見出し画像

舞台『心のかけら』を終えて

T1projectの新作舞台『心のかけら』の幕が9月8日(MEMORY三部作シリーズは7日から)に上がり18日に千秋楽を迎えた。

ご来場頂きありがとうございました


公演期間中もnoteを更新しようと思っていたのだが、正直XやInstagramを更新するのが精一杯で、こちらに手を伸ばす余裕は全くと言っていいほどなかった。それだけ、毎公演全力だった。
老いもあるだろうが人生で初めて白髪が見つかったし、湯船にしっかり入らないと疲れが取れないことを学んだ。(もう駄目だと思った稽古帰り、半泣きで入ったスパ・ラクーアが無かったらきっと今日を迎えられなかった)

『心のかけら』はありがたいことに、見に来てくださったお客様から(肯定的なものも否定的なものも含めて)直接、具体的な感想を頂くことが今までの公演の中で一番多かった。
「まぁ、よかったよ」で済まない何かが、この作品には詰まっていたからだと私は推測する。
それによって自分の役を外側から見直す角度が増え、普段は初日までにある程度完成してしまう自分の役が公演期間中にどんどん膨らんでいった。可能性として捨てきれなかった『桜田メイ』の情報が一気に膨れ上がり、どれを諦めるかの選択を急に求められたが何も迷うことが無かったように思う。これは彼女自身が脚本の友澤氏から見た私を基にして作られているからであり、自然な取捨選択の中で桜田メイを通して観客の皆さんに見せるべき私という人間の本質とこれまでの経験が残っていったからだ。

物語の最後、現実での本当の姿を知ることを拒んだ桜田は自分にとって“唯一の現実”である仮想空間の世界が消えてしまうことを受け入れきれないまま、あの世界で強者である(と彼女は判断した)魔麒麟(演:中村枝里香)を追いかける。今まで自分を守ってくれた今や虚空の存在となってしまったHWPではなく、敵であった彼女の妹を探す選択に出たのは本音か、それとも自分自身を最後まで守ってくれる存在を本能的に選んでいるのかは見ていただいたみなさんに判断していただきたい。
ちなみに「明日地球が爆発するとしたら何をする?」と言われた時、私は「いつも通りの生活をする」と答える、ことにしている。もっとも“いつも通り”というものは非常に厄介な概念だと常々思う。それを意識した時点で“いつも通り”にはならないのだ。

これは舞台本番にも言えることである。
「稽古場通りやればいい」と言われるし自分でもそうありたいと願うが、照明やお客様の存在は私たちに殆どの場合で良い影響をもたらしてくれる。
それが多発的にアブノーマルスポットとなり、他の役者がそれに対して何か働きをかける。もちろん私も動く時がある。
その偶発的な、いわば生だから起こる不確定性のようなものを楽しみに各公演を見に来てくださる方もいらっしゃるだろう。
もちろんT1projectの舞台は日替わりコーナーがあるわけではない。同じはずのやり取りの中で視覚に入るか入らないかわからないようなほんの小さなズレが、生の面白さなのだと思う。

『心のかけら』は観客・演者問わず自分自身の物語である、と私は考えている。
ご覧になった皆様が思ったことを、こっそりで良いので教えてくださると嬉しいです。

『心のかけら』にお越しくださった皆様、スタッフの皆様、演者の皆様、本当にありがとうございました。

桜田メイ役 / 木山メイ


さて、ここで改めて問いたいのですが……あなたは誰ですか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?