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おじさんとわたし 6 (クマ取りVS眼瞼下垂)


幼い頃から目の下にクマがある。
25歳あたりを過ぎてから目立つようになり
元気な時でも周りに
「疲れてるね」「眠れてる?」
とよく言われるようになった。


結婚を考えていた彼と別れ
『いつかのための貯金』
を全部使ってやろうと思い立ち、クマとりの手術をすることにした。


クマには色々な種類があるらしく
・血行不良によるもの
・色素沈着
・脂肪による凹凸
等々があるらしい。
私のは脂肪による凹凸のものだったので、脱脂手術というものをした。


某有名美容整形外科に初診でかかったところ
たいそうイケメンな先生が出てきて
「今日であればモニター価格でできます」
という魔法の言葉をかけられ
行ったその日に手術した。


普段、自分は人にガンガン麻酔を打ったり躊躇なくメスを入れたりしているのに、自分がやられる側になると怖くてヒーヒー言っていた。
やられる側になるとわかることは多い。



施術後、おじさんに見せようと実家に帰宅した。



おじさんは
「なんだそりゃ!どうしちまった」
とびっくりしていた。
クマ取りをしたと言うと
「そんなことせんでも…」
と苦々しく呟いた。



その月の月末。



お金がカツカツになってしまった私が
(モニター価格でも結構高かったし貯金からちょっと足が出た)
食糧を得るために実家に帰ると
眉毛のあたりを腫らし、糸がちょろりとはみ出しているおじさんがいた。



「な、どうした?!転んだ?!」
と聞いたら
「お前がやってるの見たら真似したくなって、眼瞼下垂の手術をした」
と言われた。


視界が開けたただの、保険診療だから安かっただの、八重洲の美容整形外科の女医が美人だっただの、散々自慢してきた。
私の時は渋い反応してたくせに!
なんだこのじじい。


ちなみに手術をする前は視界が狭く、頭をぶつけることが多かったらしい。
瞼を意識的に持ち上げないと見えにくいため、そのせいでおでこに一本筋の深いシワができたそうな。
このシワも薄くなったような気がすると言っていた(そんな早くシワが消えてたまるか!)



「美人先生にモニター価格で次はシミ取りもしてもらうんだー。モテちゃうな」



ウキウキと夕飯を作りながら話すおじさん。



いくつになっても、女でも男でも
綺麗になるとか外見が良くなるとか、そういったことは嬉しいものなのだなあと思った。



でもね、おじさん。


72歳で屋外区民プール仕込みの色黒の肌では
シミ取りはさすがにプラセボだと思うの…。



美容ジジイの夜はふけゆく。

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