと海外で販売されていたモデルで「MDR-CD900ST」よりも周波数特性にクセがなく、レコーディング用途としてだけでなく、作曲やミックス作業で使ってもあまり違和感はないと思います。

小さく折りたたむことができ、カバンなどに入れて付属するキャリングポーチで持ち運ぶことが可能です。

端子もステレオミニプラグなのでそのままスマートフォンなどに繋ぐこともできますし、付属の変換プラグを使えばステレオ標準プラグ規格のオーディオインターフェイスなどに繋ぐこともできます。

注意点としてはケーブルがカールコードで着脱ができないようになっているので、カールコードが苦手な人にとっては選択肢に入れにくいかも知れません。

また個人的には気になりませんが音量がやや小さ目なのでヘッドホンを爆音で聴くのが好きな人には物足りないと感じるかも知れません。

(耳は消耗品なので控え目な音量で聴く習慣を付けたい人にとっては逆に良いのかも知れません。)

「MDR-M1ST」


・密閉型
・インピーダンス:24Ω
・215g
・ケーブル着脱可能
・ストレートケーブルが付属
・ステレオ標準プラグ

「MDR-M1ST」は比較的新しく開発されたヘッドホンで現代のサウンドに合うように「低音域」がしっかりと聞こえる周波数特性になっています。

個人的に「MDR-M1ST」は使用頻度が多いヘッドホンでギター練習をする時やヘッドホンで音楽鑑賞をする時にも使うことが多いです。

低音域がしっかり聞こえるといってもドンシャリではないので「MDR-M1ST」を長時間使った後にモニタースピーカーでのミックス作業に戻っても違和感がないのがメリットだと思っています。

人によっては「こもった音」「ラジオっぽい安っぽい音」と感じる人もいると思いますので、初めて使った時には良さが分かりにくいヘッドホンでもああります。

個人的に好きなヘッドホンですが同じくらいの価格帯で他にも良いヘッドホンはいくつかあるので、全力でお薦めするといよりも、好みが合えばハマる可能性があるという立ち位置のヘッドホンだと思います。


◇AKG「K240 Studio」「K271」

初心者にお薦めのヘッドホンとしてAKGの「K240 Studio」や「K240MK2」が紹介されていることが多いです。

AKG/ K240
・セミオープン型
・インピーダンス:55Ω
・240g
・ケーブル着脱可能
・「MK2」にはストレートとカールコードの両方が付属


AKGの「K240」は個人的には大好きなヘッドホンですし1台目のヘッドホンとしては良い買物だと思いますが、おそらく多くの人は「K240」では満足できずに、より上位機種のヘッドホンが欲しくなると思います。

「K240」は非常に大人しい落ち着いたサウンドで装着感が良く、長時間使っていても疲れないのがメリットです。

個人的には1日中「K240」で音楽を聴いていても平気だったりします。

ただ「K240」は元々古い設計のヘッドホンをベースにした機種なので高音域と低音域が弱く、解像度も低めなので「他のヘッドホンやスピーカーでは聞こえる音がK240では聞こえない」ということが多々あります。

リスニングヘッドホンとして使うにはとても良い機種だと思いますが、モニターヘッドホンとして考えた場合には、他にもっと新しくて良い機種が沢山あるというのが現状だと思います。

そのため同じAKGで「レコーディング用・楽器練習用」を探す場合には「K2
71」なども選択肢に入れても良いと思います。


◇ROLAND ( ローランド ) / RH-300

・密閉型
・インピーダンス:40Ω
・250g
・ケーブル着脱 不可
・ストレートとケーブル

円安で海外メーカーの機材の価格が高騰する中、相対的に日本メーカーの製品のコストパフォーマンスが良くなってきています。

先ほど紹介したオーディオテクニカもそうですが、ローランドの製品も安くて品質が良い製品が多いです。

その中でもROLAND の「RH-300」は「MDR-CD900ST」の使いづらい部分を「後出しジャンケン」的に解消した製品という感じで、楽器演奏のモニタリング用として無難で、装着感も使い勝手も良いです。

周波数特性もややドンシャリですが900STのような高域のクセがなく、好みに合えばリスニング用や普段使いとしても使えるヘッドホンでもあります。

端子もアダプターが付いてくるので、そのまま標準フォン端子とミニプラグの両方に対応できるのも便利です。

◇TAGO STUDIO 「T3-03」

・密閉型
・インピーダンス:70Ω
・約260g(ケーブル含まず)
・ケーブル着脱 可能 (1.2mと3mが付属)

先ほど紹介したTAGO STUDIO 「T3-01」のナチュラルなサウンドをベースに、より軽く、音の距離感を近くして楽器演奏時に使いやすいのが「T3-03」です。

装着感は緩めでクセの少ないヘッドホンなので、ナチュラル系サウンドのヘッドホンを探している人は選択肢に入れてみると良いと思います。


◇CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CPH3000

・密閉型
・インピーダンス:18Ω
・165g
・ケーブル着脱不可
・ストレートケーブル

「演奏者用にモニターヘッドホンを大量に揃える必要があるけれどもお金がない」というピンチの時に選択肢となりうるのがCLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / 「CPH3000」です。


このヘッドホンや価格が安い割に音質がしっかりていて、低音域もしっかりと聞こえるので、少ない予算でヘッドホンを複数台用意しなければいけなくなった時に便利だったりします。

プロのミュージシャンの方もYoutubeでお薦めされてました。

「CPH3000」はカラーバリエーションも豊富で

「CPH3000」にはデメリットがいくつかあって1つはイヤーパッドが外れやすく、しかも一度外れると付けるのにコツがいるという点です。

この点については↑の動画で原朋信先生が解決方法を提示されていますが、イヤパーッドのフチの部分をビニールテープでグルグル巻くという方法があります。

「CPH3000」にはデメリット2つ目はケーブルが細くて短いという点です。

スマホなどに繋ぐ分にはちょうど良い長さなのですが録音などで使うには明らかに短いので延長用ケーブルと変換プラグが必要になります。

「CPH3000」にはデメリット3つ目は低音域が強めにチューニングされている点です。

曲によっては低音域が割れているように聞こえることもあります。

「レコーディング用・楽器練習用」として使う分はロー(低音域)の成分が見えやすいというメリットもありますが、作曲やミックス用途で使うのは辛いかな、という印象です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?