家で一人の時に窓を開けたら怖い目にあった話

窓を開けるとカラスとインコが飛び込み、音で追い払おうとしたが手頃な音が出る物が私の尻しかなかった為、己の尻を打ち鳴らしながら鳥二羽と狭い室内で乱痴気騒ぎを起こす事となった。

正気の沙汰とは思えぬ光景になってしまった。
字面だけならば「人間と鳥達」というディズニープリンセスを彷彿とさせるものであったが、視覚情報では決死の形相で己の尻を叩き続ける人間とカラスとインコであるので、プリンセスに並ぶ事は許されなかった。

格闘の末、インコは押し入れに、カラスは説得の末に帰宅して頂く事に成功した。
インコに更なる負担がかからぬよう、落ち着くまで押し入れを少し開けた状態にして休ませた。
ややあって、そっと隙間から押し入れを覗くと、同じように顔を半分だけ覗かせこちらを伺っているインコと目があった。

こんなにインコと見つめ合ったのは初めてであった。しばしの沈黙の後
「……ジュビジュバ」
と呟き、こちらに正面を向けたまま横にスライド移動し物陰に消えていった。

とりあえず動物病院に連絡したが
「押し入れに青いインコがいるんですが、どうしたらいいですか?」
などと「押し入れにドラえもんが湧いたのでどうしたらよいか」と訊かれるくらいに対処の困る問いかけとなった。
看護師も混乱したのか
「……青い……ネコ?が、押し入れに?」
と、聞き返し、若干ドラえもんに意識を引っ張られているようであった。

保護に必要なカゴなどを買いに行きがてら動物病院へ寄ると伝え向かうと、道中に明らかに道に迷っている心許ないオヤジが佇んでいた。
迷い鳥だけでも手に余るというのに迷いオヤジまで現れてしまった。

オヤジの目的地が反対方向であったので、動物病院へ行った後に案内する事にした。

動物病院では、電話応対した看護師によって
「やーこさんが押し入れから出てきたインコを連れて来ます」
と伝えられ、獣医師が「また何か拾ったか……」と身構えていたところ、私がインコではなくオヤジを携え現れた為に獣医師に戦慄が走った。
押し入れに出たものが「オヤジのようなドラえもん」ならばまだ許されるが、「ドラえもんのようなオヤジ」は駄目である。
カゴと応急処置はなく檻と法的措置が必要な事案と化す。

そんな獣医師の内心の衝撃など露知らず、インコの保護の仕方を訊き病院を後にしたが、終始誰もオヤジの事には触れず、オヤジも黙って獣医師を見つめていた為、獣医師達の精神にしばらく謎のオヤジの存在が後を引く事となった。

押し入れでインコを一時間程ねかせた後、再度オヤジではなくインコを連れて動物病院へ向かった。
怪我の有無などを調べてもらいつつ迷い鳥の問い合わせはないかと訊いたところ、今の所問い合わせもなければ、インコは特徴的なものがなければ飼い主の元へ戻るのは難しいかもしれぬという。
迷って来たのならばインコも飼い主が恋しいであろうし、飼い主も気が気でない事だろう。静まり返り、心を痛ませてたところ

「おほほほほほほほほほほほほほ」

と、唐突にインコが笑い出した。
突然強めな特徴が出てきた。
どこかのマダムがインコに転生したかのようであった。

その後、迷い鳥のポスターを出すと、飼い主を名乗る者から問い合わせが来た。
電話口で笑う声を聞き、このインコの飼い主はこの者で間違いないと確信した。

その後、インコは飼い主の元へ無事に戻ったが、しばらく笑い声が耳に残った。


【追記】
その後、獣医師は
「オヤジを拾ってくるとは思わなかった。オヤジはうちでは無理です」
と、私に語り、その背後でいつもの看護師が悶え苦しんでいた。

【インコの保護について】

※下記に詳しい保護の仕方のURL記載。

今はインターネットなどでも拡散がきく世の中であるので見つかる事も多いが、その反面飼い主でもないのに売る為に名乗り出てくるケースもあるようである。
(その為、ポスターにはインコの性別や「おほほほほ」の件は細く書かず、「鳴き方に貴婦人の風情あり」と書かせて頂いた)
連絡があっても、すぐに引き渡さずインコの特徴を飼い主に言って貰うなどして最後まで慎重さを欠いてはならない。
また、家での保護が難しい場合は、動物病院やペットショップなどに相談してみるとよい。

どうか動物達が自分の家族と無事に再会できる事を、心から願っている。

【参考資料】
○Pets Smile newsさんより(保護の仕方)
https://psnews.jp/small/p/52211/


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