ヒデヨシ

札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしています。世界を彷徨うような映画や小説が好きで…

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札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしています。世界を彷徨うような映画や小説が好きです。映画レビューhttps://hideyosi719.blog.fc2.com/

最近の記事

函館の佐藤泰志原作映画シリーズ『草の響き』~死の不安から逃れるために走り続けるしかないこと~

画像(C)2021 HAKODATE CINEMA IRIS 芥川賞候補になりながら受賞できなかった函館出身の夭逝の作家・佐藤泰志の原作モノをシリーズでプロデュースし続けている函館シネマアイリスの菅原和博氏。『海炭市叙景』(2010)、『そこのみにて光輝く』(2014)、『オーバー・フェンス』(2016)、『きみの鳥はうたえる』(2018)に続く第5弾として2021年に製作されたのが本作。これまでの作品はどれも愛すべき佳作だ。調べてみたら、斎藤久志監督は2022年に63歳

    • 映画『マイアミ・バイス』~夜のクライム・アクションが得意なマイケル・マン

      1980年代を代表するテレビシリーズ『特捜刑事マイアミ・バイス』(‘84~’89)の製作総指揮をしていたマイケル・マンが自ら監督してリメイク映画化。 刑事ソニー・クロケットにコリン・ファレル、リカルド・タブス役にジェイミー・フォックスを起用し、テレビとキャストを一新。黒のトーンの衣装のより渋いバディ刑事モノのクライム・アクション映画に仕上げた。 マイケル・マン監督は夜のシーンを描くのが上手い。空撮やビルや街の明かりを効果的に使い、カッコいい銃撃戦を演出する。本作では、モータ

      • 濱口竜介の奇妙な新作『悪は存在しない』~謎のラストと自然との対峙~

        画像(C)2023 NEOPA / Fictive なんとも不思議な映画である。名のある役者は誰ひとり出ていないし、物語もあるようなないような。レビューを書きづらい作品だ。いずれにせよ、謎の多いラストシーンもあり、ネタバレになるので、鑑賞後にお読みいただければと思います。 最近見た『落下の解剖学』が結末を曖昧にしたように、本作もどうとでも解釈できるような曖昧で複雑な終わり方をしている。答えは一つではないことだけはハッキリしている。正解もなければ誤りもない。善と悪がそもそ

        • 映画『コラテラル』マイケル・マン~一夜限りの巻き込まれサスペンス

          マイケル・マン監督の映画を何作か続けて見ている。デ・ニーロとアル・パチーノの対決を描いた『ヒート』も面白かったが、少し長かった。それに比べて本作は、サスペンスが持続した一夜の凝縮した物語であり、こちらの方がすこぶる面白かった。ジェイミー・フォックス演じるタクシー運転手が、殺し屋演じるトム・クルーズを客として乗せたばかりに次々と犯罪事件に巻き込まれていく。まさに「巻き込まれ型」サスペンスだ。「コラテラル」とは、「付随的な」「巻き添え」といった意味があるようだ。タクシー運転手の一

        函館の佐藤泰志原作映画シリーズ『草の響き』~死の不安から逃れるために走り続けるしかないこと~

        • 映画『マイアミ・バイス』~夜のクライム・アクションが得意なマイケル・マン

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          話題作『バービー』グレタ・ガーウィグ~理想化された女性像の虚実~

          画像(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. グレタ・ガーウィグ監督は、『ストリート・オブ・マイライフ わたしの若草物語』が面白かったので、期待して見た話題作だが、それほどでもなかった。脚本にガーウィグの夫であるノア・バームバック(『フランシス・ハ』、『マーゴット・ウェディング』など)が入っている。 いちばん驚いたのが、ライアン・ゴズリングがよくこの役を引き受けたなぁということだ。それだけボーイフレンド人形ケンの魅力はな

          話題作『バービー』グレタ・ガーウィグ~理想化された女性像の虚実~

          二大俳優が対峙する犯罪映画『ヒート』マイケル・マン監督の名作

          アル・パチーノがロサンゼルス市警の刑事、ロバート・デ・ニーロが犯罪集団のボス、「コインの裏表」のように二人の役者が対峙する。どっちが刑事でどっちが犯罪者か分からないほど、二人はよく似ている。刑事のアル・パチーノは家庭を顧みず、昼も夜も犯罪者を追いかけているため、結婚にも失敗し、二度目の家庭もうまくいっていない。ロバート・デ・ニーロはこれまで孤独を貫いてきたが、犯罪集団の仲間たちはそれぞれパートナーとの幸福な家庭を築いており、ファミリーのボスといった感じだ。しかし、そんな孤独な

          二大俳優が対峙する犯罪映画『ヒート』マイケル・マン監督の名作

          映画『ミューズは溺れない』淺雄望~多様な生を模索する美術部の青春~

          画像(C)カブフィルム 万田邦敏監督や大九明子監督のもとで助監督など映画制作を学んだ期待の新鋭、淺雄望監督の初の長編作品。高校の美術部に所属する3人の女子高生を中心に多様な生き方を模索し、葛藤する瑞々しい青春映画。 出演している女の子たちがとにかくいい。人を好きになったことがない朔子(上原実矩)は、親友の栄美(森田想)に彼女が思いを寄せる野球部の男の子が朔子のことを好きなようだと告げられても、どう感情を表していいか分からない。栄美はそんな曖昧な態度をとり続ける朔子のことを

          映画『ミューズは溺れない』淺雄望~多様な生を模索する美術部の青春~

          『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ~真実は藪の中 音と犬に導かれて

          画像(C)LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE 犬に始まり犬に終わる。ボールが階段を落ちてくる音とともに犬が階段を下りてきて、ボールを咥えて階段をまた上がっていく。息子は犬をシャンプーし、犬と散歩に出て行く。息子のダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は目が不自由なようだ。犬が道を先導する。そして、ラストシーンは、犬が寝床にジャンプし、小説家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)の横に添い寝するシーンで終わる。なんだろう?このラストの犬の動きは・・・と

          『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ~真実は藪の中 音と犬に導かれて

          クリント・イーストウッド監督デビュー作『恐怖のメロディ』~名曲とともに「声」と「視線」が迫る恐怖~

          クリント・イーストウッドのデビュー作のミステリー。女たらしのイケメンのラジオDJが、一夜限りと割り切ってベッドを共にした女性からストーカー的につきまとわれ、恐怖のうちに追い込まれていく心理サスペンス。 カリフォルニアにある海辺の田舎町。空撮で海辺の田舎町が映し出され、断崖に建つ一軒の家の前で崖を見下ろす一人の男が立っている。クリント・イーストウッド演じるデイブは、深夜ラジオの人気DJだ。荒波と崖下の岩場を見下ろすサスペンス的な映像が挿入され、この場所が結局ラストでも使われる

          クリント・イーストウッド監督デビュー作『恐怖のメロディ』~名曲とともに「声」と「視線」が迫る恐怖~

          『エル・ドラド』ハワード・ホークス×ジョン・ウェインの傑作西部劇

          TM,® &Copyright ©2003 By Paramount Pictures All Rights Reserved ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』とも似ている西部劇。ジョン・ウェイン主演の西部劇で、『リオ・ロボ』と合わせてホークス西部劇三部作と言われているらしい。『リオ・ブラボー』と似ているというのは、登場人物の役回りが似ているのだ。 ジョン・ウェインの相棒役として、『リオ・ブラボー』のディーン・マーチンをロバート・ミッチャムが演じており、どちらもアル

          『エル・ドラド』ハワード・ホークス×ジョン・ウェインの傑作西部劇

          『スペースカウボーイ』クリント・イーストウッド~おじいちゃんたちが宇宙へ

          (C) 2000 Warner Bros. All rights reserved. 三宅唱監督の『夜明けのすべて』で上白石萌音によって「おじいちゃんたちが宇宙に行く映画」と語られていたクリント・イーストウッドの『スペースカウボーイ』。山添(松村北斗) のように見ていなかったので見てみた。 確かに、おじいちゃんたち4人組が宇宙へ行く話だった。1958年、アメリカ空軍の「チーム・ダイダロス」は初の有人宇宙飛行のために厳しい訓練を受けていた。それにもかかわらず、NASAは初め

          『スペースカウボーイ』クリント・イーストウッド~おじいちゃんたちが宇宙へ

          映画『渇水』高橋正弥~水(潤い)を必要とする関係~

          『渇水』©2022「渇水」製作委員会 2023年公開の映画でわりと評判が良かった日本映画。監督の高橋正弥は、市川準、相米慎二、根岸吉太郎、宮藤官九郎などの作品で助監督を務めてきたベテラン映画人。白石和彌監督が初プロデュースとなった本作は、業界内で「凄い脚本があるらしい」と話題になっていたが、 10年近く映画化されなかった脚本らしい。原作は河林満の「渇水」。 雨がなかなか降らず、水不足になった夏の前橋市の水道局の職員の話。水のない渇きが、生活の潤いを失くし、人生の渇きと結

          映画『渇水』高橋正弥~水(潤い)を必要とする関係~

          映画『クリスティーン』B級ホラーの巨匠・ジョン・カーペンター監督~擬人化した車の狂気~

          車を擬人化した映画はこれまでにもいろいろある。擬人化まではいかなくても、車は数々の映画の舞台装置であり、運動であり、アクションであり、デート場所であり、相棒のような存在でもあり、映画には欠かせないものであった。最近でも車とセックスする珍妙な映画『TITANE チタン』があったし、自動車の事故とセックスを絡めたデヴィット・クローネンバーグの『クラッシュ』のような変態的な映画もあった。レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』の大きなリムジンもまた映画に欠かせない舞台装置になっ

          映画『クリスティーン』B級ホラーの巨匠・ジョン・カーペンター監督~擬人化した車の狂気~

          『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ~若きジョニーデップが初々しい…飛ぶ夢と飛べない現実~

          (c)1993 STUDIOCANAL – Hachette Première & Cie. All Rights Reserved. ヴィム・ヴェンダースの『パリ・テキサス』、ビクトル・エリセの『エル・スール』と並んで私の大好きな映画『アンダーグラウンド』(1995年)を撮ったエミール・クストリッツァ監督の1992年の作品。旧ユーゴスラビアのサラエボ出身のエミール・クストリッツァがアメリカのアリゾナを舞台に英語で作っており、何もない不毛な大地と滑稽な人間たちのドタバタ劇が

          『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ~若きジョニーデップが初々しい…飛ぶ夢と飛べない現実~

          映画『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』~寓話的な詩的な映像~

          (C)DFFB, Sakdoc Film, New Matter Films, rbb, Alexandre Koberidze ジョージア(旧グルジア)で製作された寓話のような美しく不思議な映画だ。 光と影、昼と夜の街、カフェや公園や川や緑の街並み、そして広場でサッカーで遊ぶ子供たちやW杯サッカー観戦で盛り上がる大人たち、犬たち。それぞれが思い思いに人生を楽しんでいる姿が美しい映像とともに映し出される。 ジョージアの古都クタイシ 。男と女が学校の校門前ですれ違ったとき

          映画『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』~寓話的な詩的な映像~

          ドラマ「ユーミンストーリーズ」第3週『春よ、来い』(NHK)が素晴らしいクオリティだった

          画像©NHK うまく言葉にできないようなドラマや映画が好きだ。うまく物語を語れないもの、言葉にできないもの、そういうドラマや映画の方が表現が豊かだということだ。単純な言葉で要約できるようなものは、その程度のものだ。いくら言葉を尽くしても、その映像の魅力は伝えきれないようなものこそ魅力的なドラマであり、映画である。それでもその良さをなんとか言葉で伝えようとしたくなる。そういう魅力あるドラマに出会った。ユーミンストーリーズ、第3週『春よ、来い』だ。とにかくキャスティングが素晴ら

          ドラマ「ユーミンストーリーズ」第3週『春よ、来い』(NHK)が素晴らしいクオリティだった