見出し画像

Heurēka

社会人になってから自分の思考を修正される機会が減った。

自覚を持って改良を施さない限り、濃度だけが高くなった古びた価値観が凝固していき、思考の源に侵食していく。
常にインプット/アウトプットと情報のアップデートが求められる世界はそれ相応の努力を要するので苦しいが、楽しい。

私は生きるために俳優以外の仕事を幾つかしているのだが、その中の一つに塾講師がある。
個別指導塾で小学生から高校生まで、その日担当する生徒に90分ほど授業をする。
問題の解説をしていると、学年や性別を問わず生徒たちの目の奥が開き光る瞬間を感じることがある。それは彼らの中でわからなかった問題を理解し、納得する、いわば腑に落ちる瞬間の煌めきなのだ。
時間がかかったとしても次のステップに移る難易度が低くなり応用問題を解く時に双方にとって楽になるので、なるべくこの光が見えてから次の単元に進むようにしている。
舞台の稽古期間は、演出家の目指す世界と役者の表現のズレを修正することを要求される。
たった一人の役者の五分の演技を修正するのに一時間、一日、それ以上の時間を費やすことだって当たり前のようにある。

今日のゲネプロで、私のとあるシーンに対しての修正が入った。
指摘された行動が自分の感情で動いてしまっているものだと自覚してはいたのだが、修正するための代替案を見つけられていなかった私に演出の友澤氏は今私が咀嚼したまま飲み込めていないそれを「(今この場で)言語化してみろ」と告げた。
私は頭の回転が決して早くはない。足りない頭をフル回転させて「○○です」と告げた時、目の奥がぎゅるりと開き、何が間違いか、そしてどういう方向に持っていけば良いのかが少し繋がった、気がした。
おそらくその時、生徒たちと同じ目をしていたのだろう。
友澤氏は「じゃあ、──」と私に必要な思考の動線を提示する。
役者をしていれば当たり前の経験ではあるが、この経験ができる環境に身を置いているからこそ、私は生徒と向き合えるのだと実感した。
道が拓けば、そこからは自力で進むしかない。

舞台『心のかけら』の初日の幕が9月8日に開く。
そこに広がる世界を、(出演者として)貪欲に吸収していきたい。

劇場でお待ちしております。


T1project MEMORY三部作
『心のかけら』に出演いたします!


[場所]
下北沢 小劇場B1

[期間]
2023年9月7日(木)〜9月18日(月/祝)
(心のかけらは9月8日〜9月18日)

9/8(金)19時
9/10(日)14時
9/12(火)14時
9/13(水)19時
9/15(金)14時
9/16(土)19時
9/18(月/祝)12時

(※公演時間は2時間を予定しています)

[チケット]
一般:¥4,800
ダブル:¥9,000 トリプル:¥13,000
※こちらは同期間上演の他の作品も見たい人用のチケット

[公式ホームページ]

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?