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童貞によるカップ焼きそばの作り方。

カップ焼きそばの作り方を書くという企画があるようだ。主催されている方の主旨によらない文章になりそうなので、引用はしないでおく。
というか一瞬、引用して公開してしまったのだが、これはまずいと思い引用を急いで外させてもらった。もし不快な思いをさせてしまったのでしたら、投稿自体も取り消すのでご一報下さい。

カップ焼きそば、そういえば10年以上食べていない。

しかし、過去、私は頻繁にカップ焼きそばを食べていた日々のことを急に思い出した。

この企画についての記事を読まなければ、自分があんなにカップ焼きそばに情熱を燃やしていたことを忘れていた。

人生の中でカップ焼きそばが私の心の中の大きな場所を占めていた日々が思い起こされてきた。

カップ焼きそばだけの場所が私の心の中に現在でもあるのだ。first loveである。

そう、あれはまだ私が童貞大学生だった頃の話だ。

私は大学時代に騙されたような形で民族音楽サークルに入った。そこでは何人かの奇妙な童貞仲間に出会い、童貞であることを慰め合っていたのである。

上記に引用した記事は先輩童貞として仲良くさせていただいていた、鈴木さんとの思い出を書いた。

先輩童貞鈴木さんとはそういえばカップ焼きそばについての思い出もあったのだ。


今日は童貞とカップ焼きそばの思い出、および童貞によるカップ焼きそばの作り方を書いていきたいなって思う。

この後、「童貞」というワードが頻出するので童貞アレルギーの方はそっとこのページを閉じていただけるとありがたい。

童貞というワードは滑稽さはあるものの、ある種生臭いところがあるので嫌悪感を抱いてしまう人はいるだろう。

そんな童貞という言葉を多用させていただくことをどうか許して欲しい。

というわけで始めるが、先輩童貞の鈴木さんは童貞らしからぬ御曹司であった。
というのも鈴木さんはとある大手食品メーカーの社長の息子だったのだ。

ただ鈴木さんのお父さんは立派な方で、学生時代に分不相応な贅沢はさせないという主義のもと、鈴木さんは授業料を払ってもらう以外にはお小遣いをほぼ貰っていなかった。

日々のお金はバイトで賄っていた。だから大企業の息子とはいえ、私のような庶民の学生と同じように普通にお金がなかった。

私と鈴木さんは仲良しで、私が住んでいた一人暮らしのアパートに鈴木さんは毎日のように遊びにきた。

男子大学童貞生はお腹が空く。でもお金はない。そんな中で、私たちは近所の激安ショップでカップ焼きそばが69円で売っていることを発見した。

デフレスパイラル真っ盛りの当時である。
私たち童貞二人は日本経済がどうなっているのかということは二の次に、安く食品が買えることに狂喜乱舞した。

私たちは連日、カップ焼きそばを食べつつ安酒を飲み、テレビゲームをしてそこそこ楽しい童貞ライフを送っていたのである。

私たちは自己完結型童貞であった。お金もなければ、人より優れたところとない。もちろん、女性との関わりもない。

ただ自由と時間はあるし、童貞仲間がいる。

狭い池の中で完結する蛙のごとく、私たちは今でいうリア充がやってこない、非リア充童貞にとって平和な童貞池の中でぴちゃぴちゃ遊んでいたのである。

この池の中にいれば、童貞であっても女性から蔑まれたり、陽キャからいじられたりしないのだ。

とにかく私たちは無意識的にではあるが、童貞池からでないことが幸せだと察知して、その中でぬくぬくと過ごしていたのである。

私たちはそんな童貞池である、私の狭いアパートで童貞丸出しの顔をしつつ毎日カップ焼きそばを食べていた。

ただ童貞でも毎日同じものを食べていたら飽きてくるのだ。貧乏童貞のくせに生意気だと言われれば謝るしかないが、童貞とて飽きるものは飽きる。

そこで鈴木さんの出番である。鈴木の親御さんは、鈴木さんを金銭的に決して甘やかさない。

ただ、鈴木さんの親も息子には、厳しくしきれなかったようなのである。

鈴木さんは、実家にストックしてある鈴木さんのお父さんの会社の調味料を持ち出すことだけは容認されていた。

鈴木さんは、マヨネーズ、ケチャップ、中濃ソース、ワサビチューブ、生姜チューブ、ニンニクチューブ、七味唐辛子、お酢、バルサミコ、ゆず果汁、麺つゆ、バジルパウダー、キムチ鍋の素など私の家にたくさん持ってきてくれていたのだ。

だから私の当時のアパートは、冷蔵庫は空っぽだが、調味料だけは普通の家庭並みに揃っていた。

私たちはその調味料を用いてカップ焼きそばをカスタマイズすることを覚えた。

普通にカップ焼きそばを作ったあと、マヨネーズとわさびを入れたり、ニンニクチューブと麺つゆを少々投入したり、ケチャップとバジルパウダー和えてみたりといろんなアレンジメニューを作成した。

童貞は無駄な努力をするものだ。こうして私と鈴木さんは童貞を拗らせていく。

焼きそばアレンジに注力することで女性とのコミュニケーションする機会をなくしていき、より童貞に磨きがかかっていくのだ。

そしてそんな日々を続けていると、たまに女性と話す時にもおかしなことになってしまう。

どんな偶然か僥倖か気まぐれか分からないが、とある授業の前に、私の大学の学科一美人な八戸さんが私に話しかけてくれたことがあった。

「しろくんって普段どんなもの食べてるのー?」と質問してくれたのだ。八戸さんにとっては授業の合間のただの雑談で、周りに仲のいい人がいなかったのでたまたま私に話しかけてくれたのだろう。

私はドギマギしながらもこれはしっかり答えなければと思った。当時の私が毎日食べていたのは、童貞アレンジカップ焼きそばであった。

ただ、もうこの頃の私は生姜醤油カップ焼きそばみたいなありふれたアレンジでは飽き足らなくなっていた。

童貞アレンジカップ焼きそばはエスカレートしてしまっていた。そして私は八戸さんに素直に伝えてしまったのだ。童貞は美人に話しかけられると冷静な判断ができなくなるという好例である。

私は「カップ焼きそばを作ってそこに生クリームとお酢とコショウをたっぷり加えた、『クリ酢コ焼きそば』って言うのをよく食べるよ!」と答えてしまったのだ。

八戸さんはそのアレンジの気持ち悪さと、そのネーミングのそこはかとない下品さを感じたようで、一瞬引いたような表情をした。

ただすぐに笑顔に戻り「へぇー変わったことしてるんだねーおもしろーい」と無難にまとめてくれた。

さすがリア充である。人間ができすぎている。私は動揺しつつも八戸さんの優しさに感謝して、好きになりそうになってしまうくらいであった。

こんなことをしているので、童貞からの卒業は遠かった。まだまだ童貞ライフは続く。

童貞ゴーズオンである。

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