幸田露伴の随筆「蝸牛庵聯話 白磁・音楽」
唐の人で青瓷を論じた者に陸羽がいる。羽は秘色と云わなかったが、羽もまた越州の青磁を上と見て、邢州の白磁を下と見る。しかしながら、邢州の白磁もまた世に重んじられたことは明らかで、そのため杜甫にたまたま邢磁を賞する詩がある。しかし越磁を詠む詩は無い。ただし青磁や白磁が重んじられた唐の世に在って、惜しげもなく箸でもって越や邢の器を叩いて楽器とした者も在った。唐の段安節の「楽府雑録」に、「武家の朝、郭道源、よく瓯(かめ)を打つ、おおむね邢や越の瓯十二個を用いて、水をその中に加減して