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2日目 佐多岬に向かう

お世話になったライダーハウスを出発して鹿屋市内を抜けて佐多岬に向かった
しばらくは昨日自転車の修理のために往復した道を進む
天気予報通り霧雨が降り出した
コンビニに寄り雨具を取り出す
登山用具も積んだ重装備なので店の前では目立つ
買い物に立ち寄った客に声を掛けられたりする
これはこれで楽しい
ペットボトルのお茶を飲みおにぎりを食べる
錦江湾を右側に望む海岸に出た
雨風になってきた
晴れていれば開聞岳が望めるはずなのだが何も見えなかった
海岸道路から内陸部に入り長い登り坂が始まった

たけのこの季節なのだ

単調な山の景色の中を進み田代の交差点に着く頃には午後1時を過ぎていた
ここを右折するとあとは南下していくだけだ
道路標識も佐多岬への案内だ
たまたま通りかかった車の窓が開いて見知らぬ男性からお茶の差し入れを頂いた
親切心がありがたい
しばらく走って村のスーパーに立ち寄って昼食の弁当と夕食の食料品を購入した
レジで会計した時に女主人から暖かい声をかけてもらって応援された
ずぶ濡れの雨具を身につけて沈みそうな気持だったが再び生気がみなぎってきた
この道を通って佐多岬に向かうサイクリストなら昔から立ち寄った店に違いない
なぜならこれから進む道沿いには店は無いのだ
自転車版道の駅と言って良いかもしれない
乗り物によって旅に必要とされる場所は違うのだ
こちらの方が地域密着という感じだ
店の入り口の木の台には沢山の小菊が並べてあった
今はお彼岸でもないのだが途中の道路沿いから見える墓地にはどこも供えられた花で溢れていた
どの島を旅しても子供の多かったフィリピンに比べて日本は多くの限界集落でお年寄り達だけが先祖の墓を守っている
小さな村の店頭に溢れる花と静かな山懐に点在する家々
もし将来再びここを訪れることがあったらその時この店はどうなっているのだろうか
老サイクリストの私は彼岸の世界から眺めているのかもしれないが

昼食を食べる場所を探しながら走る
T字路の角に農産物の売店があった
地元の直売所なのだろうか
扉も閉まっていて誰もいない
自転車を屋根の下に停めて雨具を脱いだ
ここで少し遅い目の昼食にした
それにしても雨は相変わらずだ
この屋根の下で野宿という手もあるが時間が中途半端だ
佐多岬まではまだ30数キロの標識があった
登り坂を押して歩くと時速2キロ位になるのでいずれにしても手前で日没になりそうだ
その前に適当な宿泊場所をこの山中でみつけなければならない
良い場所はないかと探しながらペダルを漕ぐ
周囲に民家がなく人があまり通らなくて目立たない場所
できればこんな雨の日は屋根の下がいい
濡れたテントは撤収が面倒だ
水と食料は積んでいるので心配はない
なんだかこれからドロボーに入るみたいな気分になってきた
前方にアミューズメント施設の案内看板が見えてきた
既に営業はしていなく年月が経ち廃墟となっているようだ
バブルの時代に開業していたのだろうか
自転車を降りて道路から分岐している坂を登って行くと開けた土地の一画に建物が建っていた
中を覗くとわずかな荷物が打ち捨てられている

庇も充分な長さがあり雨を凌ぐには充分
床も綺麗な優良物件だ
今夜はこの場所に決定
時刻は4時を過ぎていた
明るいうちに夕食を食べて早々とテントに潜り込んだ
雨の1日が終わった
明日こそ佐多岬へ

#佐多岬 #自転車旅  #野宿 #限界集落  

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