南瓜 豆米大(ナンカ ズメタ)

小説を書きます。ゆめとうつつを揺蕩いながら、満たされていたり足りていなかったり、幾つも…

南瓜 豆米大(ナンカ ズメタ)

小説を書きます。ゆめとうつつを揺蕩いながら、満たされていたり足りていなかったり、幾つもの愛おしい日日を紡ぎます。読んでいただけたら、ほくほくふっくら炊き上がります。よろしくお願いいたします。Xにも『一握の物語』という140字小説あります(日月水金更新)。

最近の記事

【詩】ちりぢり【微睡草紙】

■まえがき  よく夢をみます。浅い眠りのなかはおそろしいもので、しばしばへんなものをみせられます。過日の断片的な夢をほとんどそのまま詩にしました。 ■ちりぢり 壊れた家電 ところにより穴 電子レンジ底なしの穴にて 一分三十秒あたためた音楽が鳴る アンティークの懐中時計 宙をただよう 四分の三拍子で進むルイ十五世針 破れた天色の壁紙 咲きほこる白百合 屋根裏部屋から涌き出づる玩具掻き分け くまさんをお風呂にいれなきゃ くたくたのテディベアうつろに見上げる 尖った犬歯が抜け

    • 【お礼の詩】なんかいる/豆ん豆ん/ほかほかの夜【なん歌】

      ■はじめに  スキやフォローありがとうございます。小説や詩に赤いスキが灯るたび、思考の森をさまよう日日が報われるおもいです。また、ここであなたの紡ぐ素晴らしい言葉を見つけるたび、私の中にもスキが灯ります。  感謝のおもいを込めて、リアクションメッセージを更新いたしました。スキやフォローをしていただけたら、お礼の短歌が表示されます。この記事で読んでいただける三篇の詩はそれらをもとに紡ぎました。  私からのささやかなお礼を受け取っていただければ幸いです。『ほかほかの夜』は少し自

      • 【詩】芋けんぴに負けた日【なん歌】

        芋けんぴに負けた日手強い敵だ芋けんぴ ひと噛みしたら歯まっぷたつ 満身創痍ぐらぐらで 歯医者へ向かう春曇り 満開の白うつすよう 花水木色満ちる雲 御守り代わり音にのる かっこいい歌でかっこつける 大人だもんねこわくない 何食べました?芋けんぴ カルテに残った敗戦記録 歯の半分とさようなら 表も裏もないんだって 初耳だったよ歯医者さん 麻酔じんわり帰り道 こっちを見ている白い犬 遊びたいけど遊べない 犬に寄り添う女の子 茶色く枯れた花びらを 両手いっぱいに掬ったなら お母

        • 【詩】夜を想ふ【なん歌】

          夜を想ふ静寂がしとやかに降り積もる夜 ドビュッシーの雲とターナーの月あかりに連れられて おずおずと私のなかにそれは入って来た 不確かなそれに名をやると みるみる膨らみ動き出した とろみれ濃厚な珈琲 らそたせ陽気な音楽 君と私は語らった 散らかった部屋でとりとめなく 溶け合い すれ違い たまに、ぶつかり合い 私と君は駆け抜けた 入り組んだ街を果てしなく ずぶとい雷鳴がドアを破ったある日の夕暮れ 私のなかから君がむんずと引き摺り出された 欲望を喰らう赤い獣の脂ぎった手によって

        【詩】ちりぢり【微睡草紙】

          【詩】もしももっともるもっと【なん歌】

          もしももっともるもっとモルモットもっと回りたい もしもとけたらどうなるの ドーナツになるのバナナ味 トコナツキブン花かおる カカオへ会いに海わたる おあいにくさまワタリドリ とりかこまれておそわれた ふたつにわれたどうしよう 少年たちが泣いている イルカが船へはねあがり ドーナツあげたふたかけら けらけらふたり笑いだし 正しくドーナツ食べられた カカオしくしくのこされて くしくし葉っぱで顔あらう あらあらふしぎぱっと変わる それはかわいいモルモット!

          【詩】もしももっともるもっと【なん歌】

          【短編小説】わだかまりの蔦【微睡草紙】

          ■まえがき  よく夢をみます。浅い眠りのなかはおそろしいもので、しばしばへんなものをみせられます。そういう夢を簡単に編みなおして短い物語にしました。これを『微睡草紙』とします。 ※夢から着想を得た創作です。登場する人物・団体などはすべて架空です。 ■わだかまりの蔦(約3000字)  割れた格子窓から零れる光の粒が、白衣を纏った老人たちの姿を淡く照らしている。彼らはそれぞれ風変わりな楽器を手に、奇っ怪な音楽を奏でていた。楽器は皆、朽ち果てた容器や器具に見える。ゆらゆら音に

          【短編小説】わだかまりの蔦【微睡草紙】

          【詩】さくら漕ぐ【なん歌】

          さくら漕ぐぬかるむ公園そこかしこにみずたまり カニカマのぶらんこ薄紅の先客たち 珈琲牛乳ゆれる桜樹見守っている ぶらんこふらこどんぶらこっこ とろける甘い海を漕いでいく じゅんばんこで待っている どろんこ遊びのお友だち 風が吹いたら僕のばん ほがらかに春すすむ

          【詩】さくら漕ぐ【なん歌】

          【詩】かなし春【なん歌】

          ■まえがき  しばらく寒い日の続いた三月下旬、実家の戸口へ不自然なかたちで燕のなきがらがあったそうです。鳥を愛する父が丁寧に埋葬してくれました。もしかしたらあたたかな土で休めるよう、だれかが運んでくれたのかもしれない。そういう半ば独りよがりな願いを込め、この詩を綴りました。風雨に負けず大空を勇ましく渡ってきた、尊い一羽を讃えます。 ■かなし春 南風連れ友来たる さびしい季節待ちわびて まだかまだかと空仰ぐ 赤い花びら踏み締めて 軒下覗き友探す 暖かな春どこへやら 冬毛

          【詩】かなし春【なん歌】

          【短編小説】塩をいただけませんか

          ■はじめに  十五年程前に書いた小説を加筆修正いたしました。原文は今よりもっと拙劣でした。しかし物語は気に入っていたので、大筋は変えずにそのまま使いました。歳を重ねても根っこはなかなか変わりません。予てより人ならざるものに惹かれます。  ヤマタカボウとトレンチコートが黄昏の路地裏を歩いています。しおからい雨が降っているとヤマタカボウは大きすぎる傘を差しますが、トレンチコートはどこか訝しく思っています。即かず離れず同じ場所へ帰って行く、彼らの物語です。 ■塩をいただけません

          【短編小説】塩をいただけませんか

          【詩】あぶく【なん歌】

          あぶくばらが咲いたとうたう声 白き手のびて雨ふらす くしゃくしゃくせ毛とまる蝶 ひかりあふれる雲おもう 窓辺に座り朝日あびて ほうばるいちご朝ごはん リボン武装は勝負の日 小さき背中駆けていく ドヴォルザークが聞こえたら そろっと魔法とけるとき キャベツにんじん胡瓜かぶ お味噌につけて小気味よく 食器語らう音がして シャボンがふわり旅に出た よふかしがきて悩んでる アイスふたつめチョコミント だれかの恋におもい寄せ まるめたティッシュが山となる そっと寄り添う白き犬

          【詩】あぶく【なん歌】

          【短編小説】赤い怪物の消えた夜【微睡草紙】

          ■まえがき  よく夢をみます。浅い眠りのなかはおそろしいもので、しばしばへんなものをみせられます。そういう夢を簡単に編みなおして短い物語にしました。これを『微睡草紙』とします。 ※夢から着想を得た創作です。登場する人物・団体などはすべて架空です。 ■赤い怪物の消えた夜(約2200字)  赤い怪物を探していた。粘っこく垂れ籠めた黒い夜を、灯りも持たずあてどなく歩いている。畳一枚ほどの大きさのそれは、まるで米粒のようなかたちをしていた。また、触り心地はゼリーそっくりで、くし

          【短編小説】赤い怪物の消えた夜【微睡草紙】

          【詩】ひかり【なん歌】

          ひかりととトからととカラとトと 風で転がる蟹笑う にくき怪物やっつけた 自慢のはさみあかあかと カアカア見てる黒い影 今日も母さん忙しい ひかりつらなり夜照らす のり弁当をチンします ウミガメひとり海渡る 星のない夜涙した あたたかくてもつめたいね ととトからととカラとトと 風で転がる蟹も泣く

          【詩】ひかり【なん歌】

          【詩】ましまろふる夜、あめ光る【なん歌】

          ましまろふる夜、あめ光る裏庭の烏骨鶏がましまろを産んだ日 浴槽でうずくまるまだらの仔象を 雲泳ぐ青空のようだとつぶやいたら つぶらな葡萄しとしとまるい粒零し とぽとぽぷちゃん透きとおった拍子で 水のなか色とりどりの飴玉落ちた ましまろと飴玉はひかりの味がした いつくしみ深き烏骨鶏に仔象をあずけ 僕は大きな芋虫へ乗って街を目指した 籠いっぱいましまろ飴玉たずさえて 塩辛いたましいが寄り添うかなしい街へ 吹きすさぶ風かかんに大地ふるいたたせ まばゆい太陽さかんに僕らけしかけた

          【詩】ましまろふる夜、あめ光る【なん歌】

          【短編小説】そえものたち

          ■あらすじ  とある路地裏の雑居ビルで男女が話している。あやふやなままとりあえず生きている。そういう取るに足りないものたちの、とりとめのない黄昏時の物語。 ■そえものたち(約2300字)  大きな鴉が電柱の変圧器にとまった。ここは昭和の趣が残る古びた雑居ビル。老舗飲食店が並ぶ通りの仄暗い路地裏、窮屈そうに佇んでいる。3階にある休憩所は5畳ほどしかなく、なげやりな空気が居座っていた。 「用が済んだらそれでポイよ、いい気なものね」  薄く開いた唇から柑橘の煙がただよう。淡い

          【短編小説】そえものたち

          【詩】しろ【なん歌】

          ■なん歌  詩はふいに生まれます。日日暮らしていると気まぐれにやってきて、ひとしきりおしゃべりをしたら満足げに帰っていきます。それは積もりに積もったあれこれを、ざっくばらんに話せる気が置けない友人とよく似ています。そういう関係性が心地よくて、あえてほどよい距離を保っているところがあります。ただ、このごろよく顔を出してくれるので、この気儘な茶飲み友だちに名前をつけました。『なん歌』をよろしくお願いいたします。 ■しろ ぽってりほほ笑むミルクポット 苦いのって好きじゃないか

          【詩】もぐらもよう【なん歌】

          もぐらもようお月さまあんころぬまへまぬまぬしずむ きびもちちもっとお空であそぶ 蛙ぐらぐら鳴きはじめ  どんよらぐもる空模様 下駄が立ってる夢枕 今日のおやつはなんだろな タゲタタゲタタ カブリユク  ウボチチウリト ハイテユク 雲ぶらさがって本を読み 深海泳ぎももんがとなる らりらりらりら音がする オワンクラゲの街あかり 本日は もぐらもようでいそいそかえる お月さまざらめぼしへとしぼしぼういた もぐらもぐららもぐららら

          【詩】もぐらもよう【なん歌】