コネコネハウス<掌小説>

同じような造りの住宅街。
ごくごくフツーの住宅街に、1軒だけ立派な家がある。
「お茶でも、いがか?」
呼ばれて入って、ビックリした。

壁はオール漆喰だ。家具もセンスが、非情にいい。
建材の1つ、1つが適所適材に使われており、収納場所も沢山ある。
庭も清々しい。
子どもがいない=貯金ができるんだろうか?そんなはずはない。
口に出しては言えないけど、ご主人の勤め先は、聞いた事もない。
自慢じゃないがウチの夫の勤め先は、超有名企業だ。

「凄いですねぇ、綺麗だし」
大袈裟に褒める。
出してくれたコーヒーはインスタントで、お茶請けは平凡だ。
「そう?でもね、実は」
「実は?」
身を乗り出してしまう。話のネタにもなりそうだ。
「身内がみんなしてくれて」
奥さんはコーヒーをゆっくり飲んでから、打ち明けた。

旦那の兄が設計士で、左官業の資格もある。弟は庭師。
奥さんの義兄が家具メーカーに勤めており、姉はカーテン会社に勤めていた。旦那と奥さんの父親は、共に同じ不動産会社だったそうだ。
「そんなんで、色々してくれて」
聞きながら、我が家を思う。
夫の会社はオモチャメーカーだし、娘は時計会社。
息子は理髪店に勤め、近い親戚は何年も会っていない。旦那もわたし一人っ子で、共に早くに両親を亡くした。
「へぇ。普段から交流とかしてるの?」
「まぁ、遠くない所に住んでいるから」
きっと、この家の経費。諸々に掛かって来たのも「身内割引」。
2割、3割、当たり前なのだろう。
(コネコネハウス)瞬時に通称が湧いてきた。

<了>





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