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男子大学生によるエッセイNo.02「ハリーポッターと食生活の崩壊」


男子大学生によるエッセイ
へばりつく暮らし
No.02
「ハリー・ポッターと食生活の崩壊」 


例によってまた適当にタイトルつけました

 皆さんは知育菓子はお好きだろうか。ねるねるねるね、ねりきゃんらんど、たのしいおまつりやさんやつくろう!おべんとう、グミつれたなどなど、この世に数多知育菓子は存在する。大人になるまでに誰もが一度は口に入れたことがあるのではないだろうか。
 かくいう僕も小学生の頃に大変お世話になっていた。自分の食べるものを作る料理のプロセスに、子供たちの胸の奥に秘められた探求心をくすぐる「実験」の要素を組み込んだ、画期的なものだろう。
 たとえば寿司を作る知育菓子では、つぶつぶのイクラを作るために、Aの粉を溶かした水に、Bの粉を溶かした水をスポイトでチョンチョンと垂らすというプロセスがある。子供のころ初めてこうしてイクラをトレーの中に量産した際にはものすごく感動したことを覚えている。

 一人暮らしを始めて自炊をするようになった今、料理を作るたびに疼いてしまう潜在欲求に気が付いた。 

 この料理にコーヒーを混ぜたらどんな味になるんだろう。この野菜炒めにイカの塩辛を合わせたら美味しくなるんじゃないか?実験をしたいという欲求にも似た、「ベストマッチ追求欲」である。
 

 何か料理を作っていると、その間に、カレーに隠し味としてチョコレートを淹れると美味しいように、既存の料理に意表を突く何かを掛け合わせてみたくなってしまうのである。もしかしたらとんでもなく美味しい組み合わせができるかもしれないし。
 
 

(注意!
 大学でできた友達曰く、僕以外の人間にとってはかなりショッキングな描写が続くそうなので、何か食べながら読んでいる人たちは、ここから先は犯罪者の独白文でも読んでいるんだと思って読んでください。)


 そのきっかけは些細なものであった。決して悪気があったわけじゃあない。そう、あれは偶然だったんだ…!  
 
 大学生活にも慣れてきて、下宿先のアパート付近の地形をようやく鮮明に把握し始めたある日。外は一日中雨模様で、とてもじゃないが買い物に行ける天気ではなかったので、再放送していた「コード・ブルー」を一気見していた。何でもない、普通の週末である。
 気が付くと外は真っ暗になっていた。正直夕食をどこか外で済ませたかったけど、雨の中歩くのも面倒なので、あるだけの食料で簡単な炒め物を作ることにした。

(BGM:ダンジョン飯の調理シーンのBGM)
 
 まず、一昨日に賞味期限の切れた白滝と、冷凍しておいたエノキをフライパンで炒める。ニンニクと醬油を適量加え、全体がこんがりとするまで炒め続ける。
 次に、三日前に消費期限の過ぎた木綿豆腐を握りつぶして、先ほど作った無限エノキもどきに混ぜる。これもほんのりこんがり焦げ目が付くまで炒める。
 豚肉を解凍して、フライパンに投入。いちょう切りにした人参も加えて、小さじ一杯の焼き肉のタレと絡める。
 うーむ…。色合いが茶色っぽすぎるなあ。栄養の偏りが不安なので、溶き卵と、今朝方飲み忘れたケールの青汁の粉を絡める。これで彩りも多少は豊かになるっしょ。

完成!「青汁肉炒め」!

 ハルクやシュレックの吐■物かと思うくらいの緑一色。例えるならば「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド/ティアーズオブキングダム」に出てくる「微妙な料理」のモザイク無しバージョンみたいな感じの見た目だ。見た目は大失敗だ。

 ところが味の方はというと、焼き肉のタレが利いていてかなり美味い。青汁の粉っぽさが意外にもいいアクセントになっていて、豆腐と一緒に嚙むとアボカドみたいで美味い。これは俺、とんでもない大発見をしちまったのでは?

結論。焼き肉のたれを使った炒め物に青汁の粉を入れると意外とイケる!

 というエピソードを友達に伝えると、まだ仲良くなって間もない友人たちの顔がちょっと曇って、挙げ句の果てには「お前は実験の前にまず普通の料理を作れるようになれ」と言われた。帰省して両親に青汁肉炒めの話をすると「あんた本当に一人で生きていける?」としっかり心配されてしまった。
 
 僕個人ではこれがあまり変な行動だとは思っていないので、周りのみんなの反応が不思議でしょうがない。

 なぜかこの“誰にも信じてもらえないけどコレめっちゃうまい”という感覚に覚えがある。
 

 あ、そうだ。ファミレスのドリンクバーだ!
 

 小学校の頃よく家族みんなでファミレスに行くと、必ずと言っていいほどドリンクバーを頼んでは、「なっちゃんオレンジ×お茶×カルピス×山ぶどうスパークリング」やら「トニックウォーター×リアルゴールド×メロンソーダ」といった芸術的な特性ブレンドのジュースを作って、一緒に来ていたおばあちゃんに無理を言って飲んでもらったりしていたことがある。
 そのときの「うん、おいしい、おいしいよ、本当に。」と苦虫を嚙み潰したような顔で感想を言っていたおばあちゃんの表情やそれを見ていた母からの「うわー、まずそう」という声を思い出す。ああ、そうそう、この時の感覚に似てるんだ。
 

そう考えると僕の味覚って異常なのか?とか思ったりもするけど、しょうがない、美味しいんだもの。これだから料理は面白い。

 最近もコンポタに食べるラー油を入れてみたり、鯖缶に青汁を混ぜたりと実験的な料理を作っている。前者はあまり合わなかったけど、後者は見た目も相まってカニ味噌みたいな感じで意外にも美味しくいただけた。
 こういう実験的料理をし続けているから、友達から「お前、健康で文化的な最低限度の食生活が終わってんじゃん」とか言われてしまうのだろう。
 
 まあ、しょうがない。美味しいんだもの。みつを

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