『おちょやん』103 女の味方は女

 一年前、栗子と再会した千代。栗子の孫であり、千代姪である春子の面倒を見るために、三世代の同居が始まりました。

栗子の一生

 ここで栗子の身の上話。
 千代がいなくなり、テルヲはますます酒と博打にのめり込んだ。借金取りも来る。女の黒髪が男を繋ぎ止めるとか、そういうこと昔から言いますけどね。そうとも限らん。クズはクズ。
 このままやったら生まれてくる子もどうなるかわからん。
 そう思ったら飛び出しとった。男に頼るのはもうまっぴら。そう思ったのです。そして娘のさくらを産み、金になることなら何でもして生きてきた。貧しいながらも暮らしてきた。娘がかわいい。貧しくてもいるだけでしあわせ。でも、そのたび千代のことを思い出してしまう。娘が所帯持っても、孫が生まれても……。
 千代はここでキッパリと言います。それでもあの子の面倒を見ることなんて、できやしません。そう言い切る。そして立ち上がる千代に、栗子は当てが見つかるまで仲居しとる料理屋で働くよう持ちかけてきます。恩着せがましいのではなく、持ちつ持たれつにする。そういうところがええなあ。

 千代は翌朝、『人形の家』の台本と、写真たてと、ビー玉と。そういうものを見つめぼーっとしています。すると春子が宿題を教えて欲しいと声をかけてくる。千代がおばあちゃんに聞いたらというと、字が読めないというのです。栗子は学校に通えなかったと。
 千代は思い出す。
 家に来たとき、栗子は三味線以外ほとんど何も持っていなかった。自分と同じような身の上かもしれへん……。
 そういう証拠はありますわな。捨て子同然の境遇。身も売るような旅館で仲居をしていて、三味線と色香を身につけて、ええ旦那さんの身請けこそが勝ち組だと思って育つ。けどとうがたった歳になり、これでええとテルヲみたいな男を引っ掛け、引っ掛けられるも、結果こうなってしまう。
 誰やねん、『鬼滅の刃』の遊郭セーフィティネット論みたいなもんを信じとるやつは。栗子は遊女とまではいかなくとも、日本全国ありとあらゆるところにあって、テルヲが千代を売り飛ばそうとしたその手の店にいた女性と推察できます。でも、男とゴールに辿りついても保証はない。それを体現してしまった栗子、そして千代。
 自分たちと同じにしてはいけない。
 行き場所のない春子みたいな、かつての自分みたいな少女が、勉強して生きていけるようにする。そんな社会のために、千代はここに落ち着くと決めたのです。

ここから先は

2,202字
2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.c…

よろしければご支援よろしくお願いします。ライターとして、あなたの力が必要です!