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T1project Members Live4

11月25日(土)に所属事務所T1projectのミュージカルプロジェクト、プラスαプロジェクトで歌唱を学んでいるメンバーによるライブに出演した。

今回ソロとデュエットで1曲ずつ歌わせてもらう機会に恵まれ、私は
ソロ:The Worst Pies In London / Sweeney Todd
デュエット:本当の私 / ミラベルと魔法だらけの家

の2曲を歌うことにした。
(曲が具体的にどんなものかは下記URLから)


ソロ曲『The Worst Pies In London』はミュージカル『スウィーニー・トッド』の序盤に演奏されるソンドハイム作曲の難曲。
無実の罪で投獄されていたベンジャミン・バーカー(後のスウィーニー・トッド)が、以前住んでいた場所を訪れた際にその地でパイ屋を営んでいたラヴェット夫人によって歌われる。
高校時代にこの作品を知り、当時アラン・リックマンが大好きだった私はDVDが擦り切れるんじゃないかと思うほどこの映画を見ていた。(ちなみにこの後没頭することになる『RENT』のDVDは実際に1年で擦り切れた)
そんな思い出の曲をいつか歌いたいと思いつつも、音の高低が激しくリズムも難解、おまけに早口……と今までは技術が追いつかなかったこの曲にMPの後輩も増えた今、挑みたくなったのだ。

こちらが当日の歌唱の一部。

訳詞はほぼ自分で行った(上の動画の部分は全部自分で)ので言葉の多さは少し誤魔化した部分もあるのだが、それでも久しぶりの獲物客に半ば興奮気味で立て板に水状態のおばちゃんは喋るように歌う訳で、それが自分の中でも最大の課題になった。
変な小細工をしてはいわゆる煩い芝居になってしまう。
歌唱指導の古澤さん、ピアノ演奏の松本さん(ソンドハイム大好き!)の修正を受けながら試行錯誤を繰り返した。

ミュージカル俳優のライブの表現方法は主に2通りあると思っている。
一つは役者本人、私の場合は木山メイとして歌う方法。
もう一つはその曲を歌う役として、ここではラヴェットとして歌う方法だ。
今回のライブでは、うちのWSのルーキーが多かったこともあって意図的に後者の演出をとることにした

衣装やメイクも豪華なドレスを着る出演者が多い中、汚れだらけのエプロンにティム・バートンの世界観を意識した不健康なメイク。
いきなりこんな人間が出てきてお客さんもギョッとしただろう。
MCの古澤さんが不気味な私をユーモアたっぷりに紹介してくださったり、ピアノ演奏の松本さんが繊細かつエネルギッシュな演奏をしてくださったり、CLAPSさんが毒々しい黄色と紫からストーリーの今後を予想させるような赤に変化する照明を作ってくださったりと、たくさんの方々の力を借りながら皆さんを19世紀半ばのロンドンに運ぶことができたのではないかと思う。
「なんか変な歌だったけれど、楽しめた」という感想をお見送りをしているときにお客様からお声がけ頂けたのだが、今回のパフォーマンスにおける一つの目標だったので心の中で私は小躍りしていた。

また「あなたはプロでしょう」と他の演者のご親族の方にお声がけ頂いた。
もちろん誉め言葉として頂いた言葉ではあったが、(舞台に慣れていないルーキーの子も含めて)お金と時間を頂いて歌を聞きにいらしてもらっている以上、演者全員がプロだったと私は考える。
その場では上手くお伝えすることができなかったので、ここで備忘録代わりにこのエピソードは残しておきたい。
今回のライブは舞台経験の浅い深いは問わず、各メンバーがプロとして今自分ができる全てを尽くしたライブだった!

30歳を目前にして、芸能界になにか爪痕を残すことができたのかと問われると、口数少なくにこにこすることしかできない自分がいる。
この世界においてどのような形で芸に向き合っていくかというのは、役者個々に課された永遠に解決しない課題だ。
これから私はどうなるのだろう……。

少なくとも客の少ないパイ屋になるのはまだ随分と先になりそうだけれど。

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