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『おちょやん』101 NHK大阪のゲスさを描くNHK大阪

 一平が灯子との間に子を作ってしまう。千代と一平は離婚する。それでも、二人は劇団に残る……わけでもなく、一周年記念は『お家はんと直どん』のあと、千代は道頓堀から消えました。
 昭和26年(1951年)2月、それから一年が過ぎました。
 岡福は繁盛しております。それにしても、名もなきお客さんの味ときたらない。当時を再現したい気合を感じます。千代は忘れたわけではなく、客のおっちゃんが「綺麗な月やな」と言うと、シズはふと思い出すような顔になります。
 どこかでビー玉をかざして、空を見ている千代はいるはず。

ぎこちないけどなんとかやってる家庭劇

 事件の噂は劇団に黒い影を落としていました。鶴亀新喜劇泥沼の内紛、二代目天海の妻、愛人との確執――そらそうなるやろなぁ。
 それにしても、こんな事件をそのまんま朝ドラにする松竹はどんだけ懐が広いのか。まあ、学んだのかもしれへんね。朝ドラに描かれたせいで、かえって黒い疑惑が露わになったあの会社とかありますから。隠さん姿勢に敬服あるのみよ。
 劇団は明るい。生まれた一平の子・新平を気遣うようで、その一平が去れば、寛治たちが千代の行方を気にしております。
 成田凌さんが昭和文人らしさを出してきとる。無精髭、バサバサした髪の毛。若いしもっと綺麗にセットできるのでしょうけれども、もさっとしてはる。眼鏡の掛け方とあいまって、もさもさですわ。睫毛が長く、口が赤いところがかえってアンバランスで、これ昔紅顔の美少年……という風情までありますわな。彼本人は今も紅顔の美青年なのに、わざとそれを崩しとるようですごい。
 一平もなんなんでしょうね。我が子が泣くとあやしにいく。灯子は「すんません」と敬語で謝る。幸せそうではあるのですが、考えてしまいますよね。千代とのあいだに子がいて、夫婦対等に育てていたら。一平と灯子と、一平と千代では、どうにも何かがちがう。悲しい話やね。

NHK大阪中央放送局ラジオドラマ企画進行中

 そしてNHK大阪中央放送局ラジオドラマ会議では――って、テロップで期待大や。松竹だの日本映画だの、先輩方をわりとできる範囲で容赦なく描いてきた本作。NHK大阪の先輩をどうするか期待大ですわ。
 なんでも『お父さんはお人好し』の企画会議らしいで。長澤誠によるええ脚本があがってきとる。掛け合いがポイントだそうで。
 お母さん役は箕輪悦子さんだってよ。ポスターだけで出てきました。大人気女優やて。村川茂……百合子と揉めたあの監督作『春の先生』ポスターが出てきます。
 これな。じっくり見られてもええように、当時らしく、天海祐希さんの写真を加工して、小道具さんが一生懸命作っておると。気合を感じるで!
 で、お父ちゃん役は花車当郎。ラジオ漫談が受け取るそうです。防空壕で千代と掛け合いした人ですな。この人と、箕輪悦子が夫婦役なんて固い……と思いきゃ、当郎は反対するんですね。
 竹井千代がええ。そう指名してきます。そう依頼していたのに、そう問い詰められた側の酒井は黙り込む。竹井千代をみんな知らない。知っていても、スキャンダルネタの消えたオバハン扱いですわ。
 千代がどんだけひどい扱いするか考えてみてくださいよ。今よりもずーっと女性差別に鈍感だった時代、愛人に夫取られたオバハン。カス扱いやろなぁ。美女・箕輪悦子の方がええってなりますやん?

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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