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皇治は那須川天心に いかにして勝つのか?!

世界的なコロナ禍の中、格闘技界は従来通り興行することもままならず存亡の危機を迎えています。そんな中、ファンから支援を募るクラウドファンディングを経て、開催されるRIZIN24を微力ながら応援するため本稿の公開に踏み切りました。

お読み下さった皆さまが、皇治選手と那須川天心選手との対戦に少しでも興味を持って頂けたら望外の喜びと存じます。

成り上がりキックボクサー皇治と神童・那須川天心

キックボクサー皇治の挑戦
時には『実力不足』『ビッグマウス』とアンチに叩かれながらも持ち前の行動力で周囲を黙らし、K-1の頂点に君臨する武尊にまでたどり着き熱戦を繰り広げた。

武尊に一敗地にまみれながらも、地元大阪のエディオンアリーナを興奮の渦に巻き込んだ皇治。その後、武尊と新たなストーリーをK-1の世界観で築くのかと思いきや、

なんと別団体であるRIZINに電撃移籍だ。彼の新たなターゲットはもちろん、日本格闘技界の生んだ神童・那須川天心だ。

ターゲットは神童・那須川天心
様々なスターが混在する日本格闘技界。その中でも那須川天心は、業界のみならず世間一般に渡ってダントツの知名度を誇っている。

RIZINのテレビ中継の有無は、那須川天心が、その大会に出場するか否かが大前提となっているのは周知の事実である。

彼の魅力は、どんなトーシロが見てもスゴイと分かる異次元な動きと圧倒的なスピード感、そして量産される派手なKO劇である。日本キックボクシング界のトッププロが何人も秒殺される様は見ていて痛快である。

しかし、そのあまりの強さからライバルと切磋琢磨するストーリーが作れず、どんなに話題性のある選手を連れてきても、全てが一試合完結で次につながらないという不満も残る。

那須川天心とK-1の象徴である武尊との一戦は、ファンの間で長年に渡って熱望されているドリームマッチだ。しかし未だ実現に至っていない。

理由はいろいろ取沙汰されているが、その真実は闇の中である。だが仮に、私がK-1の運営に携わっていたとしても、絶対に那須川天心との試合は許可しない。

有り体に言うと、那須川天心には全く生産性が無いのだ。彼の通った跡には無残に砕け散った格闘技界のタレントやアイコンの屍しか残らない。

今も昔も、立ち技格闘技の最高峰であるムエタイ。その2大殿堂のチャンプやランカーにすら当り前のように勝利する彼に、ファンが熱く勝負論を語れる対戦相手を用意することは難しい。

もはや総合格闘技かボクシングなどの別競技での試合、それも階級上の相手でしか勝負論のある試合が組めないのだ。そこに来て、このコロナ禍である。

海外から選手を呼べない非常事態にクローズアップされたのがK-1から移籍してきた皇治である。タレント高橋ユウの夫である卜部 弘嵩に勝利し、彼の弟分である武尊とも熱戦を繰り広げたという、その話題性が買われたのだろう。

ファン共感型のファイターである皇治は、たった1試合の勝敗で評価が変わる選手では無い。むしろ対戦相手は強ければ強いほど良いのだ。

凡人(あくまで設定)である皇治が才能あふれるトップ選手に、勝率わずか数パーセントの戦いを挑むからこそ、彼のファンが熱を持ち会場に足を運ぶ。故に彼の観客動員数は格闘家の中でもトップクラスなのだ。

那須川天心という日本格闘技界の生んだスーパースターとの対戦は、彼がRIZINへの移籍を決意した最大の要因であり、そして度々、引退を匂わせる発言をしていた彼の最終目標であっただろう。

試合に向けての実績作りとして1年くらいの期間を考えていたのではなかろうか。それが、このコロナ禍で一躍、那須川天心の対戦相手として大抜擢され、世間の注目を一身に浴びることになるとは彼自身も思ってはいなかっただろう。

やっぱり、皇治は持っている。

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ポスターも、めちゃカッコいいのである。
RIZIN初参戦でテレビ生中継である。
しかも興行のトリ、メインイベントである。
成り上りキックボクサーの面目躍如である。

しかし、ここで素朴な疑問が生じてくる。そう、

皇治は いかにして那須川天心に勝つつもりなのか?!

負けるつもりで試合に挑む者などいないと彼は言う。そりゃそうだ。だが、彼に対して好意的な意見を持つ私でも、皇治が勝ち名乗りを受けている姿を想像できない。

それ程、那須川天心はキックボクサーとして、いや、格闘家として突出した存在なのだ。

彼との試合に、もし皇治が無策で挑むとしたら、おそらく1ラウンド待たずに無残にリングで散る事だろう。皇治本人も公言しているが、彼はサウスポーに対して苦手意識を持っている。

それは、すなわち、皇治が何故KOされないのかという理由にもつながるのだが、ここでは那須川天心の攻略法について、あーだこーだと語りたいので皇治の特徴については教えてあげないのである。

劣勢が伝えられる皇治だが、それは毎度のことである。お陰で、格闘技ファンとしては四方山話に花が咲き、この一戦への興味が尽きることがない。

そこで下町のメンタリストを名乗る私が、神童・那須川天心を勝手な憶測を用いて丸裸にしていき、皇治が勝てる方法を模索していこうと思う。

那須川天心を丸裸?!憶測でプロファイリングしてみた

年齢が、まだ22歳と若いので格闘技のキャリアでは皇治が勝っていると思いきや、さにあらず。那須川天心は、プロ・アマを通じて百戦をも超える試合数をこなし豊富な経験と知識を有している。

ここで重要なのは、その経験と知識を二人三脚で共に歩んできた、父、弘幸さんと共有し補完し合っていることだ。

非力なため怪我のリスクがない幼少時から、フルコンタクト空手で思い切り殴り合いをしてきた那須川天心は体の締め方を完璧にマスターしている。

筆者は空手愛好家だ。所属道場には幼少の頃から試合漬けで育ったジュニア戦士が多くいる。成長期の彼らは過度な筋トレこそ強要されないが、豊富なスパーリングによって打撃への耐性を作っている。

それは那須川天心にも同様のことが言える。彼のボディには打撃は効かないのだ。そして自分より大きい相手ばかりの無差別での試合を多く経験していることから技の効かせ方、ジャッジへのアピールの仕方をも熟知している。

そして何より放つ攻撃がエゲツない。顔面やボディへの中足を返した蹴り技は、その際たるものだろう。

小学校高学年から顔面ありのキックボクシングに転向した那須川天心。そこでも対戦相手は自分より大きな選手ばかり。

ここで現在に通ずる、彼の基本的戦法が出来上がります。それは相手とのリーチ差を補うために攻撃の出入りを素早く行いながら、左斜め後ろへのバックステップを多用した攻撃です。

そして小柄だからこそ授かった、そのハンドスピードを生かす手段としてカウンターパンチの技術を深化させました。

相手とのリーチ差を埋めるため、距離の稼げないフックやアッパーなどの接近戦での技術は次第にスポイルされていき、

その攻撃は出入りの際に行われるステップの前後運動と相性の良いストレートパンチに特化されていったのです。

那須川天心のパンチで相手が倒れる要因


彼の、遠間から身体ごと飛び込んでくるように見える前進運動に相手が圧を受け、その結果、身体が硬直しパンチに反応出来ないことが挙げられます。

2足歩行している人間が本能的に恐れるのは転倒することです。そのため体当たりされてバランスを崩すことを危惧した脳からの指示で身体を固めた結果、意識がパンチから外れて、その出所を見失い被弾するのです。

そして相手が打ち返そうとした刹那、那須川天心は前足を後ろ足に引き付ける独特の歩法を用いて相手の右斜め後ろにバックステップし、相手打撃の届かない死角に入るのです。

これらの戦法の特徴は、キックボクシングで使われる技のほとんどが有効に作用する中間距離に留まっての攻防を完全に排除している点です。

対戦相手が攻撃を試みても彼の姿は既にそこに無く、そして突如、右前の死角から現れた彼の打撃を喰らうのみ。

那須川天心はキックボクシングというカテゴリーの中で、間合いと戦闘方法から異なる、全く違う競技をしていることを対戦相手は理解できないまま敗れ去っていくのです。

そして、この戦法を使う限り、那須川天心のみが相手を殲滅するまで一方的に攻撃を行うことが出来るのです。

格闘家という人種の多くは、真正面から小細工なしに殴り合うことによって優劣を決めることが男らしいと考えている節があります。

だから間合いの持つ意味合いや、それを駆使した戦略について深く考察することもない。皇治も、どちらかと言えば、このタイプに属しています。

しかし那須川天心はファニーフェイスのアサシンなのです。勝利を得るためなら、ありとあらゆる手段を駆使してリングという戦場に臨みます。

普段の謙虚な物言いとは裏腹に、リング上での所作や態度からは対戦相手へのリスペクトは微塵にも感じられません。

過去、那須川天心はマウスピースを落とし、待ったをかけている選手をタコ殴りにしています。レフェリーからストップがかからない限り、そして確実に勝つためには、そうするのが正解ということを彼は知っているのです。

空手出身者は、金的を蹴られることは股を締めることを怠った自らのミスであると日頃から教えられてきたものです。これは伝統派、フルコンタクト派を問わず共通の認識です。

故に金的を蹴られてもダメージが無ければ、ことさら、それをジャッジにアピールすることはありません。しかし那須川天心は、相手攻撃の流れを絶つために、これすら有効活用するしたたかさを持っています。

それら全ては、体格に恵まれなかった少年が、より一層の高みを目指して努力を積み重ねて辿り着いた一つの境地。誰にでも真似できるものではありません。

勝負に勝ち続けることは、それほどに厳しく困難な道程なのです。興行を締るメインイベンターにしか分からない重圧に満ちた世界。

それを十代の頃から数多く経験してきた彼には、勝つためならば泥水をも啜る覚悟と執念があります。

だからこそ那須川天心は、他の格闘家と異なるオーラを身に纏い、等身大のヒーローとして人々から多くの支持を集めるのです。

そんな彼には弱点は無いのか? あるよ憶測だけど

脊椎異常で車椅子直前まで行った私は、独自のリハビリやトレーニングを経て健康を取り戻した。

その経験から姿勢がパフォーマンスや身体の部位に及ぼす影響については一家言持っている。

そんな私が那須川天心を見ると、何処かに負傷を持っていても不思議ではないほどの崩れが見てとれる。

痛めている可能性のある部位としては、左足首・左膝・右腰・右肩・左拳がある。

一例を挙げてみよう。頭部が正中線を超えて左に寄っているため重心は左半身にかかる。そのため頭の重みを緩和するため左股関節は外旋する。

その下に位置する膝関節は蝶番関節なので、股関節とは異なり可動範囲に制限がある。慢性的に体外側に重心がかかれば故障の原因となりえる。

左半身に重心が乗ることで浮き上がる右腰。それにつられて内旋して上がる右肩関節。こうなると腰・肩ともに周辺筋肉群が効率よく働かない。

それらは、コンタクトスポーツにつきものである、対戦相手との思いもよらない接触で簡単に痛めてしまう可能性がある。

彼が1Rから勝負をかけて、フルスロットルで飛ばしてくるのは、負傷で長いラウンドを戦えないのが原因かもしれないと思うのは的外れだろうか。

誰も知らない 那須川天心の弱点はコレだ

那須川天心は半身を深く切って構えるが、これは相手に晒す攻撃面を少なくするのと、自らが打ち出す左ストレートのタメを作り、その出所を隠す意味合いを持っている。

ここで少し考えてほしい。

そう、こんな構え方をしていては左足は全く動かないのだ。

彼の打撃は全て前足である右足のステップを伴って行われる。後退するときですら前足を後ろ足に引き付けることで起こる筋肉の反射運動で左足を動かしている。

前足が動かない状態での打撃は完全な手打ちであり、そもそも重心の大半がかかっている左足は上げることもできない。この状態での突き蹴りは恐れるに足りない。

皇治はいかに那須川天心をこの状態にして試合を進めるかが勝敗のカギとなる。そのためにはプレッシャー(効く技での連打)をかけて距離を潰すことが肝要なのだ。そして3Rまでダウン無しで乗り切れば、前述の体調面の不安もあり皇治の勝つ芽も見えてくるだろう。

皇治が勝つ方法を思いつく限り書き綴ってみた

1.那須川天心を苦戦させた 先人から学ぶ
①堀口恭司
間合いが遠く出入りが激しい堀口恭司は同タイプのため苦戦を強いられた。1R終了時、堀口恭司は自らの勝利を確信したはずだ。ここで勝負を分けたのは、那須川天心の2回に渡る金的蹴りと、死角から飛んできた胴廻し回転蹴りだった。

②ロッタン・ジットムアンノン
クレーバーでタフなロッタンはまさに天敵。那須川天心攻略のお手本となった。オーソドックスとサウスポーを使い分け、常に接近戦を挑み続けながら脚とボディにダメージを蓄積させパンチの威力を殺していった。この両雄は、おそらく二度と相まみえないだろう。

③スアキム・PKセンチャイムエタイジム
不運な額のカットでTKOとなったが、2度対戦して那須川天心に手数では負けたが、戦局的には危ない所が全く見えなかったスアキム。一発の重さと前に出続けることが大事だと教えてくれた。

④フロイド・メイウェザー
顔面ガードを固めて前進すれば、那須川天心の攻撃は左ストレートか左ボディのみに限定される。その左パンチのあと無防備に正面を向いたボディに強烈な一発をカウンターで撃つ。動く頭を捉える射程距離の長い、ナックルを返さないフックを瞬時に選択するセンスとボディから顔面へのダブル攻撃が秀逸であった。

2.攻略法の数々を書き綴ってみる

前進して間合いを潰す。那須川天心の踏み込みに使うスペースが無くなれば、彼の打撃フォームでは威力ある左ストレートは打てない。さらに危険な三日月蹴りも未然に防げる。

ジャブをバックステップで避けない。距離が空けば被弾すると思え。

常にインファイトすること。

絶対に相手攻撃に押されて後退し距離を空けないこと。さすれば不用意に飛び膝蹴りを喰らうこともない。

那須川天心は、ほぼスイッチしないので、君の顔を叩くカウンターパンチは右ストレートを放てば、死角となる右前から左ストレートが飛んでくる。

君が威力なく放った左ジャブには右フックをかぶせてくる。自分がパンチを出したらカウンターで叩かれると想定し意識して備えろ。さすれば、君にはガラ空きになった那須川天心のボディが見えるはずだ。

1Rはライフルを構えた狙撃手。2Rはナイフを持った暗殺者。3Rからが那須川天心。勝負は3Rだ。

攻撃を効かせろ。相手右脚を壊せ。壊し方は、格上サニー・ダルベックの右膝を粉砕した大先輩である城戸ちゃん(谷山ジム)に聞け。

胴廻し回転蹴りは君には絶対効かない。心配するな、理由は解説済だ。

クールにふるまわず感情を爆発させろ。良いのをもらったら大阪弁で文句言ってやれ。

グローブタッチに来たら殴れ。

総括

皇治は不思議な格闘家である。さして強く感じられないし、ここは関西人として苦言を呈しておくが、さして面白くもない(笑)。

そんな男が格闘技界の中心人物にまで成り上がった過程を格闘技ファンの一人として振り返ってみると、そこには負けられない勝負の数々が確かに存在した。

セルフプロデュースに長けているだけとアンチに揶揄されることもあるが、しっかりと闘いをファンに見せてきた。

親しみの持てる近所の兄ちゃんのような風貌の皇治だが、彼の身の丈をはるかに超えるほどの大勝負を、自らの行動力で実現させてきた。

その道程を共に歩んできたからこそ、彼のファンは熱を持ち続け、会場に足を運び皇治に声援を送るのだ。

今回の那須川天心戦は、皇治にとって厳しい戦いが予想される。

ライバル団体であるK-1のアイコン武尊がKO出来なかった皇治を、
格闘技界の最終兵器である那須川天心が1Rから潰しに来るのだ。

この鬼のような設定だけで、もぅお腹いっぱいである。

お互いの持つ武器を比較しても皇治の勝つ芽が見いだせない。

何故彼は、このような無謀な勝負に出たのか?

思うに、おそらく私が思うほど皇治は弱くない。

名だたるハードパンチャー達に強打を貰い続けながらも彼は何故KOされないのか。

その命題から導かれる答えはひとつだけ。

皇治は心身共に タフな男なのだ。

そして、おそらく皇治は、未だ本気で人を殴り倒したいと思っていない。

他人の格闘技人生を自分の拳で終わらせたいとも思っていない。

皇治自身、意識していないが、コメントとファイトスタイルから深層心理を勝手に読み説くと、

相手を負傷させるくらいなら自分が痛い目をみようと思っている節がある。

そこが、絶対に負けが許されないポジションにある那須川天心との大きな違いである。

だからこそ、最後の大勝負の相手は那須川天心しかいなかったのだ。

那須川天心こそが、まだ見ぬ皇治の本気を引き出してくれるに違いない。

我が街のイカした兄ちゃん 皇治と

私たちの等身大のヒーロー 那須川天心

コロナ禍の中、

明日を生きる希望と夢を与えてくれる

素晴らしい格闘家である両名に幸あれと切に願う。

試合終了後の雑感とボヤキ

1R開始直後、那須川天心は、お互いの打撃が一番効く中間距離まで無造作に距離を詰めてきた。皇治による度重なる挑発にご立腹の神童は、自ら鉄拳制裁を下しに迫りくる。

普段、中間距離に留まらないことで相手打撃を完璧に封じている那須川天心が怒りに任せて我を忘れているのだ! 皇治の打撃が当たる距離を、どう作るかが課題のこの一戦!! いきなり大チャーンスの到来なのだ!!!

『皇治!ファーストコンタクトは自分からだぞ!!』

心の中で叫ぶ私。初っ端から皇治の勝つ芽が見えたのだ。これが興奮しないでいられるかってんだ!!内山直伝のハードパンチを見せてやれ!!!そう思いながら皇治を見ると…

なんとバックステップしてやんの。。。

この試合はこれが全てです。


written by 7th street

END

ご支援賜れば、とても喜びます。 そして、どんどん創作するでしょう。たぶn