九鳥梨
社会不適合者たちが人知れず世を救う話
社会から除け者にされた社会不適合者たちが個性的な才能を活かして社会に貢献する話。
あの後、櫻太と主催者であった咲夜は警視庁の取調室に連行され、盃都と千鶴は上手くその場を脱出した。 咲夜が取調で何を言ったかはわからないが、櫻太は今起きていることを包み隠さずに話さなければならなくなった。それは相手が警察だからとか、死人が出たからとかではない。むしろ、まっとうな警察官や役人には話せない。 櫻太はなんとなく感じていた。この件には何か裏で大きな組織が動いていることを。普通のお役所仕事の人間がそれを知ってしまうと、おそらくその者は何者かによって殺害され、事故
救急隊が到着して咲夜は止血を救命士と交代する。彼らは手際よくバイタルを測定しながら代永をストレッチャーに乗せて部屋を出る。 櫻太は代永が運ばれていくのをドアの横に立って見ていた。ストレッチャーとすれ違う際に、櫻太は代永に手を掴まれ、代永を運んでいた隊員たちも引っ張られるほどの力だった。 突然のことで隊員たちは驚き思わず立ち止まる。 代永は櫻太の手を引き、櫻太はそれに応えるように耳を近づける。すると代永は櫻太の耳元で力を振り絞って最大限囁いた。 「こ、い…」
櫻太は代永のジャケットの胸ポケットに入っていたハンカチを代永の胸に当てて止血しながら無線で連絡をする。 「代永が撃たれた。救急車。あと咲夜は入れるな。これ以上撃たれたら困る。」 『撃たれた?お前は大丈夫か?』 無線にいち早く答えたのは盃都だった。 「俺は大丈夫。ブラインド越しに1発で代永の左胸を貫きやがった。心臓は外れてるけどな。だが呼吸が苦しそうだ。肺に当たったかもな弾は貫通してる。」 櫻太は状況をなるべく詳しく説明する。その方が都が指示を出しやすいからだ。
『櫻太、黒い仮面の男を加藤から離してどっか誰も来ない場所に引き摺り込め。』 突然の奇襲命令に一瞬驚いた顔をする櫻太だが、盃都からの無線に口角を上げて応答する。 「いいぜ。そのかわり誰かスナイパー黙らせてくれないか?」 レーザーポインターは消えたが、千鶴と櫻太はロックオンされたため今この会場を自由に動くことができない。 櫻太は盃都か千鶴がなんとかしてくれることをじて、スナイパーに狙われないようになるべく大男の陰になるルートを選んで口論している二人のところへ移動する
『何故使われているんだ?!まだ試験段階だと言っただろう!』 『俺は売っただけだ!ああいうのは資金調達が上手く行かないと意味ないんだよ!』 『売った?!誰に?!』 『上客だよ、安心しろ。高く買ってくれたよ。おかげでアンタらの研究費確保できてるんだ。感謝してくれよ。』 2人の男が言い争っている声が聞こえる。会場には大勢の人がいるから小声だ。近づかなければ聞こえない声のボリュームだが、仮面から覗く彼らの目は険しく、近くに寄ると喧嘩が起こっているのは明らかだ。 しかしパ
こういうのを作ると創作意欲が湧いてきて最高に楽しい。 私の作中のキャラが使ってたりするのを想像して作っているのだ。 アクセサリーは苦手だけど本物のジュエリーは高くて手が出せない…っていう人向けのジュエリー風作品。
3人はそれぞれ別行動に移る。 今回は葉月が不在のため、監視システムの掌握は盃都の役目だ。盃都はこのビルのメイン監視システムがあるフロアに向かう。 向かう途中、会場を出てすぐ配膳ワゴンと来場客が一気に入ってきてしまったため何人かにぶつかる。おそらく千鶴と櫻太に遅れをとったであろうが、なんとか体勢を立て直して警備室まで長い足でスタスタと歩いていく。 本人からしたら急いでるのであろうが、周囲からは優雅な散歩にしか見えない。横に犬でも連れてそうだ。 なるべく怪しまれな
「お前ら眠り姫が居ないと結構きついんじゃない?」 咲夜が尋ねると千鶴は首を横に振る。 「確かに、居てくれた方が助かるけど、他にも優秀なメンバーが揃ってるのでご安心を。」 千鶴の言葉に櫻太はニヤリと喜びを隠せないが、盃都は面倒くさそうな顔をする。 「アイツが不在だと俺に皺寄せがくるのはお構いなしか?」 盃都は千鶴の顔を覗き込んで尋ねるが、千鶴はどこ吹く風。 「なんでもいいが、この招待状を出した奴とそいつの狙いを突き止めろ。それが俺の依頼だ。俺は壇上にでも登って挨拶
「で?これはなんのためのパーティーだ?お前の暇つぶしか?」 盃都は咲夜に尋ねる。 「俺も呼ばれた側だ。何が起きるか分からない。」 そう言った咲夜は左手に持ったシャンパンを煽り、飲み終える。そしてそのまま通りすがったウェイターが持っているにグラスを置いた。一連の仕草はやはり慣れていて何処か洗練されている。 櫻太が咲夜の仕草を眺めていると、盃都も通りすがりのウェイターからグラスをもらい煽る。二人とも流れるような仕草だ。 櫻太は察する。この二人は元々こういった場に慣れ
今朝のニュース。紫水議員の息子・元妻・秘書の三人が火事に巻き込まれて亡くなったことを数社が取り上げている。失踪した晶を回収し橄欖に三人を引き渡したのが昨日の出来事。 彼らが動いた事件だなんて世の中の人間は誰も知らない。関係者以外。 そしてあの3人もアメリカ政府に新しいIDを与えられて合衆国のどこかで生きているのだろう。 鹿島組なんていうヤクザと繋がっている国会議員については今のところ何の処罰も与えられていない。報道にその情報が無いあたり、捜索願いが出された警察も
橄欖が3人を連れて出て行った後、静けさに包まれるアジト。 櫻太は任務が終わったとみなし即自室へ戻る。すぐにシャワーの音が聞こえてくるあたり、このまま仮眠とって夜中に出歩くか、すぐ外に出て女でも捕まえるのだろう。 菖蒲は翌日の撮影がああるため、任務が完了したことを千鶴に確認して家に帰った。 葉月はというと、盛大なあくび。橄欖の突然の訪問により一気に体力を削られたのか。いつも暇な時はスマホゲームしてるかSNSパトロールしてるかだが、おそらく眠りに行くのだろう。次はい
「マジでさいあく。」 来訪者が登場した瞬間、葉月はつぶやいた。 「仕方がないだろう。俺はこれ以上茶番に付き合う気はない。」 葉月同様に盃都も心底うざそうに答えた。 「はいど〜〜〜楽しんでもらえたかな♪?」 語尾に音符がみえるテンションで盃都の近くまで移動して当然かのように盃都の隣に腰掛けて、盃都の飲みかけコーヒーを啜る。 「うわまっずあっまおえぇえええ。まだこんなん飲んでるの?糖尿病なるよ?あ、そう言えばさ 〜」 他人の飲み物を勝手に飲んでこの態度。そしてずっと
櫻太たちがアジトに着くと他のメンバーはすでに到着してくつろいでいた。 保護とは言え、アジトにメンバー以外の人間を連れてくるのは危険行為。だがもし敵であったとしても、ここのアジトに入るルートは普段メンバーが出入りする入口とは異なる。さらに、内側からのシグナルは葉月が作ったもの以外は全てブロックされ圏外となる。 窓もないが、壁にホログラムを投影してさも普通の家かのように演出する。 一見外側からすると集合賃貸のようだが、中は大きな一つの家である。部屋数が多少多いのと、中
部屋へ通してもらった櫻太と菖蒲は、本人に話を聞いて事実確認をするために菖蒲が優しく声をかける。 「紫水晶くん、だよね?今回、君が失踪したことになって一時行方不明届を出されていたことはわかる?」 菖蒲の問いに晶はうなずく。 「俺たちは警察じゃないし、お父さんの仲間でもない。国に仕えてる人間でもない。俺は別で芸能人やってるけど、今はただの何でも屋の一般人。今回は君のお母さんが警察に頼れなくて、俺たちを頼ってきたからこうして動いてるんだけど、先に一つ聞いていい?」 母親か
葉月に見送られた三人と千鶴は車庫に向かいそれぞれ車に乗り込む。 千鶴は黒のセダンに。 櫻太と菖蒲は黒のジープに。 盃都はシルバーのセダンに。 千鶴の車はすぐに出て行ったのを櫻太は横目で見てエンジンをかける。菖蒲はシートベルトを締めながらつぶやく。 「さっき、誰に電話してたんだろ?」 菖蒲の問いに櫻太は興味なさそうに肩を上げて「さあ?」と答えて車を発車させる。 その反応に不服なのか菖蒲はムッとした顔をした。 「アンタは気にならないの?千鶴さんがたまに誰かに電
「紫水晶本人じゃん。」 葉月が認証結果を見て言うと、櫻太は立ち上がって背伸びをする。 「そんじゃまあ、とりあえず行くか。」 櫻太は上着を羽織って車のキーを右手に持ち、出動する準備万端だ。菖蒲も一緒に立ち上がった時、それを制止する盃都。 「待て、お前らどこに行く気だ?」 櫻太は当然のように答える。 「え?議員のセンセイパパに見つかる前に俺たちが紫水晶を保護しねぇと。」 もっともだ。櫻太たちはそのために今までああでもない、こうでもないと議論してきたのだ。 成田に新